『異業種交流』型研修で成果が出る設計とは?

今回のテーマは、『異業種交流』型研修で起こる失敗と『その対策』についてです。『異業種交流』型研修の派遣を検討されている方から、「御社では、どのようにして受講者の学びや交流が得られるように工夫をされていますか?」といったご質問をいただきます。今回は、『異業種交流』型研修でよく起きる失敗と当社で行っている『異業種交流』型研修の設計上の工夫について説明いたします。


目次

『異業種交流』型研修で起こる「失敗」 – 社内研修と同じように設計すると「思ったほど」効果がでない

他社の人といろいろと話せて楽しかったが、研修内容は「ふつう」だった

受講者の声としてよく伺う内容は、「いろいろと情報交換したものの、実際に持ち帰ってみて実践できる学びがなかった(少なかった)」というものです。これは、「交流」に重点が置かれ過ぎてしまったせいで、そこで議論を深めたり、自身に置き換えて『学び』という抽象化した理解に落とし込めていない場合に起こります。

もう少し受講者同士での議論をしたかった / 交流をしたかった

逆に、せっかく他社の社員がいる場であったにも関わらず、『あまり交流ができなかった』、『もう少し深く話したかった』という声が聞かれることもあります。受講者同士が他社の話を聞きたいと感じていたものの、その時間があまり確保できず、あったとしても深く議論することができなかった場合に起こります。通常の社内研修と同様の設計で実施すると起こるケースです。

『異業種交流』型の研修は、普段一緒にいるメンバーとは異なる多様なメンバーと一緒にワークをすることが多いので通常の社内研修よりも盛り上がりやすく、また、他社の人もいるため不満がでにくい構造になっているため、失敗に気がつきにくいので注意が必要です。  


失敗の原因のほとんどは研修の『設計』にある

なぜ『異業種交流』型の研修では、「学びが不足する」、「逆に、交流が不足する」といった失敗が発生するのでしょうか?多くの場合は、講師や受講者、時間や設備、プログラムの内容が原因ではなく、「学び」と「交流」のバランスを意識せずに設計していることが原因です。

「交流すること(情報交換すること)」自体を目的に設計すると「学び」が薄れてしまう

よくある設計の失敗は『交流』自体を研修の第一の目的に置いてしまうことです。この場合の研修プログラムは、「他者 / 他社と話す」ワークに多くの時間を割く傾向にあります。こういった「他者 / 他社と話す」だけのワークは、「単なる情報交換」になりがちです。なぜそうなっているのか、そこから何が言えるのか、自社に置き換えて考えるとどのように活用できるのかまで議論しないと、自分自身 / 自社や相手、テーマへの理解が浅いまま研修が終わってしまうことになります。

『交流』することで、受講者同士がお互いを知り、仲よくなること自体は非常によいことですが、『異業種交流』型の研修として学ぶためには、より深く理解をして『学ぶ』ために必要なプロセスを入れることが必要です。

通常の社内研修と同じように「学び」だけを意識して設計すると、せっかく集まった異業種の人との関わり、「場のよさ」が減ってしまう

「学び」のみを目的に設計した場合、どうしても、各自でのテーマ理解、知識習得のために、講義や個人ワークの時間を多くとってしまいがちです。結果的に、「異業種の他社の社員」との交流する、理解する時間が減ってしまいます。

学ぶ「テーマ」の理解を深めるのはよいことですが、工夫をしないとその効果は、社内研修で実施した場合とほぼ変わりません。異業種の人が集まれば、自然と会話が進んでそれぞれの会社や業界の話をして理解が深まるだろうというのも安易な考えです。時間が限られる中でも、意図的に議論を深める時間をとる、異業種の違いが際立つような『問い』を用意しておく等の工夫が必要です。

「情報共有」の時間をとっても、他社の事例を知るだけで、それだけでは実践的な学びにはならない

「情報共有」だけでは実践的な知識(学び)になりません。多くの研修では、『ここで情報共有をしましょう』と情報の共有のワークの時間をとりますが、それだけでは、単に「他社の事例を知る(聞く)」ことにしかなりません。「他社の社員ではこのような事例があるのか」、「このような考え方があるのか」といった話を聞き、感想を抱くだけでは、自分が活用することはできず、実践的な学びにはなりません。

実践的な学びにするためには、事例に対して「どうしてそうなったのか」、「どういった経緯があったのか」、「提示された事例にはどんな示唆があるのか」、「自社・自身とどう違う(あるいは共通する)のか、それはなぜか」、そして、「自分自身 / 自社に置き換えて考えるとどのように活かせるのか」という順で議論するプロセスが必要です。

このような時間をきちんと確保すること、手順を踏むことで、テーマや他社への理解に繋がり、更にそれが、自分自身 / 自社での実践的な学びとなります。

研修を「設計」する際には、上記のようなポイントを意識して内容や時間とのバランスをとりながら丁寧に設計する必要があります。


成果が出る設計のポイントは『成果物(アウトプット)』を中心に設計すること

『異業種交流』型研修を設計する際には、高い次元でバランスよく「学び」と「交流」を実現することが必要です。実際に研修を設計することを考えると、時間配分やどのような内容のワークをするのか、アイスブレイクや振り返り等の具体的な内容が気になるところですが、実は、大切なのはどのような『成果物(アウトプット)』をどのようなプロセスで出すのかを考えることです。『成果物(アウトプット)』は単なる結果であると感じられるかもしれませんが、なぜ、『成果物(アウトプット)』を中心に研修を設計することがポイントになるのかを説明します。

成果物(アウトプット)とそれを作成するプロセスを通じて、「交流」して「学ぶ」のが自然な流れ

研修の結果、成果が「学び」であり、「交流」であることに問題はありません(当然のことです)。一方で、通常のビジネスの現場(やプライベート)で、「学び」や「交流」は必ずしもそれ自体が目的や成果ではないケースもあります。

多くの人は、職場で仕事や人間関係から「学び」、上司や同僚とお取引先様と「交流」して、その結果、仲間ができます。ここでは、「学び」や「交流」は結果であって、それ自体が「目的」ではありません。多くのビジネスパーソンにとっては、何かに取り組む中で「学ぶ」、「交流する」ことは自然なことです。

研修の場面においても、ひとつの目的やゴールを目指す中で「学ぶ」、「交流する」という設計にすることで、ビジネスの現場に近い自然な「学び」や「交流」が実現できるようになります。

意外と大事な『共通のゴール』と『共通体験』

普通の人は、知らない人と「仲良くなろう」と思って、仲良くなれるものではありません。仲良くなる(正確には、仲良くなったと感じる)方法には、いくつかの原則(や方法)がありますが、その中の一つに、 『共通体験をする / 共通点をみつける』というものがあります。

『異業種交流型』の研修の中では、ついつい『違い』が強調されがちですが、まずは、「自分たちはひとつのチームである」、「共通の方向に向かっている」、「一緒に作業している / した」という感覚を持つ、体験をすることも同様に大切です。 ひとつのチームであるという感覚を持ち、この中では自分はざっくばらんに話してもよいという心理的安全性を確保した上で、『ぶっちゃけ話』ができるようになるところまでいきたいものです(非常に上手く進んだ研修では、受講者から『社内よりも話しやすい』という声も聞かれます。話しにくい社内の方も問題ですが)。

研修では、つい「学び」、「交流」を直接扱いたくなりますが、研修の中の『場づくり』、『チームづくり』という観点も入れて、『共通のゴール』としての成果物(アウトプット)、『共通体験』としての共同作業(プロセス)を設計すると結果的に、より「学び」や「交流」がスムーズにできるようになると思います。

成果物(アウトプット)をコントロールすることで、研修テーマの理解、交流する内容、頻度をコントロールすることができる

研修設計の際に、『成果物(アウトプット)をコントロールする』ということについて、もう少し詳細に説明すると、①状況を設定して、②それに対して、適切な『問い』を立てて、③必要となる成果物(アウトプット)の要件を定義する、④その上で、作業する手順(行動、時間)をコントロールすることになります。実際には、事前に準備していたものを提示して、受講者の反応や議論の様子を見ながら調整、必要があれば、直接的 / 間接的に介入する ということをします。

実際の研修を見ていると無造作に出題しているように見えるかもしれませんが、実は、事前準備の段階では細かく調整しています。例えば、状況設定はどの程度細かく提示した方がよいか(それにより、議論の抽象度が変わってきます)、問いを立てるときにはどの範囲を指定するのか(それにより、議論するべき論点の範囲が変わってきます)、等々の工夫をしています。

このように成果物(アウトプット)を中心に考えることで、直接的 / 間接的に、受講者に対して様々なメッセージを伝えたり、議論の範囲や内容をある程度狭めたり、受講者の議論の余地を大きくしたり / 小さくしたりしながら検討することができるようになります。

私たちが設計する場合には、受講者には最大限、受講者の自主性 / 自律性を尊重して、『自分たちの問題意識に近い範囲の議論をする』ように意識して設計をしています(もちろん、全体の趣旨を逸脱しない範囲でですが研修は、単なるおしゃべりの時間ではないと思いますので..)。

一般的には、成果物(アウトプット)が結果として扱われますが、結果をコントロールすることで、その途中で起こる「学び」や「交流」をコントロール(設計)するという考え方をすることで、上手にバランスをとることができるようになります。


まとめ – 『異業種交流』型研修で成果が出る設計とは

本日は、『異業種交流』型研修においてよくある失敗とそれを解決するために必要な設計上のポイントについて解説しました。ポイントは以下の通りです。

  • 『異業種交流』型研修では、「交流」と「学び」のバランスをとることが重要(どちらかではなく、どちらも)
  •  上記を高い次元で両立するためには、研修内容を「成果物(アウトプット)」を中心にして設計するのがポイント

 世の中には、様々な『異業種交流』型研修がありますが、参加する際 / ご自身で企画する際の参考にしていただければ幸いです。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
営業部

目次