新規事業創出活動の『展開』について考える

今回は、新規事業創出活動に取り組んでいく中で、過去の取り組みをどのように活かして進めていけばよいのかについて説明いたします。既に新規事業創出に取り組まれている企業様で、「もう少し上手に事業につなげていくにはどうしたらよいのか」「昨年度の活動を上手に活かして今年度の活動につなげたい」と考えている方は参考にしてください。

今回のポイントは、これまでの活動の実績を活かして、「事業としての出口を上手に作っていく」こととそれを目指して、上手に「関係者を巻き込みながら、協力を得る」ことです。当社と関わりのある企業様の事例を踏まえながら、新規事業創出活動をどのように進めていくのか、そのために考えられる打ち手について説明いたします。


目次

ある会社における新規事業創出活動の『展開』

大手素材メーカー様の取り組みを紹介します。この会社様では『顧客から要求された性能にあわせた開発をする』という受け身のビジネスだけではなく、自社としてより主体的、戦略的に商品を開発し、事業を創造することを目的とした、「新規事業創出活動」をスタートしました。最初の段階では一部署でスタートしたものを数年かけて、課題を解決して範囲を広げながら、最終的には全社的な取り組みにしたというものです。こちらの取り組みの概要をまとめたものが下記になります。

それぞれでの取り組みについて詳しく説明します。

一部署で実施

新規事業創出活動は、はじめは一部の研究グループ(研究所)内での取り組みとしてスタートしました。
まず、自身と関わりのある範囲ということで、既存の技術や顧客、ビジネスモデルを中心にその「周辺」で可能性のある事業はないか、さらに、いくつかの技術や市場を掛け合わせて新しい事業の可能性がないかを検討しました。この取り組みは提案者にとっても「なじみがある」「イメージしやすい」アイディアを出せるという利点がありました。一方で、「なかなか『飛んだ』発想がでない」「他研究グループとの協力が必要なもの、自部門だけでは進められないものに関しては扱えない」などが課題として残りました。

R&D部門全体で実施

その後、「既存の技術」を中心に検討することを趣旨に、上記の取り組みをR&D部門全体で参加者を公募する形にして、一部署での実施時に課題としてあった「他研究グループとの協力」ができるようになりました。会社全体として取り組んでいる「技術分野」は広くても、実際に個人レベルで研究している分野は限りなく限定されているため、「隣の研究グループではこんなことができる」という発見や、「その課題だったら自分の研究分野ではこういうのがある」等、技術分野での情報交換や課題解決につながり、非常に効果的でした。

技術開発や技術上の実現性という点では一歩進んだ一方で、R&D部門のみでの実施をしている分、どうしても「顧客」や「市場」の調査が弱い、事業開発、投資関連の知識の不足など、実際にビジネスとして実現することを考えたときに『壁がある』ことが課題として残りました。

事業部を巻き込んで実施

上記の反省を活かして、次は、事業部を巻き込む形で新規事業を創出することができないか検討をしました。研究開発側から「技術使うとこのようなことができますけど、どうですか」とお伺いを立てるようなやり方では、どうしても、「おもしろい技術だけど、顧客ニーズや採算的にあわないからいらない」という結果になってしまいがちなので、「何をするのかを考えるところから一緒に取り組む」、「最初から巻き込む」ことが必要だと考えました。

そこで、事業部と共に「技術的な実現性も含めて、一緒に考えたいテーマ、営業上で困っていること、技術的に解決できたらインパクトの大きいこと」を話し合いながら、お互いに意見交換しながら、一緒に取り組むことにしました。これによって、テーマの設定から具体的に議論ができるようになり、実際にビジネスにするという点で大きく前進しました。

全社の取り組みとして実施

上記の成果も踏まえて、全社的な新規事業創出活動の一つに組み込まれています。全社的な活動としてひらかれたことにより、これまで個別に取り組んでいた勉強会やワークショップも比較的自由に実施できるようになり、全社的に多くの人にひらかれた活動になりました。

テーマに関しても「技術的な実現可能性」、「事業部として戦略的に取り組みたいテーマ」に加えて、「全社的なテーマ(戦略的に取り組む分野)」、「個人が取り組みたいテーマ」など幅広いものに取り組むことができるようになりました。


本事例からの学び、ポイント

 「取り組みやすいところ」、「可能性のあるところ」からスタートする

今回の事例では、「技術を転用する」という研究開発者にとってイメージしやすいところから取り組みを始めました。また、研究所では日々新しい素材が研究されていて、「これがどこかに使えないか」議論されていて、考える土壌が整っていました。同様に各企業様でも、「自社の技術」や「既存の顧客」などのイメージしやすいところ、日々の業務の中で新規事業や新商品を考えている部門から、取り組みを始めることで、新規事業を検討しやすいのではないかと思います。

それぞれの「取り組み」を振り返り、「必要なこと」を確認して、次のステップで広げた

それぞれのタイミングで、「成果」と「課題」を整理した上で、きちんと改善に取り組んだこともとても重要なことだと考えられます。組織的にも関連する部署を少しずつ巻き込んで、連携・協力を築いた上で、最終的には全社的な新規事業創出提案制度に合流することになりました。

「毎年、よりよくするために何をするのか」を意識して、実際に取り組むこと、継続して取り組むことが大事になると考えられます。

『事業創出』にこだわって進めていくのが重要

何よりも大事なのは実際に、「事業創出」にこだわることです。ゴールとしての「事業化(最終的に事業として立ち上がること)」を忘れずに、そのためにするべきことを考え抜くことです。様々な議論を通して、「本当に事業化されるためにはどうすればよいか」にこだわられています。このような推進側の意識や実際の行動が、多くの場面で社員に伝わり、組織全体の風土づくりにもつながっています。


まとめ

多くの企業様では、新規事業の創出に取り組まれていると思います。ある程度、取り組みを継続していく中で、「どのように改善していくべき」なのか考えていく必要がでてきます。その中で、「事業化する」ことを忘れず、そのときどきの課題に取り組み、周囲を巻き込みながら進めていくことが重要です。今回の記事を通して、新規事業創出の取り組みの展開の参考にしていただければ幸いです。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

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