「成長」って何なのか問題について

アイディアポイント岩田です。そろそろ梅雨ですね。新入社員のみなさんはそろそろ配属され、逆に、職場のみなさんはそろそろ新入社員を受け入れる頃でしょうか(そして、人事のみなさんは新人研修を終えて、職場に送り出した頃でしょうか)。なんだかうきうきすることが多い季節ですね。

さて、今日は、以前、大学で教えていたときにも学生からよく出てきた質問で、先日、スタッフとの1on1ミーティングでも出てきたテーマとして、「成長ってなんだろう」ということに関して、私の考えを書いていこうと思います。ほとんどの人は年齢関係なく「成長したい」と思う一方で、では、何をもって「成長した」と言えるのだろうか?と少しモヤモヤしているのではないかと思い、今回のテーマについて書いてみます(私自身も自分が成長しているのか、会社が成長しているのか、毎日、もやもや考えています)。


目次

『成長』とは、『自分ができないことができるようになる』こと(だと思う)

最初に、「成長」を定義しましょう。様々な定義が可能ですが、私は、シンプルな定義がよいと思うので、『成長』は、「以前はできなかったことができるようになること。以上!!」ということにします。昨日 or 1ヶ月前にできなかったことができるようになっていれば、それを「成長」と呼んでよいと思います。

ポイントは2つあります。ひとつめは、「どんなことでも、どれだけ少しでも、別に、構わない」ということです。新入社員の人であれば、「毎日、朝、きちんと起きて、会社に行くことができる」でも構わないし、「きちんと電話が取れるようになった」でも構いません。私の場合だと、先月、うまく話せなかった内容が少しうまく話せるようになった等どんなことでも、どれだけ少しでも、できるようになったことはすばらしいことだと思います。ふたつめは、「過去の自分との比較」だということです。「成長」は必ずしも、他人と比較するものではなくて、自分自身ができるようになることです。なので、「成長」の議論をするときに、他人を持ち出す必要はありません。また、基本的には、自分自身が「成長した」と思えればよいのではないかと思います(いちいち、人があれこれ言うべきことでもないのだと思います)。

様々な記事やSNSを読んでいくと、どうしてもキラキラした「成長物語」や「ものすごく進化した話」が目について、つい、自分ができるようになったことがちっぽけに感じられたり、比較して落ち込みがちですが、すべては地道な「できるようになったこと」の積み重ねなのではないかと思います。別に、地道でもいいじゃないかと

一般的に言われているように、「成長」のために、大きな目標を持って、それに向かって取り組んだり、なりたい自分を描きそこに向けて『劇的な成長』を目指すこともそれは素晴らしいことです。一方で、あまりにも、『成長』に対するイメージが大きすぎるとやる気が続かなくなったり、日々の地道な活動が馬鹿らしくなったりすることがあるので、日々の「できるようになったこと」を振り返り、認めることも大切だと思います。ということで、今回は、「成長とは、(どんな小さいことでもよいので)できなかったことができるようになること」と定義しました。


「成長」するために必要なのは適度な「ストレッチゾーン」

次に、「成長」するメカニズムを考えていきましょう。人の成長を語る際に用いられるキーワードとして、「コンフォートゾーン(Comfort Zone)」、「ラーニングゾーン(Learning Zone)、又は、ストレッチゾーン(Stretch Zone)」、「パニックゾーン(Panic Zone)」という考え方があります。これは、ミシガン大学ビジネススクールの教授でもある、ノエル・ティシーによって提唱されたコンセプトです。↓私が説明するときのスライドです。学習について議論するときには、『ラーニングゾーン(Learning Zone)』の方がよいのですが、今回はもう少し広い意味で「成長」を考えたいので、『ストレッチゾーン(Stretch Zone)』という言葉を使っていきます。

イメージとしては、筋トレに例えると簡単に持ち上がる負荷でトレーニングしていても楽かもしれないが大して筋肉はつかないけど(コンフォートゾーン)、分不相応の負荷で筋トレすると怪我をする(パニックゾーン)、ちょっと背伸びしたくらいの負荷でトレーニングして、はじめて筋肉はつくんだよ(ストレッチゾーン)というイメージです。

RPGで(私はドラクエが好きなのでドラクエで)例えると今いる街や城の周囲の楽勝で勝てるモンスターばかりと戦っていてもレベルはなかなか上がらない(コンフォートゾーン)。かといって、無理して遠いところに行って戦ってもモンスターが強すぎてすぐ死んでしまう(パニックゾーン)。なので、今いる街や城から旅に出てちょうどよいところで戦い(コンフォートゾーンからストレッチゾーンに出て)、傷ついたり / 疲れたら城に戻ってきて体力を回復して(がんばって疲れたら、コンフォートゾーンに戻り)、徐々に遠いところまで行けるようになって、これまでのレベルでは戦えなかったところで比較的余裕を持って戦えるようになったら(ストレッチゾーンがコンフォートゾーンになったら)、今度はそこを拠点にまた遠いところで戦う(次のストレッチゾーンに向かう)イメージです。

成長のためには、コンフォートゾーンを確保して、その上で少し外に出てストレッチゾーンで戦って、また、コンフォートゾーンに戻って休み、これを繰り返しながら徐々にストレッチゾーンを広げていくといつの間にか過去のストレッチゾーンがコンフォートゾーンになり、過去のパニックゾーンがストレッチゾーンになり、人は成長していくというものです。

子供の成長も同じで、家庭という安心、安全な場所(コンフォートゾーン)があって、少し大きくなるとそこから公園 / 幼稚園という「外の場所」というちょっとアウェイな場所(ストレッチゾーン)に行き、そこで友達と少し喧嘩したり、今までやったことないことに取り組んで疲れたりして、また、家庭(コンフォートゾーン)に戻り、少しずつ「外の場所」に出て慣れながら、ストレッチゾーンを増やしていって、今度は公園や幼稚園がコンフォートゾーンになって、さらに新しいことにチャレンジしていくと考えるとスムーズに理解できるのではないでしょうか。


「成長」を考えるときの落とし穴 – 「ストレッチゾーン」だけを意識してはいけない

『成長』のキーワードとして、「コンフォートゾーン(Comfort Zone)」「ラーニングゾーン(Learning Zone)、又は、ストレッチゾーン(Stretch Zone)」「パニックゾーン(Panic Zone)」という考え方について説明してきましたが、この考え方を使って、イマイチ『成長できない』ケース、『よくある失敗』についてお話ししたいと思います。これは、本人だけではなく、育成する側(上司や会社)も意識しておく必要があるので、ぜひ、覚えておいてください。

失敗パターン① : 「ストレッチゾーン」だけを意識するせいで「コンフォートゾーン」が存在しない

『成長したい』と希望する新入社員や若手社員、異動してきたスタッフに「ストレッチゾーン」の仕事(チャレンジングな仕事)を用意することは大切ですが、彼らに必要なのは、自分ができると確信できる仕事、あるいは、ある程度、失敗しても、自分には安心して戻れる環境があることです。一般的に、「成長できる仕事がしたいです」、「よーし、やってみろ!」と結構な難易度の仕事をぶん投げる様子などが見られますが(さすがに、パニックゾーンの仕事をぶん投げることは仕事を振る側から見てもリスクが高いのかあまり見ませんが)仕事でチャレンジできるのは、そこでがんばっても、一度、戻る場所があるからですので、ここは間違えないようにしましょう。ゴムも伸ばしっぱなしだと、ダルダルになりますのでときには休みも必要です。燃え尽き症候群にならないように気をつけましょう。

失敗パターン② : 逆に、「コンフォートゾーン」から出さない

育成側が大切に育てようとして、できることばかりやらせていて、いつまでたっても成長しないパターンです。本人ができるかできないかわからない仕事におびえて「できることしかやらない」のもこのパターンです。これでは、「成長」は期待できません。過保護な親御さんと同じです。問題なく、お互い、心地よいかもしれませんが、将来のことを考えると少しずつでもストレッチしていかないといけません。ゴムも伸ばさないでゆるゆるのままにしておくとやがて固くなって伸びなくなるのと同様です。かわいい子には、ときには旅をさせることも重要です。

失敗パターン③ : 「パニックゾーン」に突き落とす – 獅子は我が子を千尋の谷に落とす

ここは賛否両論あると思いますが、『獅子は我が子を千尋の谷に落とす(獅子は生まれたばかりの子を深い谷に落とし、這い上がってきた生命力の高い子供のみを育てる)』という、なぜか、昔ながらある?育成方法です。

一概に悪いとは言えませんが、割と失敗していると思います。個人的には、これは育成側の責任放棄に近いのではないかと感じます(そもそも、「半分、死んでよい」って、死ぬ側の気持ちにもなってほしい & 仮に、自分が生き残る側にいたとしても、「最悪、半分、死んでもよい」と思える人とは働きたくないだろうと思ったりします)。どちらにしても人を大切にする人の考え方ではないと思います。同じく、『修羅場体験』神話に対しても私はどちらかと言うと否定的です。『修羅場が人を育てる』という事象はおそらく自分の経験からも正しいと思いますがかといって、逆に、『こいつを育てるために修羅場に送り込もう』って、おいおい、全然話違うだろうと思います(しつこいようですが、修羅場で人が育つことには賛成です。但し、それは結果であって、そのために修羅場に突っ込んだり、ひどい場合には、どうやって修羅場を作ろうかなぁとか考えるのは違うのではないかと思います)。ということで、事象としてはわかる(結果的に、「パニックゾーン」に突き落として成長する人がいることは認める)ものの、「パニックゾーン」に突き落として成長させるという方法論は、無責任で、いろいろな遺恨を残すため、方法論としてはよくないと考えます。ただ、自分に自信があって自分から「パニックゾーン」に飛び込みたい人は飛び込んでよいと思います。自分で飛び込む気があるくらいであれば、おそらく、ストレッチゾーンとパニックゾーンの間くらいかと思うので、なんとか泳ぎきって無事に生還してください。


ということで、今回は、『成長』とそのメカニズムについて説明しました。『成長』というと、ものすごいことみたいですが、きちんと小さなことが一つ一つできるようになることだと思います。日々、忙しい中では、意識的に「ストレッチ」していかないと、つい、同じことばかり続けていきがち(コンフォートゾーンにとどまりがち)になると思います。また、あらためて、しっかり考えてしまうと、つい、パニックゾーンレベルの遠い / 難しい話になりがちなのではないかと思います。ということで、「コンフォートゾーン」、「ストレッチゾーン」、「パニックゾーン」というキーワードを頭において、定期的に自身の状態を確認しながら、確実に成長していくようコントロールしていったらどうでしょうか。私のチームでも、そのために、月1回、1on1ミーティングで定期的にチェックしながら、仕事を進めています。

仕事をする上で、『知らないことを知る』、『できないことができるようになる』のは楽しいですよね。大げさに考えなくてよいので、少しずつ、いろいろなことができる = 成長する ように楽しく仕事をしていきましょう!(とスタッフにメッセージ。)

ということで、今回は、『成長』とそのメカニズムについて説明しました。長文、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!!

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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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