アイディアポイント岩田です。今回は、最近、私の周囲で話題になっている『座持ちする人 / しない人』の違いについて、お話しします。『座持ち(ざもち)』とは、『座の興をさまさないよう客をもてなすこと。また、それの巧みな人(goo辞書より)』のことで、その人の周りでは、人がニコニコしてリラックスして話せるような状態になる人のことです。特に、今回は1対1の場面で「話が続かない」、「間がもたない」人がやっておくとよいことについてまとめています。一緒にいて、「話が尽きない」人と「話が続かない」人の違いは何か、どうやったら「話が続く」人になるのか具体的な方法を説明していきます。
「話を続ける」、「間を持たせる」のは性格や能力ではなくスキル
ここまで読んで「私はそもそもコミュニケーション能力が低いから話が続かない」と思う人もいると思いますが、コミュニケーション能力はある程度、スキルでなんとかなるものです。生まれながらのコミュニケーションモンスターのような人にはかなわないかもしれませんが、コミュニケーションスキルは確実に身につけることのできるスキルのひとつです。
実は、私も以前はビジネスの場面で「話が続かない」、「間がもたない」ことが多く、悩んでいました。目的や用事があるときには、話したり聞いたりすることができるのですが、それ以外のことは、何を話したり聞いたりすればよいのかわからず、話してみてもすぐに話が終わり、なんと気まずかったことか…一緒にいた人たちにも申し訳ない…ことばかりでした。本当は「用件だけの会話」を越えて、お客さまや周囲と、もっとリラックスしていろいろな雑談をしたり、案件には直接関係なくてもその周囲の話をして仲良くなったり、もっとお客さまの話を聞きたいと思っていたが…できませんでした。
周囲からアドバイスをもらっても、「普通に聞きたいことあるだろ→いや、仕事以外に思いつかないし…」、「何か話せばいいんだよ→そう思って話してみたけど続かないんですよ…」
ある先輩から「ちゃんと準備しておけば、後は、きちんと手順を踏むだけだから、あんまり悩まなくていいんだよ。単なるスキルだよ」と教えてもらい、それ以降、悩むのも止めた結果、苦手意識も徐々に減り、「話が続く」、「間が持つ」ようになった…と思います。
ということで、今回は、ビジネスの場で「話が続かないな」、「間がもたなくて嫌だな」、「スマートに雑談したいな」と思っている人は、具体的にどんなことを準備して、どのように話を広げていくと「話が続く」、「間が持つ」のかを解説していきたいと思います。コミュニケーション、特に、雑談など「自由な会話」が苦手だと感じる方は参考にしてみてください。
コスパが圧倒的によいのは事前に「質問」を用意しておくこと – 最初に、質問するスキルを身につける
「話を続けよう」、「間をもたせよう」とすると、つい、自分が話をして話を続ける、間をもたせようと思いがちですが、実は、自分一人で話を続ける、間をもたせるのはとても難しいものです(お互いが同じだけ話すときよりも2倍、話さなくてはいけない!しかも、相手の興味を引き続ける話をし続けなくてはいけない!)。自分の「しゃべり」に自信のある人以外は、できれば、相手に気持ちよく話してもらえるような話題や質問を用意しておいて、相手に話してもらった方が圧倒的に楽だと思います。
特に、会話が不得意な人はその場でサッとスマートな話題や質問が出てこないので、「準備しておく」のがおすすめです。質問はひねったものでなくて構いません。きちんと事前に相手のことを調べたり、会う状況から相手が興味のありそうなことを調べて、用意しておくとよいと思います。最初は、面倒な作業に感じるかもしれませんが、コミュニケーション能力に自信がない人には必要な作業ですので、必ず取り組んでみてください。
目標は、相手が「答えやすく」て、「気持ちよく話せる / 話したくなる」ような話題です。商談で初対面の場面では、「これまでどんなお仕事されていたのですか」、「最近、どんなことにご興味がありますか」など、相手が話しやすく、いろいろな話ができるような話題がおすすめです。
答えやすいからといってクローズ型の質問(YES / NOで答える質問)は、その場でブツッと切れてしまいがちなので、避けた方が無難です。その代わりに同じ内容でも、話が続きそうなもの、相手が話しやすそうな質問にするよいと思います。
例えば、「最近、お忙しいですか?」よりは、「最近は、どんなお仕事でお忙しいですか?」の方がよいですし、「新入社員のみなさんは配属されましたか?」よりは、「新入社員のみなさんは配属されたと思いますが、ご様子はいかがですか?」の方がその後の話がスムーズです。「最近、お忙しいですか?」「はい…(しーん)」など、クローズ型の質問をしているうちに、詰問?のようになってしまうのは、「話が続かない」、「間がもたない」人の特徴なので、気をつけてください。
ある程度、意識的に「質問を用意して話をする」ことを続けていくと自分自身になじんだ質問が出てくるので、その中で、汎用性のあるもの(あちこちで使えるもの)を見つけていくと準備にかかる時間は短くなっていきますので、ぜひ、続けてみてください。
私の場合は、下記のような話題、質問をよく使っています。
- 最近、御社ではどんなことが話題になりますか?
- そういえば、〇〇という記事を見ましたが or 他社では〇〇という話を聞きましたが、御社ではいかがですか?
- (研修やコンサルティングをご一緒しているのであれば)〇〇のときの〇〇はどう感じられましたか?、〇〇というニュースは〇〇さんから見たときにどのように見えますか?
- 〇〇ってご存知ですか?(会話に慣れてきたら、お互いの共通点になりそうなものを探してみるのもよいかもしれません)。
雑談について書かれた書籍の中には、天気や景気の話など無難なものがよいと書かれているものもありますが、私はあまりおすすめしません。確かに「間」はもちますが、その後、話が盛り上がりにくく、その後にビジネスの話に続けるまで会話するのが難しいのと、「こいつ、話が続かなくて困っているな」と思われやすいのであまり使っていません。
ポイントは、「相手が話しやすい」質問を考えることです。自分が興味ある / 詳しいからと言って、いきなり、「テニスに興味ありますか」、「ボードゲームやりますか」という振りは止めておくのが無難です。相手も興味があって上手にハマれば非常に話題が膨らみますが、相手が興味ない場合には「すみません、詳しくないです」、「興味ないです」と言われて、かえって気まずくなる結果になってしまいます。自分の得意な話は、ある程度、会話が進んでから切り出すのがよいと思います。
上手に質問をして、相手から前向きな反応を引き出すことができれば、その後の会話がぐっと続くようになります。
次に身につけるのは、話を『継続させる』技術 – 気持ちのよいリアクションと話を『膨らませる』技術
相手が話したくなるような質問ができるようになったら、次に必要なのは、それを『継続させる』技術です。『継続させる』技術は大きく二つあります。
ひとつめは、相手が話したくなるようなリアクションをすることです。リアクションをして、更に質問をして話を広げることです。きちんと相手の方を見てうなずきながら話を聞くのは当然のこととして、その上で、「本当ですか?」、「それはすごい!」、「なるほど!」、「他にはどんなものがありますか?」、「それでどうなりましたか?」と相手の話を興味深く聞いているようなリアクションをします。これらを続けることで、会話の雰囲気が盛り上がります。
私個人は、人の話を聞くのは比較的好き(得意とは言っていませんが)なので、このリアクションは苦になりません(ほとんどの話は心から面白いなぁと思いながら聞くことができ、それってなんでだろう?、もう少しここを聞きたいなと自然に思うので…)。苦手な人も心配する必要はありません。心からそう思っていなくても、一旦、「フリでもよい」のでしっかりリアクションするだけで、相手はより気持ちよく話してくれるようになります。これだけで、随分、話が続く、間が持つようになると思います。
しかし、これだけだと『聞いている』だけになってしまい、相手も「この人は、私の話を引き出して、リアクションしているけど、自分のことは全然話さないな。なんか、気持ち悪いよな」と思ってしまいます。実際に、私が営業を受ける立場のときにも、よかれと思って私のことをいろいろ聞いてくれて、感じよくリアクションしてくれているのですが、何も話さないと、「こいつ、本当は興味ないな」と思ってしまいます。ひたすら自分だけがしゃべらされている状況..気持ち悪くなるのが普通です。
そこで、必要になるのがふたつめの『タイミングのよいところで話を広げる』、『お互い話題を提供しながら話を続ける』スキルです。
『雑談』に関する書籍には、『タイミングのよいところで話を広げる』、『お互い話題を提供しながら話を続ける』方法について様々な方法が紹介されていますが、「こういうときはこう」、「別の場合はこう」という説明のものが多く、覚えておけば、どんな場面でも通用しそうな方法が見つかりませんでした。もともと得意ではないので、そんなに瞬間的にポンポン話題が出てこない…。
その中で、私が「目からウロコ」だった書籍があるので、そこで紹介されている方法をご紹介します。『ドクター・バンスの英語で考えるスピーキング』という書籍で、英語を上手に話すための本です。著者は、イェール大学の言語学博士で、イェール大学でもこの講座はものすごい人気だそうです。この中にある『雑談を続ける技術』がわかりやすくておすすめです。
これはどのような方法かというと、会話を「アイディア」の提供と捉えて、相手が会話の中で提供しているいくつかの「アイディア」の中から、ひとつを取り上げて、それに関連した「アイディア」を自分自身が次に複数提供するというものです。その複数のアイディアの中から相手が「アイディア」をひとつ取り上げて、複数のアイディアを提供する。これを続けることでスマートに雑談を進めることができるというものです。
イメージとしては、下記のような構造になっています。
例えば、
Aさん : 週末、何しているの?
Bさん : テニスしている
これでは、話が続きません。紹介した構造を頭の中に置いておくと下記のような会話になります。
Aさん : 週末、何しているの?
Bさん : テニスしていることが多いかな。大学時代にテニスサークルに所属していたので、声かけられる機会が多いんだよ。社会人になってからは、そのときの友達と一緒に、旅行に行ったりすることもあるよ。その友達の一人が大阪で働いているから、たまに、大阪に会いに行ったりもするね。
Aさん : 旅行と言えば、どんなところに行くことが多いの?私は夏だと海に行くことが多いかな。スキューバダイビングするから沖縄が好きだな。最近、写真にも興味があるよ
このように相手の質問に答えつつ、相手が「掴みやすそうな話題」をいくつか提供しながら、相手が掴まえてくれるのを待ちながら話します。相手も話を聞きながら、膨らましやすい、自分が話しやすい話題を掴まえて話を膨らませていきます。このような『雑談の構造』を頭に持っておくと会話をするのがグッと楽になってきます。これは本当に便利です。
ポイントは、相手の話を聞いて、『〇〇と言えば』、『〇〇に関連した話なのですが』という形で話をつなげることです。会話が盛り上がる人は無意識にやっていることかもしれませんが、会話が苦手な人は意識的にこの『構造』を頭に入れて話すと、話すのがものすごくスムーズになるので、ぜひ、試してみてください。
よいリアクションができて、雑談の構造が理解できるようになれば、話を『どれだけでも続けられる』ようになります。このように話を継続させるのも実は技術です。慣れてきたら自分が話す時間は全体の3-4割くらいにすると相手にとっても気持ちよく話したり聞いたりできる時間になるのではないでしょうか。「相手の方がやや話している」を目指して会話を進めてみてください
並行して、自分が話す『ネタ』も少しずつ溜めていく、溜まっていく – 話す『ネタ』の作り方
会話が続くようになると、徐々に、「自分は何を話せばよいのだろう」という悩みが増えてきます。「話すネタ」と言うと、誰にでも絶対にウケる「鉄板ネタ」のようなものをイメージする人もいますが、この考えは間違いです。実際問題、ビジネスという状況で、いつでもどんな場面でも誰に話してもウケる話というのは現実的ではないと思います。
自分の話は、ある程度、無難な内容で「へー」と思ってもらえる話で十分です。自身が普段考えていることや経験したことの方が会話がスムーズに進むようです。私のおすすめは、下記のような内容を普段から仲のよい人と話をしておいて、その中から、話の流れの中で自然なこと、相手が興味のありそうなことを話せるようにしておくことです。
- 最近、自分の周りで起きたこと、おもしろかったこと、気づき
- 今、自分が興味のあること
- 周囲の人からきいたこと
例えば、「最近、私の周囲では、『座持ちする人 / しない人』について議論することが多いんですよ」、「〇〇のニュースについて、私が担当している学生は〇〇と言っていた」、「最近、急に「カーボンニュートラル」に関する相談が増えた」、「この前、オンライン飲み会に参加したら『格付けキット』が入っていた」、「朝礼でスタッフがベランダ菜園の話をしていて、社内でひそかにブームになっている」、こんな内容で十分なのではないかと思います。
相手が唸るような内容は不要です。自分自身が体験したちょっとした気づき、おもしろい話で十分です。自慢話はNGです。相手が興味ありそうなこと、盛り上がりそうなことなど、相手を中心に考えてみてください。
最初は、自分にとっては当たり前すぎて、何がおもしろいのかわからないこともあると思いますが、何回か話すうちに、「比較的多くの人にウケのいい」もの、「自分が話しやすい」ものが出てきますので、鉄板ネタと言わないまでも、得意なものとして溜めていくと、いろいろな場合に対応しやすくなるので、会話がスムーズになると思います。
最後に、「話が続かない」、「間がもたない」人がやるべきではない戦略
「話が続かない」、「間がもたない」人がやるべきでないことがあります。それは、「黙って相手が話すのを待つ」ことです。気まずいけど、それを我慢して、相手が話すまで粘るというものです。
実は、この作戦をやる人は多くて…結構、困ります。本人は、「何もしていない」ので、誰にも迷惑かけていないつもりなのでしょう。あるいは、変に話して「話がはずまない」、「間がもたない」ことで気まずくなるくらいなら黙っていた方が相手にとってよいと思っているのかもしれません。しかし、相手は、メチャクチャ気をつかいますし、何も話さない相手に向かって気をつかって話し続けるのは気持ち悪いし、正直、しんどいです。
私は自分が「気をつかって話す」傾向があるので…気をつかって話していると、よく、「岩田さんは話し好きだな。あれだけ話しているから機嫌がよいだろう」と思われることがあるのですが、全然、そんなことありません。実は、聞いている方が好きなので、話してもらった方がうれしいです。
「話がはずまない」、「間がもたない」状態を望んでいればよいのですが、もし、そうでなければ、多少でも何かした方がよいと思います。黙っていると、「話が続かない」、「間がもたない」人を卒業することはできません。ということで、「黙って粘る」作戦は止めた方がよいと思います(特に、私には止めてほしい… ご協力、お願いします)。
おわりに – 二人のときに「話が続かない」、「間がもたない」を卒業しよう!
今回は、二人でいるときの「話のつなげ方」、「間のもたせ方」について説明しました。「話を続ける」、「間をもたせる」という表現だとやや後ろ向きでネガティブなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、ビジネスにおいて「用件だけの会話」、「最低限の必要かつ十分な会話」を越えて、幅広くいろいろな話をスムーズにできるようになることで得られる情報やそのコミュニケーションから生まれる価値は大きいのではないかと思います。
コミュニケーション上の課題は、「私はコミュニケーションが苦手だから」、「コミュ力低いから」、「性格だから」で片づけられがちですが、ビジネスの場面での「話の弾ませ方」、「間のもたせ方」はスキルです。意識せずにスムーズにできる人は学ぶ必要はありませんが、苦手意識を感じる人は、スキルとして身につけておけばクリアできるテーマなので、ぜひ、取り組んでみてください。
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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹