顧客事例:経営視点を持つ若手を育成する選抜研修を実施。受講者の半数が管理職となり社内に若手登用の流れができた

パナソニック産機システムズ株式会社
人事・総務センター
採用・人財開発担当
村上 有希様

当社がご支援させていただいているお客様にインタビューをし、その内容を掲載いたします。
今回はパナソニック産機システムズ株式会社様です。


目次

50歳以上が従業員の半数を占める年齢構成。経営視点を持つ若手育成が人事最大の課題

人財育成に関する課題を教えて下さい

当社は、三洋電機を母体として創業した、ショーケースや厨房機器、大型空調機器などの業務用設備機器・システムの直販・サービス・エンジニアリング会社で、2011年にパナソニックグループとなり、再編を経て2015年に現社名にて発足しました。三洋電機時代から厳しい経営状況が続き、当社として2015年に新卒採用を再開するまで長らく十分な採用ができていませんでした。その結果、2023年度上期末時点で、従業員の半数が50歳以上、課長以上の管理職では50歳未満が僅か2割という状況になっており、アンバランスな年齢構成が人事最大の課題です。

あと10年も経つと、50歳以上の世代がごっそりと抜けてしまう可能性があります。構造的にも世代交代や若返りが難しい状況の中、若手中堅層は目の前の仕事に一生懸命に向き合っており、経営視点を持つ人財が枯渇していました。しかし2015年以降に採用し育成してきた世代が30代に差し掛かり、ようやく人財の土台が整い始めました。そこで、選抜した若手社員に経営リテラシーを習得させて、早期に管理職登用ができるサイクルの構築に着手したのです。

アイディアポイントを選んだ理由は

当社の人財開発では、新入社員や入社3年目の若手~中堅クラスなどの階層別、実務や技術などの職種別の教育研修の他に、管理職や幹部候補となる従業員向けの選抜研修を実施しています。パナソニックグループが持っている資産を活用すれば、全ての研修を内部で実施できるのですが、社内の学びには限界があります。管理職としての活躍を期待される人財対象の選抜研修は、予算と時間をかけて外部からの刺激を受ける必要があると感じていました。

研修委託先の選定にあたり、以前所属していた部署でアイディアポイント代表の岩田先生に講師をお願いしたことがあったので、今回の選抜研修も依頼させていただくことにしました。前部署では様々な事情から委託先を変更せざるを得ず、アイディアポイントの研修プログラムは充実したパッケージであったにもかかわらず、当時、継続的に取り組めないことに残念な思いがありました。現職に異動し、若手中堅世代のレベルアップが必要ななかで、改めて岩田先生にお願いしようと考えました。我々に合った研修プログラムを親身になって考えて下さるし、BtoBの事業を長く経験されているので事業理解も深い。また、30代の若手向けの研修には、岩田先生の柔らかい人柄が合っていると感じました。実際に、選抜研修の未来予測(シナリオシンキング)では、食、空気 水など自社に関連する分野を題材にしていただきました。


研修で目指したのは、「10年後に取り組むべき事業」や「ありたい姿」を描ける状態

選抜研修へのこだわりを教えてください

パナソニック創業者の松下幸之助は経営哲学や人財育成に力を注ぎ、「社員稼業」という言葉を用いて社員一人ひとりが経営者として行動するスタンスを説きました。当社の若手社員は現場目線での業務遂行能力は高いのですが、経営視点は十分に養えていません。選抜された若手社員には、定期的に業務から離れて経営視点で考える機会を持ってもらうために、「視野」と「視座」の観点で研修コンテンツを組み立てました。経営リテラシーを身につけるために、学術的な経営マネジメントの理論とフレームワークを日常の仕事で活かせるように構成しています。

選抜研修プログラム

  • 1回目:経営戦略と事業戦略、 未来予測(シナリオシンキング)
     DAY1 オリエンテーション、自己紹介、経営戦略と事業戦略
     DAY2 未来予測(シナリオシンキング) これからの社会について語る

  • 2回目:財務会計、ビジネスモデル
     DAY1 財務会計 ※アイディアポイント社以外の講師が担当
     DAY2 ビジネスモデルの基礎知識、 事例に関するディスカッション

  • 3回目:調査・マーケティング の基礎知識 、プレゼンテーションの作成
     DAY 1 マーケティングの基礎知識
     DAY 2 資料作成&プレゼンテーションに関する基礎知識

  • 4回目:提言セッション
     DAY1-DAY2 プレゼンテーション(全員)&フィードバック

我々の事業は日本国内をターゲットにしていますが、既存市場の拡大は見込めないため、生き残りをかけて新規事業を創造し顧客体験価値を高めなければなりません。そのために選抜研修には経営戦略と事業戦略以外にも、ビジネスモデルやマーケティングのプログラムも組み込んでいます。岩田さんには「内容が難しいのでは」とアドバイスをいただきましたが、「10年後に我々が取り組むべき事業」や「ありたい姿」を描ける状態に引き上げることにこだわりました。

ビジネスモデルのプログラムについては、近年増加しているサブスクリプションやフリーミアムなどの新しいモデルをきちんと理解し、一人ひとりが現実的に考えるきっかけを持つようにしました。マーケティングに関しても、陥りがちな「プロダクトアウト」発想ではなく「マーケットイン」を重視し、よりユーザ起点で考えられるような内容にしています。

研修の最後には、全員に新しい事業アイディアを提言してもらうことにしました。グループで一提言とすると、立場によって関わりに濃淡が出てしまうので、ワークはグループ単位、提言は個人単位としました。2年間で約20名が参加しているので、今年度が終われば20のアイディアが発表されることになりますが、選抜研修を続けることによって10年経てば100名の100アイディアが生み出されます。これだけ積み重ねていけば、中から将来的に花開くアイディアが生まれるかもしれません。まだ先の話かもしれませんが、100年後、200年後にパナソニック産機システムズという企業が発展し続けるための土台を作りたいと考えています。

当社が扱っている冷凍・冷蔵ショーケースや厨房機器、空調設備は、生活シーンに溶け込んでおり決して目立つものではありません。ですが、我々の製品が世の中の日常を支えていることを誇りに思い、お客様と一緒に市場創出することが楽しいと感じる従業員が増え、入社したい人もお客様も増えていく。それが、創業者・松下幸之助の言った「社員稼業」です。一方、かつての松下電器(現:パナソニック)の創業メンバーで、当社の母体である三洋電機創業者の井植歳男が残した語録のひとつに、「世界に誇りうる精度の高い仕事」という言葉があります。選抜研修を経て自主責任感を持った若きリーダーたちが主役となり、我々の源流となる創業者が残した思いを胸に、こだわりをもって当社の事業を担ってもらえたら、担当者冥利に尽きますね。


研修参加者の半数が管理職に登用。選抜研修が人財登用のシステムとして機能している

受講後の変化はありましたか?

最初は受け身だった参加者も、セッションを重ねるごとに積極性が出て自分の考えを徐々に言語化できるようになりました。もちろん受講後に一気に変化するわけではありませんが、自分なりに考える癖が少しずつついているように感じます。選抜研修は、営業やサービス保守、バックオフィスなど様々な部門から10名程度が選抜されますが、昨年の参加者の半数弱が「課長代理」と呼ばれる組織の責任者になっています。全員が課長代理としての職務を全うしていますし、まだ登用されていない参加者も現場でリーダーシップを発揮して活躍しています。

こうした成果が表れたのは、選抜研修自体が管理職への動機づけになっているという側面もありますが、研修で視野、視座が高まり成長している証だと捉えています。50歳以上の管理職が多いので、若手が管理職に登用されると頼りなく見えたり「上の世代を押しのけた」という印象になったりする傾向がありますが、選抜研修を受けた従業員が管理職になれば、周囲からも若手登用の納得感を得やすくなります。選抜研修がシステムとして機能するというメリットが見え始めていますし、社内に若手登用の流れを作ることができました。選抜研修が管理職へのステップになれば、次世代の若手社員が選抜研修を目指すモチベーションが高まることも考えられます。

今後もこの研修を続けて若手管理職がどんどん成果を出し、30代で部長に登用される世界ができれば、40代の役員が登場する未来も夢ではないと思っています。現在の当社役員は60代を中心に構成されていますが、当社の規模で20歳近くも若返る抜擢人事ができるかどうかは、人事としてのひとつの挑戦。そしていつか、パナソニック産機システムズからパナソニックグループの代表や役員になるような人財を輩出できるような組織にしていきたいですね。

今後、取り組もうとしていることはありますか?

安定的に人を育成する土壌を作ることができたので、人財開発の体系やプログラムをブラッシュアップしながら安定運用を続けていきたいと思っています。おかげさまで当社の2022年度の調整後営業利益は2015年度以降で最高益となりましたが、教育研修は効果が出るまでに10年、20年の長い年月がかかるもの。経営がうまくいっている間は教育にコストをかけられますが、経営には波があるのでいつ悪化するか分かりません。人財開発は10年にして成らずだと思っているので、どんなに経営が悪化しても人を育てることをやめないことを、常に経営層に訴え続けたいと考えています。

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