新規事業のアイディアが思いつかないときは、順を追って思考整理をしていく必要があります。具体的にどのように考えればアイディアを思いつきやすくなるのか、また、アイディアを新規事業として発展させる際に注意したいことについてまとめました。ぜひ参考にしてください。
新規事業のアイディアを考える前にしたいこと
新規事業のアイディアを出す前に、まずは一度立ち止まり、次の3つのポイントについて時間をかけて考えてみましょう。
- 新規事業の必要性を整理する
- 新規事業の目的を明確にする
- 新規事業が成功した様子を思い浮かべる
それぞれのポイントについて考えることがなぜ必要なのか、また、考えることでどのような効果が得られるのか解説します。
新規事業の必要性を整理する
新規事業がなぜ必要なのかについて考えます。必要性について理解すれば、新規事業の方向性も決まり、アイディアも浮かびやすくなるかもしれません。
なお、新規事業が必要な理由は、企業によって異なります。しかし、多くの企業では次のいずれかが理由として挙げられるでしょう。
- 企業が持続的に発展するため
- 企業の将来を担う人材を育成するため
現在手掛けている事業がすべてうまくいっているとしても、それがいつまでも続くとは限りません。目まぐるしく変化する世の中で、永続して価値を持ち続ける事業は限られています。価値観が変わる、消費者の行動パターンが変わるなどにより、事業がうまくいかなくなる可能性も十分に考えられるでしょう。
価値観や行動パターンなどが変化しても企業が発展し続けるためには、企業自身も変わり続けることが求められます。新しいニーズ、新しい価値観に合う事業を生み出し、利益を追求していくことが必要です。
また、新規事業を生み出す過程を通して、社員は各自のビジネススキルを磨くことができます。新規事業に携わるチーム全体が協力し、困難を乗り越えることで、さらに成長していけるでしょう。
新規事業に取り組むことにより、社員が単にビジネススキルを向上させるだけでなく、将来の経営陣として成長することもできます。企業の将来を担う人材を育成する機会を設けるためにも、新規事業は必要だといえるでしょう。
新規事業の目的を明確にする
新規事業に取り組む目的を明確にすることで、アイディアの焦点を定めやすくなります。例えば、リスクを分散させることが目的であれば、現在企業で取り組んでいる事業とは関連性があまりない事業、異なる業種への参入について考える必要があるでしょう。
また、現在企業で保有している技術を活かした事業を開発することが目的であれば、既存技術に対する理解を深めることや異なる角度から事業を見直すことなどが新規事業のアイディアにつながります。アイディアの方向性を決めるためにも、今一度、どのような目的で新規事業を開発するのか、確認しておきましょう。
新規事業が成功した様子を思い浮かべる
新規事業の必要性と目的を正確に理解した後で、事業が成功した様子を思い浮かべてください。多くの消費者から支持されて社会現象を引き起こす、あるいは新規事業の成功によって企業が飛躍的に成長するなど、できるだけ詳細かつ具体的に思い浮かべます。
成功したイメージをチームで共有することで、チーム全体のモチベーションアップにもつながるでしょう。また、「実現可能か」「成功するか」といった視点で新規事業のアイディアを検証するようになるため、より現実的かつ期待値の高いアイディアが浮かぶかもしれません。
新規事業のアイディアが思いつく5つの方法
新規事業の必要性と目的を理解し、事業成功のイメージを共有した後で、アイディア出しを始めていきます。アイディアを思いつきやすくなる方法として、次の5つが挙げられるでしょう。
- 既存事業の問題点を洗い出す
- 成功事業の長所を分析する
- 競合企業の強みと弱みを分析する
- 既存事業のビジネスモデルを他分野に応用する
- 新しい付加価値に注目する
それぞれの方法について、詳しく解説します。
既存事業の問題点を洗い出す
現在、社内で手掛けている事業の問題点を洗い出すことで、新規事業のアイディアが浮かぶことがあります。「この部分を修正したらより良い事業になるだろう」と思われる点があれば、その問題点を解決するアイディアを、新規事業として発展させていくこともできるでしょう。
また、問題を抱える既存事業のなかには、優れた点が隠されていることもあります。問題点を取り除いて良い点のみを抽出することで、収益性の高い新規事業へとブラッシュアップできるかもしれません。
成功事業の長所を分析する
すでに成功している事業の長所を分析することで、新規事業を思いつくことがあります。成功事業は自社に限らず、他社からも探してみましょう。
大きな収益を生み出している事業、社会現象を作り出している事業には、何かしらの成功の秘訣があるはずです。また、すでに成功している事業でも、細かく分析していけば、弱点や不足する部分が見えてくるかもしれません。その弱点・不足点を補うアイディアを加味した新規事業を構築すれば、後発事業であっても十分に成功のチャンスはあるでしょう。
成功事業は、国内だけでなくワールドワイドな視野で探してみましょう。まだ日本では一般的ではないビジネスモデルでも、数年後にはスタンダードになっているかもしれません。他の国内企業より一歩先に事業を始めることで、成功する可能性を高められます。
競合企業の強みと弱みを分析する
新規事業の分野が決まっているときは、競合企業の強みと弱みを分析してみましょう。競合企業が見落としているターゲットや、改善すればより良い結果につながりそうな要素が見つかるかもしれません。
また、特に分野が決まっていないときでも、昨今の人気サービスや商品の強みと弱みを分析することで、新規事業のアイディアが浮かぶこともあります。商品の強みと弱みを分析することで、競合企業自体の強みや弱みに気付くこともあるでしょう。
既存事業のビジネスモデルを他分野に応用する
自社や競合企業の既存事業のビジネスモデルを分析し、新しい商品やサービスに応用することでも新規事業を開発できることがあります。
例えば自社の人気商品の売り方を時代に合わせて変えることで、新たなニーズを開発できる可能性があるでしょう。店舗限定の商品をインターネット通販でも販売する、月に1回、2回程度の定期便として提供するなども検討できます。反対に、インターネット通販限定の商品を対面販売することで、「実際に商品を手に取ってから買いたい」というニーズに応えられるかもしれません。
新しい付加価値に注目する
新たな価値を生み出すことで、収益化できる新規事業が成立することもあります。今まで無料で提供していたサービスを有料化、定期化することで、新しい価値につなげられるかもしれません。
例えば、今までは自社製品を購入した方を対象に無償で1年間の保証サービスを提供していたとしましょう。1年間の無料補償はそのままで、有料で3年、5年に保証期間を延長できるという新たな保証サービスを展開することもできます。また、自社製品を購入したかどうかに関わらず、有料で修理サービスを提供するのも一つの事業として成り立たせることができるかもしれません。
既存事業の隙間、日常生活など、至る所に新しい付加価値は潜んでいます。丁寧に探り、事業化する方法を検討していきましょう。
既存のフレームワークを活用する
新規事業のアイディアが思い浮かばないときは、既存のフレームワークを活用して思考を整理することができます。次の5つのフレームワークも活用してみましょう。
- SCAMPER法
- マンダラート
- 5W1H
- MVV
- ペルソナ分析
それぞれのフレームワークの使い方をわかりやすく解説します。考えがまとまらないときや、何も浮かばないときなど、状況に合わせてフレームワークを使い分けましょう。
SCAMPER法
SCAMPERとは、次の7つの行動の頭文字を合わせた言葉です。
- Substitute:他のものと代替する
- Combine:複数のものを組み合わせる
- Adapt:既存のものを応用する
- Modify:特定の部分のみを修正する
- Put to other uses:既存のものを別の用途に使う
- Eliminate:既存のものから特定の部分を取り除く
- Reverse / Rearrange:順序や構成を変更する
SCAMPER法は、既存の事業を見直すときに活用する方法です。あまりうまくいっていない既存事業も、上記の7つの方法で見直してみれば新規事業として生まれ変わることができるかもしれません。また、すでに成功している事業も、SCAMPER法でアプローチすることでより大きな成功、あるいはターゲットの拡大を目指せることもあります。
マンダラート
新規事業のテーマや方向性が決まっているときは、マンダラートを用いて具体的なアイディアに発展させていくことができます。まず紙に大きな正方形を描き、縦に2本、横に2本の線を引いて3×3のマスに区切りましょう。真ん中のマスにテーマや方向性を記し、周囲の8個のマスにそのテーマ、方向性から思い浮かぶ言葉やアイディアを書き込んでいきます。
8個のアイディアの中にさらに発展させられそうなものが見つかったときは、新たに3×3の正方形を描き、真ん中のマスにそのアイディアを書きましょう。周囲の8個のマスに新たに思い浮かぶ言葉やアイディアを書き込みます。この過程を、新規事業として成立しそうなものが生まれるまで繰り返していきましょう。
5W1H
新規事業のテーマや方向性が決まってはいるものの、抽象的で新規事業として発展させることが難しいと感じたときには、5W1Hのフレームワークを利用してみましょう。
5W1Hとは次の頭文字を合わせた言葉です。
- What:何を
- Who:誰が
- When:いつ
- Where:どこで
- Why:どのような理由で
- How:どのように
上記の6つの要素でテーマを考えることで、具体的なアイディアが浮かびやすくなるでしょう。さらに具体的に分析したいときは、次の3つの要素を加えて「6W3H」として考えることができます。
- Whom:誰に
- How many:どの程度の数が
- How much:どの程度の量が
MVV
新規事業の目的が曖昧なときや、プロジェクトのメンバー全員に周知できていないように感じるときは、MVVのフレームワークを使って整理してみましょう。MVVとは、次の3つの頭文字を合わせた言葉です。
- Mission:自社が負う社会的な責任、社会的な存在意義
- Vision:Missionが実現したときに見えてくる状態
- Value:新規事業を行うに当たって、基礎となる価値観や行動指針
この3つについてすべてのメンバーが正確に理解していると、新規事業の方向性も明確になり、アイディアが浮かびやすくなります。
ペルソナ分析
誰をターゲットにした事業を生み出したいのかについて明確にすることで、新規事業の具体的なアイディアが浮かびやすくなります。ペルソナ分析法とは、ターゲットを分析して事業指針に還元する思考法です。例えば、次のようにペルソナを設定したとしましょう。
23区内に一人暮らししている25歳の女性。通勤時間は30分。出版会社で営業を担当。
趣味はカフェ巡り。休日は一人で気になるカフェに出かけ、SNSで感想を発信。 |
ペルソナを具体的に設定することで、どのような商品やサービスを求めているのか想像しやすくなります。ペルソナの嗜好を分析すれば、新規事業の方向性も決まりやすくなるでしょう。
アイディア出しは外部の協力も得よう
新規事業のアイディアが浮かばないときは、まずはなぜ新規事業を開発しなくてはいけないのかについて考えます。必要性と目的を分析することで、アイディアの方向性が決まりやすくなるでしょう。また、自社や競合企業の既存事業を分析することでも、アイディアのヒントが見つかることもあります。紹介したフレームワークも活用し、アイディアを見つけていきましょう。
社内だけでは新規事業のアイディアが浮かばないときは、外部の協力を得ることも一つの方法です。アイディアポイントでは、新規事業のアイディアを生み出すお手伝いをしております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。