今さら聞けない人事のキーワード – 「HRBP」

日々の業務でよく使われるものの、その定義や基本的な考え方や論点について、「意外と知らない…」、「なんとなく知っているものの、実は理解があやふやなんだよなぁ」ということは実は言えないだけでよくあることなのではないでしょうか。

今回は、人事の分野でよく聞くキーワードとして、「HRBP」を取り上げて解説していきます。


目次

1:HRBPとは何か? その役割と重要性

1-1. HRBPの定義

HRBPとは、「Human Resource Business Partner(ヒューマン・リソース・ビジネス・パートナー)」の略で、人事部門の中でも特に事業部門と密接に連携して働く役割を指します。これまでの人事部は、採用や労務管理といった管理業務が中心でしたが、HRBPは事業戦略と人事戦略を結びつける存在として、経営層や現場マネージャーと協力しながら、人材の活用や組織の強化に取り組みます。

1-2. HRBPの主な役割

HRBPの主な役割は、大きく分けて次の3つです。1つ目は「戦略的人事の実行」で、事業目標に合った人材配置や育成計画を作成します。2つ目は「組織開発」で、組織文化の醸成やチームの生産性向上を支援します。3つ目は「経営との橋渡し」で、経営者の意図を現場に伝えたり、現場の課題を経営にフィードバックする役割です。

1-3. なぜ今、HRBPが注目されるのか?

企業環境が激しく変化する中で、企業は迅速な意思決定と柔軟な組織運営を求められています。こうした時代において、人事部門も「経営に貢献する存在」へと変わる必要があり、HRBPという考え方が注目されるようになりました。HRBPは現場と経営の間に立ち、人材を活かして組織を変革するキーパーソンとなります。


2:実際の導入例 – 各社のHRBP活用法

2-1. P&Gの先進的なHRBPモデル

HRBPの先駆けとも言われるのが消費財大手のP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)です。同社では1990年代からHRBPを導入し、事業部ごとにHRBPを配置しています。これにより、各部門の目標や課題に合わせた柔軟な人事対応が可能となり、グローバルな成長を支える仕組みを構築しました。

2-2. リクルートにおける人材戦略の一翼

日本の人材業界を代表するリクルートでは、急成長する事業に対応するためにHRBPの体制を強化しています。たとえば、ある新規事業の立ち上げ時には、HRBPが経営層と共に組織設計や採用戦略を検討。人材のミスマッチを防ぎつつ、スピーディーなチームビルディングを実現しています。

2-3. 富士通の変革期におけるHRBPの貢献

近年、大規模な組織変革を行った富士通でもHRBPが重要な役割を果たしています。特に「ジョブ型雇用」への移行では、HRBPが部門ごとの職務定義の整理や評価基準の設計に深く関与。変化に伴う社員の不安をケアしながら、組織のスムーズな移行を支えました。


3:HRBPから得られる示唆と実践へのヒント

3-1. 経営視点を持つ人事の育成

HRBPの導入には、人事部門のマインドセットを変えることが欠かせません。単なる事務作業から脱却し、「経営に貢献する人事」として、自社のビジネスや市場を理解する力が求められます。人事担当者が財務や事業戦略について学ぶことも、今や常識となりつつあります。

3-2. 組織内の信頼関係の構築

HRBPが成功するには、経営陣や現場マネージャーとの信頼関係が不可欠です。そのためには、定期的なコミュニケーションを通じて相互理解を深めることが大切です。現場の声を丁寧に拾い上げる姿勢が、長期的な関係構築につながります。

3-3. 小さな成功事例の積み重ね

HRBPの導入は、一足飛びにはいきません。まずは1つの部署やプロジェクト単位で試験的に取り組み、小さな成功を積み重ねることが、社内全体への展開を成功させる鍵となります。成果が見えやすい分野から始めることで、社内の理解と支持を得やすくなります。


4:まとめ – HRBPは人事と経営をつなぐ架け橋

4-1. HRBPの未来

HRBPは、これからの時代の人事のあるべき姿を体現しています。人材の力を最大限に引き出すためには、戦略的な視点と現場感覚の両方が必要です。HRBPはそのバランスを取る役割を担い、企業の持続的成長を支える存在です。

4-2. すべての人事がHRBP的視点を持つ時代へ

今後は、HRBPという役職の有無にかかわらず、人事に関わるすべての人が「経営と現場をつなぐ」という視点を持つことが求められます。これは、企業が変化に強く、柔軟に対応していくための重要なカギです。

4-3. 明日からできる第一歩

まずは、自分の担当する部署や業務が、会社全体の戦略の中でどのような位置にあるかを意識することから始めましょう。そして、現場の声を聞き、経営の意図を理解する努力を重ねることで、自然とHRBP的な働き方に近づいていけるはずです。


今回は、人事の分野でよく聞くキーワードとして、「HRBP」を取り上げて解説しました。正しい活用は正しい理解から!みなさまの業務に活用いただければ幸いです。また、「実はこんな理論、コンセプトも解説してほしいんだよね」というものがありましたら、弊社営業までお問い合わせください。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
管理本部
高橋佑季

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