今さら聞けない人事のキーワード – リスキリング

日々の業務でよく使われるものの、その定義や基本的な考え方や論点について、「意外と知らない…」、「なんとなく知っているものの、実は理解があやふやなんだよなぁ」ということは実は言えないだけでよくあることなのではないでしょうか。

今回は、人事の分野でよく聞くキーワードとして、「リスキリング」を取り上げて解説していきます。


目次

1.なぜ、今、ビジネスパーソンに「リスキリング」が求められるのか

スキルの賞味期限が短くなっている

IT分野に限らず、マーケティング、営業、バックオフィス業務など、あらゆる領域でツール・トレンドの変化が加速しています。10年前に最先端だったスキルが、現在では通用しないということも珍しくありません。だからこそ、キャリアを長く維持するためには「継続的な学び」が欠かせません。

● DXとAIの急速な普及

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、すでに一部の企業だけの取り組みではありません。大企業から中小企業、さらには行政に至るまで、「業務のデジタル化」「データ活用」「AI活用」が当たり前になりつつあります。とくに生成AIの登場は、ホワイトカラー業務を劇的に変える転換点です。資料作成や分析、アイデア出しなど、多くの“知的労働”がAIで効率化される一方で、「AIを使いこなす人」と「使えない人」の間に大きな差が生まれつつあります。

企業がリスキリングを重視し始めた

政府が推進する「人への投資」を背景に、多くの企業が社員の学び直し支援に本腰を入れ始めています。学習費用の補助、就業時間内の学習許可、DX研修の内製化など、環境は確実に整いつつあります。もはや学ぶかどうかではなく、「何を、どう学ぶか」が問われています。


2. リスキリングとリカレントの違い

「リスキリング」と「リカレント教育」は同じ文脈で議論されるため混同されがちな概念ですが、次のように整理することができます。

  • リスキリング:企業や仕事の変化に合わせて「新しいスキルを獲得する」こと
  • リカレント教育:大学院・社会人学校などで「再び体系的に学ぶ」こと

つまりリスキリングは、より即効性があり、実務に直結する学びです。キャリアを転換したい人だけでなく、“今の仕事を進化させたい人”にとっても有効なアプローチです。


3. 何を学べばよいのか? リスキリングの主要テーマ

リスキリングと言っても、学ぶべき領域は人によって異なります。ただし多くのビジネスパーソンに共通して必要とされるのが次の6領域です。

① AI活用スキル

生成AI、データ分析AI、業務自動化など、AIは多くの業務の前提になりつつあります。「AIに仕事を奪われる」ではなく、「AIを使って仕事を進化させる」発想が重要です。

データリテラシー

データの読み方、基本的な統計、ダッシュボードの理解など、“数字を武器にする力”はすべての職種で必須になりました。とくにマーケティングや営業企画、経営企画では優先度が高まっています。

デジタルツール活用

ノーコードツール、MAツール、BIツールなど、現代のビジネスは大量のソフトウェアに支えられています。ツールを適切に使えるかどうかで生産性に大きな差が出ます。

ビジネス基礎スキルの強化

論理的思考、コミュニケーション、プロジェクトマネジメントなどは、デジタルスキル以上に重要です。AIが普及するほど、人間自身の“仕事の設計力”が問われるようになります。

マネジメント・組織運営スキル

変化の激しい時代では、上司であるほどアップデートが必要です。心理的安全性をつくる、データに基づく意思決定をする、メンバーの育成を行うなど、“現代型マネジメント”が求められています。

キャリア自律のための学び

価値観の整理、強みの理解、キャリアデザインなど、自分の働き方を見直すことも重要です。キャリアの方向性が明確になると、どのスキルを優先して身につけるべきかが見えてきます。


4. リスキリングを成功させる3つのステップ

STEP 1:目的を明確にする

「なぜそのスキルが必要か?」が曖昧だと、途中で学習が止まります。

  • 今の仕事のどの課題を解決したいのか?
  • 次のキャリアで何を成し遂げたいのか?
  • どんな働き方をしたいのか?

目的を言語化することで、学ぶスキルが整理され、優先順位がつけやすくなります。

STEP 2:小さい学習から始める

学習は負荷が高いものです。「半年コース」「専門資格」のように重いものを一気に始めると続きません。まずは以下のような“ライトな学び”から始めるのがポイントです。

  • 10分の動画を観る
  • AIツールを1つ試す
  • 小さな実務改善に挑戦する

行動のハードルを下げることで、学びが習慣化しやすくなります。

STEP 3:仕事で使ってみる

リスキリングは“実務に生かしてこそ価値が出る”という点が最大の特徴です。学んだ内容を、どんな小さなことでもいいので仕事に試すことが大切です。

例:

  • マクロが使えるようになった → 月次報告の作成を自動化してみる
  • BIツールを触った → チームの売上推移を分析してみる
  • AI活用を学んだ → プレゼン資料の下書きをAIで作ってみる

小さな成功体験を積むことで、学びが継続し、スキル定着が加速します。


5. 企業でリスキリングを進めるポイント

ビジネスパーソンだけでなく、企業側にとってもリスキリングは重要な経営テーマです。特に次の3つが成功要因になります。

戦略と連動させる

「流行だからとりあえず学ばせる」のではなく、会社の中期戦略や事業計画と結びつけることが不可欠です。

仕事と学びを一体化する

学びだけを提供しても効果は出ません。「学んだことを使う仕事」をセットで設計する必要があります。

マネジャーを巻き込む

現場マネジャーの理解と支援がないと、学びは形骸化します。メンバーの育成責任を持つ人こそ、先にリスキリングを実践する姿勢が求められます。


6. リスキリングは“自分の未来をつくる投資”

リスキリングとは、単にスキルを増やすための学びではなく、 “自分がどんな未来をつくりたいか”を選び取るための手段 ”です。

時代が大きく変わる中で、必要なのは「変化に合わせる人」ではなく、「変化を味方にする人」。その第一歩がリスキリングです。

学び直しに遅すぎるということはありません。むしろ、“今がいちばん早い”。 今日の小さな学びが、数年後の大きなキャリアの武器になります。


今回は、人事の分野でよく聞くキーワードとして、「リスキリング」を取り上げて解説しました。正しい活用は正しい理解から!みなさまの業務に活用いただければ幸いです。また、「実はこんな理論、コンセプトも解説してほしいんだよね」というものがありましたら、弊社営業までお問い合わせください。

本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
管理本部
高橋佑季

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