「初学者」の気持ち、わかってますか? – 教わる側と教える側、両方やってみてわかったこと

アイディアポイント岩田です。気がつけば6月、梅雨の季節になってきました。じめじめとした天気が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

最近、立て続けに「初学者」として、そして「教える側」として、ふたつの研修に関わりました。ひとつは私自身がAI研修を受講したこと。もうひとつは、新入社員研修の講師として登壇したことです。この2つを経験したことで、「初学者とはどういう状態にあるのか」がこれまで以上にリアルに見えてきました。

今回は、初学者の気持ち・苦労と、それをどう解消していくかについてお伝えしたいと思います。

目次

1. 初学者が「わからない」と言えない理由 – そもそも、何がわからないかがわからない問題

「わからないことがあったら、いつでも質問してください」という言葉を、研修の場でよく聞きます。もちろん善意からくる言葉ですし、私自身も言ってきた言葉です。ただ、今回、受講者の立場になって初めて気づいたことがあります。それは、「何がわからないかが、そもそもわからない」という状態があるということです。

初学者は、知識のベースラインがありません。知らない言葉が出てきても、「その言葉を知らない」ということすら、最初は気づきにくい。話がある程度進んでから、「あれ、さっき出てきた言葉…どういう意味だったんだろう」と遅れて気になり始める。そうなると、すでに会話は先に進んでいて、「どこに戻って質問すればいいのか」すら見失ってしまうのです。

これが「わからないことを言葉にできない」という状態の正体だと、私は思っています。質問する気がないわけでも、勉強不足なわけでもない。ただ、自分の理解の地図そのものが、まだ存在していない。その状態で「質問してください」と言われても、なかなか難しいですよね…。

2. 教わる側が経験した「3つのしんどさ」– AI研修の受講者として

私自身がAI研修を受けてみて、「しんどいな」と感じたことが3つありました。恥ずかしながら、正直に書きます。

まず、知らない言葉で説明されること。これが、想像以上にきつかった。混乱するというよりも、少し腹が立つ感覚に近かったです(笑)。言葉を知らないまま話を聞き続けるのは、目を開けたまま泳いでいるような感覚です。何かは見えているけれど、全然つかめない。

次に、ひとつつっかかると、その後がまるでわからなくなること。これは恐怖に近い感覚でした。「今、自分は理解できているのか?」「どこかでもうすでに迷子になっているのではないか?」という不安が、ずっと頭の片隅に居座っている状態です。わかっているうちはいいのですが、ひとつでも「?」が出てきた瞬間から、急に視界が霞む感じがしました。

そして、全体像がないから、個別の対応を受け取れないこと。「そこは気にしなくていいですよ」「後で出てきますから」というアドバイスは、全体の地図を持っている人には親切な言葉です。でも、地図そのものがない人間には、「どのくらい気にしなくていいのか」「後でというのはいつなのか」が判断できない。結果として、余計に不安になってしまうのです。

3. 教える側になって見えてきたこと – 新入社員研修の登壇から

講師として新入社員研修に登壇してみると、今度は「ああ、これが見ている側の景色か」という発見がありました。

まず印象的だったのは、些細な疑問がひとつ出ると、それ以降の話が頭に入っていないことです。マナーについて説明しているとき、「でも、こういう場合はどうするんですか?」という疑問が出た瞬間、その場の空気が変わるのがわかりました。その疑問が解消されない限り、どれだけ次の話をしても、聞いているようで聞いていない。これは受講者が悪いのではなく、むしろ真剣に考えている証拠だと思っています。細かいことでも丁寧に向き合っていくことの大切さを、改めて実感しました。

もうひとつは、「わからない」を言葉にすることの難しさです。「納得がいかない」「これっておかしくないですか?」と言っている受講者の話をよく聞いてみると、実はひとつ前の情報を正確に理解していなかったり、以前のアルバイト経験と混同して別の理解をしていたりすることがよくありました。本人は正直に「わからない」と言っているのに、その「わからない」の中身が複雑に絡まっているのです。これは、丁寧に言葉を置いて、ステップバイステップで整理していくことで、かなり解消できました。「正確に伝える」ことの難しさと大切さを、あらためて感じました。

4. 「ケースバイケース」をどう伝えるか – まだ答えが出ていない難問

今回の研修で、私が一番悩んだのはここでした。

仕事には、原理原則があります。でも、現実の仕事はその通りにしか動かない、ということもありません。「ケースバイケース」という言葉がある通り、状況に応じた判断が必要です。これは、ベテランには当たり前のことです。

ただ、初学者にこれをどう伝えるか、が難しい。最初からケースバイケースだと教えると、原理原則が曖昧になります。逆に、「まずはルール通りに」と強調しすぎると、「その通りにやれば大丈夫」という硬直した理解になってしまう。どちらに転んでも、うまくいかない気がする…。

私が出した言葉は「すべてがケースバイケースに見えないように」というものでした。つまり、まず原則を理解したうえで、「この場面は例外」という位置づけでケースバイケースを覚えてもらう、という伝え方です。ただ、これがうまく伝わったかどうかは、正直、自信がもてていません。うーむ。初学者への「応用の伝え方」は、しばらく考え続けるテーマになりそうです。

5. 初学者に関わるすべての人へ – 期待と不安の間にいる人たちのために

最後に、少し視点を変えて書きたいと思います。

初学者というのは、「何も知らない人」ではなく、「期待と不安が入り混じっている人」だと、私は思っています。新しいことを学ぼうとする気持ち、知りたいという好奇心は確かにある。でも同時に、「ついていけるだろうか」「恥ずかしい思いをしないだろうか」という不安も、ちゃんとある。そのふたつが、常に同居している状態です。

その状態の人に一番必要なのは、完璧な説明でも、最新の教材でもなく、「この場所は安全だ」という感覚だと思います。わからなくても怒られない。変な質問をしても笑われない。少し遅れても置いていかれない。そういう安心感があって初めて、初学者は「もう少しやってみよう」と思えるのではないでしょうか。

教える側も、完璧である必要はないと思っています。私自身、今回の研修でわからないことがあったし、うまく伝えられなかったこともある。それでも、「一緒に考えましょう」という姿勢は、相手に必ず伝わると信じています。

初学者の期待と不安、両方を大切にしながら、前向きにやっていく。それが、学びの場に関わるすべての人に、一番必要なことではないかなと思っています。

ということで、今回は初学者の気持ちとその解消についてをテーマに書いてみました。教わる側と教える側、両方を短期間で経験できたのはなかなか貴重な機会でした。「ケースバイケースの伝え方」については、引き続き考え続けます…。

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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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