顧客事例:全社員にアントレプレナーシップを!新規事業提案会を研修で伴走することで熱意を高め提案をブラッシュアップ

シャープ株式会社
人事部 
人事グループ
竹原 正哲様

当社がご支援させていただいているお客様にインタビューをし、その内容を掲載いたします。
今回はシャープ株式会社様です。


目次

経営危機を経てCEOが変わり、全社的な新規事業提案会の実施が人材育成のミッションに

人材育成に関する課題を教えて下さい

1912年に金属加工業として創業した当社は、2023年に111周年を迎えました。始まりは金属加工技術を活かして開発した金属製のベルトのバックルです。1915年には「早川式繰出鉛筆」を世に送り出し、のちに「エバー・レディ・シャープ・ペンシル」として売り出しました。皆様がご存じのシャープペンシルの元祖は当社が発売を開始したもので、現在の社名の由来となっています。

今日に至るまで、当社は経営信条「誠意と創意」、創業者の理念である「他社がまねするような商品をつくれ」の精神のもとに、世界初、日本初、業界初など数多くのユニークな製品・ソリューションを産み出してきました。

しかし、2012年以降に経営危機を経験し、元気のある事業やシャープらしい商品開発が減ってしまいました。社内では「開源節流」という健全な財政を川の流れに例えた言葉を使うのですが、「開源(水源を開発すること)」「節流(水の流れる量をしっかりと調節すること)」という意味から、新たな事業を産み出し利益を創出することが強く求められています。

私自身は技術者として新卒入社し、商品開発や商品企画を20年続けてきました。ユニークな観点や特殊技術を使ったシャープらしいものづくりに携わり、非常に恵まれた経験をさせてもらいました。技術や企画などを通じたものづくりの楽しさを知る人材をもっと増やしたいと思い、2014年に人材育成の部署に手を挙げました。しかし、ジョブチェンジした翌年の2015年に経営危機が深刻になり、研修施策は全て凍結。数年間は新入社員研修などの基礎研修だけを実施していましたが、2020年頃からようやく研修の幅を増やしつつありました。

新規事業創出という課題をどのように解決しようとしているのでしょうか?

2016年に台湾の鴻海精密工業の傘下へ。2022年には経営トップが交代し、新たに呉CEO(ロバートCEO)が就任しました。新経営体制では「ESG(環境・社会・ガバナンス)に重点を置いた経営」を掲げ、経営方針の一つとして「人(HITO)を活かす経営」が挙げられています。人はもちろん人材を指しますが、アルファベットで表した「HITO」は、Hybrid、Innovation、Talent、Opportunityの頭文字となっています。さらに、CEOからは具体的な施策として「Startup Competition(新規事業提案会)を実施したい」との意向がありました。

CEOの言葉を聞いて、人材育成に関わる立場として「チャンスがやってきた」と思いました。新規事業開発の重要性はみんな理解しているものの、一部の社員だけが考えることだと捉えられているように感じていたからです。経営トップからこうした言葉があったことは、全社に気づきを与える機会になると思いました。全社員が新規事業開発にチャレンジすることになりますが、一方で、人材育成のチームも新規事業提案会を実施したことがなく、新たなチャレンジが始まりました。


制約条件を超えて希望に寄り添ったイメージ通りの提案を受けたことが、アイディアポイントを選択した理由

アイディアポイントを選んだ理由は

新規事業提案会は研修を受けて終わりではなく、その先の事業化まで一気通貫の仕組みである必要があります。知識のインプットという意味での研修なら我々でも実施可能かもしれませんが、ビジネスとして成立するような提案内容にするためには、外部の力をお借りしなければならないと感じていました。複数の研修会社にお声がけしたのですが、2022年半ばに相談して年内に最終の審査会をするというスピード感だったので、我々がイメージするようなご提案をいただけたのはアイディアポイントさんだけでした。他の研修会社は自社パッケージでのご支援だったのですが、アイディアポイントさんはできるだけ我々の希望に寄り添った内容で、一緒に走りながら最適な形を考えていただきました。これなら新規事業提案会の経験がない我々も、力をお借りしながら最後まで走り切れると思いました。

新規事業提案会に向けて、どのような研修を実施したのでしょうか

「SHARP Startup Competition(SSC)」と銘打った新規事業提案会を実施し、2022年度は7月に募集開始し、12月に最終審査会を行いました。SSCは審査して終わりではなく、事業化が見込まれる優秀提案を選出し、会社が支援しながら実際に事業化に向けて取り組んでいただきます。審査は2ステージに分け、第1ステージは事業本部や関係会社が審査し、代表を決定して第2ステージで提案のブラッシュアップ、および最終審査会を実施します。エントリー数は全社で300提案ほど。最終的に残ったのは16チームでした。

アイディアポイントさんには、全社大会である第2ステージの提案のブラッシュアップをご依頼しました。第1ステージを通過した代表提案ではあるものの、経営が求めるレベルに近づけるために研修や個別のコーチングを通じてフォローしていただきました。研修に参加するチームはとても熱い気持ちを抱いて提案してくれていますが、新入社員から中堅・ベテラン層まで幅広いので、そのレベル感は様々です。画一的なフォローにせず、チームに合わせて熱意をさらに高めていただき大変感謝しています。

研修プログラム(2022年度)

  • PhaseⅠ:e-learning (デザインシンキングやビジネスプランニングなど)


  • PhaseⅡ:集中合宿
     DAY1 事業計画の書き方
     DAY2 ビジネスモデル、市場推計
     DAY3 顧客候補へのアプローチ

  • PhaseⅢ:中間レビュー
     DAY1 ビジネスプランのブラッシュアップ&フィードバック

  • PhaseⅣ:最終合宿
     DAY1 ビジネスプラン・プレゼンのブラッシュアップ&フィードバック
     DAY2 各チームへの個別メンタリング&フィードバック

2023年はSSCの前半でもっと新しいことを考える楽しみや具体的なスキルを身につけてもらうため、内製になりますが“アイディアソン”という形式でイベント研修を実施しました。自分たちがステレオタイプに考えていることが新しい発想の障害になっているという可能性を問いかけ、世の中の困りごとやニーズからアプローチ方法を考えるという研修です。8月から10数回は実施していますが、ビジネスユニット単位で実施しているので、普段は顔を合わせない社員ともざっくばらんに会話できる機会になっています。組織を超えて和気あいあいとディスカッションする姿を見て、アイディアの積み重ねが2倍、3倍の相乗効果を生んで、イノベーションやヒット商品につながるのだと感じました。自分が現場で働いていた頃は、技術者が常にアンテナを張り巡らせてアイディアを出し合って、プロトタイプを作るような文化がありました。一人ひとりが個別に考えるだけではアイディアの広がりに限界があります。普段とは違うことを考える場を提供し、新しいことを考える楽しさを感じてもらう機会を作っていかなければとも思いました。


研修のフォローによって提案がレベルアップ。全社大会に進んだチームの自信が目に見えて増していった

研修の成果や新規事業提案会の手応えはいかがでしたか?

受講者からは「これまで受講したどんな研修よりも良かった」と、SSC運営としてはありがたく、人材育成としては複雑なフィードバックをもらいました(笑)。SSCの取り組みを通じて、会社が新規事業やイノベーションにチャレンジしようとしていること、全社員にアントレプレナーシップを持ってもらい、やりたいことがある人には会社が支援するということを認知してもらえたのではないかと思っています。

個人的に嬉しかったのは、最初は不安がひしひしと伝わってきた全社大会に進んだチームが、研修の伴走によって提案がレベルアップするにつれて、自信も増していくのが目に見えて分かったことです。最終審査会で経営幹部の前で堂々とプレゼンを披露し、清々しい表情を目にした時は事務局冥利に尽きました。自分自身がものづくりの楽しさを知ってもらいたくてジョブチェンジをしたので、やりたかったことに近づくことができて、会社としても個人としてもいい活動ができたかなと思っています。

2022年度の最終審査会で選ばれたチームは、会社からの支援を受けて事業化を続けています。新しい事業を興すということは、検討しなければならないことが多く産みの苦しみがあるとは思うのですが、傍目にはとても楽しそうに映るんです。とても嬉しいし、うらやましくも感じました。

今後、取り組もうとしていることはありますか?

SSCが2年目に入り、アイディアソンもスタート。組織的な新規事業創出のための仕組みづくりが形になってきました。CEOの想いを実現し、SSCの取り組みが開源につながるように発展させていきたいと考えています。やっぱり仕事に対して、苦しいと思う時もあるかもしれませんが、基本的には楽しいと感じてもらいたいと思っています。経営危機で研修が全面凍結になったこともありましたが、今は新しいことをさせてもらえるチャンスを与えてもらっています。働くって楽しい、新規事業を作るって嬉しいと思ってくれる人をどんどん広げていくような仕掛け作りに力を入れていきたいですね。

そして “Be a Game Changer”をキーワードに、人や社会に寄り添い、常に新たな価値を提供し続ける企業になるべく、社員が一丸となって取り組む起業家精神溢れる会社にしていきたいと考えています。

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