そこに人が集まる『ストーン・スープ』の話

アイディアポイント岩田です。最近、プロジェクトの中で、どうやってチームを作っていくか、どうやっていろいろな人を巻き込みながらこのプロジェクトを大きく育てていくのか議論をする機会が増えています。その際に、私が紹介する昔ばなし?をご紹介します。この話、もともとは中国の故事だそうです。Jon J. Muthという人が絵本にしています。
Marcia Brown『Stone Soup』(1997)Aladdin; 1st Aladdin Books Ed版

まずは、あらすじを。様々なところで紹介されていてディテールは異なりますが、大体、以下のような話です。

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旅人が小さな村にたどり着いた。空腹を抱えた旅人は食べ物を乞いながら民家に立ち寄るが、食べさせるものはないと断られてしまう。旅人はやむをえず村の広場で火を起こし、持っていた鍋を火にかけてお湯をわかし始めた。

しばらくすると、そんな旅人に興味をもった小さな少女がやってきて聞く。「ねぇ、何してるの?」すると、旅人はこんな答え方をした。「ストーン・スープを作るんだよ。でも、それには丸い石が必要なんだ。」それを聞いた少女は、どこからかすぐに丸い石を探して持ってきた。

「これでおいしいスープができる。けど、もっと大きな鍋じゃないと入らないなぁ。」これを聞いた少女は家から大きな鍋を転がしてきた。そして、母親がついてきた。

湯が沸いて湯気がたつと何人かの見物人がその周りに集まってきた。しばらくして、旅人はスープを味見して「悪くない」とつぶやき、「にんじんがあればな」と言うと、どこからか一束のにんじんが手際よく手渡された。旅人は再びスープの味を見て「美味しい。玉ねぎもあればもっと石の風味がよくでるのだが。」と言うと、玉ねぎ一袋がまちきれないようにさっとでてきた。

それを見てさらに旅人は言った。「お肉があるとおいしくなるんだけどな。あと他の野菜があるといいし、塩、こしょうもあるといいんだが。」「それならうちにある!」そう言って村人たちはさまざまな食材を持ってくると鍋に放り込んだ。

セロリ、じゃがいも、きのこ、まめなど大鍋は溢れそうなほど。ぐらぐら煮立ったスープからはおいしそうな匂いが漂ってくる。旅人はもう一度味見をし、できたと宣言する。たっぷりのスープは村中の人がお腹一杯飲むほど。「こんなに美味しいスープが石からできるなんて。」村人はロ々に言い合った。

(DNP創発マーケティング研究会『創発するマーケティング』(2008年)日経BPコンサルティング、P16を参考に、一部、加筆)

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この物語は、大まかに理解するとこんな構成になっています。

  1. 外部からやってきた人、言い出した人がきっかけとなって、
  2. 言い出した人の頭の中には方向性はあるものの、あまり具体的な目標も計画もないまま、
  3. さまざまな立場の者が互いに協力して、ワクワクしながら一緒に作り、
  4. 予想以上の結果を生み出す!

そして、その成功のコツは  

  • ストーン・スープという『マジカル・ワード』
  • 「こんな感じ」はあるんだけど、具体的なレシピ(調理法)を誰も知らない
  • 立場の異なる人たち、参加者の幅の広さが集まってくる
  • 予想と期待を上回る成果
  • 新しい「関係づくり」

新しいプロジェクトもこんな形で大きくなるとよいのではないかと思います。「まだ、具体的になっていない何か」を語り、「方向性は頭にあるけど、具体的なものは決まっていない」まま進めているうちに、少しずつ「活動や出来上がっているものに周囲の人が興味を持って」くれて、自然に「楽しみながら協力してくれる」ようになっていくうちに、「みんなで盛り上がってきて」、「最終的に大きな成果を挙げてそれをみんなで分ける」、その結果、「仲良くなる」。そんなプロジェクトをしていきたいものです。そして、それぞれがまた、次のチャレンジに向かうこの話に出てくる旅人のようなビジネスパーソンライフを送ることが幸せなのではないでしょうか。

事業開発のプロジェクトをしていると、「1人の天才」や「誰もみたことのない / 考えたことのないアイディア」を求めるケースが非常に多くあります。もちろん、これがあればすごいのですが現代の新規事業開発分野では、1人の天才が誰も見たことがなく、思いもつかなかったようなことを「ポンッ」と創り出して、周囲が「おぉ~」と言って買うということはあまりないのではないでしょうか。

このストーン・スープのように、誰かが言い出して、周囲がそれに興味を持ち、魅力を感じ、そのプロセスに「乗らないではいられない」ような、そんな仕事ができるリーダーやアイディア、プランを育てることも新規事業開発のプロジェクトでは大切です。おそらくこの旅人も、「本人は何もやっていない」、「口だけ」、という批判や「結局、おいしいものができたのは周囲のおかげ」という評価もあると思いますが自分で言い出したことをきちんとやり遂げて、周囲に幸せになった人がいるという事実が素晴らしいと思います。

私は、ストーン・スープの話を新規事業開発のプロジェクトとリーダーに重ねて読みましたが、みなさんはいかがでしょうか。最後に『信じて楽しそうにやっている』場所に人が集まるという点がとても大事だと感じました。やはり、プロジェクトは「なんだか、そこで楽しそうなことやっているな」という雰囲気が大事です。

ということで、今回は、『人が集まる』、『周囲を巻き込む』プロジェクトをテーマに、ストーン・スープの話を紹介しました。当社では、プロジェクトを『信じて、楽しくやる』ことを大切にしています(経営理念にもあるように、よりクリエイティブに!よりハッピーに!)。新しいことにチャレンジするときに、何かを信じて楽しくやり遂げようという方!そんな仕事をしたい方は、ぜひ、当社にお声かけください!(ここは、営業です!!ぜひ!!)

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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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