『ターゲットは絞った方がよいのか』について回答します

アイディアポイント岩田です。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。私の方は、年末に報告 or 年内に検討を“ほぼ”終えて、年明けに報告会というスケジュールのプロジェクトが多くありましてそろそろ、いろいろなところでラストスパートです!これまで検討してきた内容やいろいろな試行錯誤を最後、しっかりと詰めて勢いよくゴールできるようしっかりサポートするぞ!ということで、毎日、忙しくてしております。

ということで今回は、多くのプロジェクトの中で出てくる「よくある質問」として、新規事業を検討する際に、『顧客(ターゲット)は絞った方がよいのか』という質問への回答をまとめます。この質問に関しては、毎回、説明して、毎回、同じように質問がくることなので、その意図も含めて、きちんとまとめておこうと思います。


目次

今日の結論 : 新規事業 / 新商品に関しては、最初はとにかく『絞る』、『具体的にする』のが原則

『顧客を絞るべきか』に関しては、ほぼ、議論の余地がないと思います。

あらゆる書籍 / 実務家やコンサルタントのコメントで、特に、新規事業や新商品などの「まだ実績のないモノやサービス」については、実際にその顔が見えるくらい具体的に人物像をイメージするところからスタートして、特定のターゲットに向けてスタートすることが大事だと述べています(ターゲットを広めにとりましょう、できるだけ抽象的にしておきましょうと書いてあるもの、言っている人は見たことがありません)。

いくつかの切り口で絞った「特定のセグメント」を想定して、モノやサービスを企画していくことや企画者の頭の中だけにいる「想定された人物」だけで検討を進めてしまうことは、よくある失敗例として必ず挙げられるものです。

私たちのプロジェクトの中でも、顧客像やターゲットとなる市場を具体的に設定しきれずに、「うーん、欲しい人はきっといるはずなんだけど(実際にはいない)」となることや、プロジェクトの途中で、想定している顧客像が抽象的すぎて、「どのようにカイゼン、方向転換するべき」か迷ってしまうようなことはなくもありません(実際、結構、あります)。

特に、新規事業や新商品に関しては、まずは、『顧客像は具体的であれば、具体的あるほどよい』、『最初に狙う市場は絞れていれば、絞れているほどよい』と覚えておいてください。

なぜ、『顧客像は具体的であれば、具体的であるほどよい』、『最初に狙う市場は絞れていれば、絞れているほどよい』のでしょうか。これは、「ビジネスにとって一番大切なのは『顧客』」というちょっとした精神論で言っているのではありません。どちらかと言えば、今後、みなさんが検討を進める、事業を立ち上げるための極めて実務的、実践的な理由から、顧客像を絞ること、最初に狙う市場を絞ることをお勧めしているのです。

理由① : 実績のない新しい事業 / 新商品は、「強烈にほしい人」がいなければ売れない、事業が立ち上がらない

最初の理由はシンプルです。「そうしないと立ち上がらない」からです。どんなビジネスでも誰かが最初に購入しないとスタートできません。そして、実績のないものを最初に売るのはとても大変です。最初に購入してくれるのは、その商品・サービスを「強烈に欲している」人です。このような人物はそう多くありません。多くない以上、抽象的な顧客像では探しきれません。なので、具体的に想定して、そこに向けた商品サービスを提供する必要があります。

理由② : 事業立ち上げ時の商品・サービスは、おそらくカイゼン点だらけ。総合力で勝負しにくい。特定の分野(機能やターゲット)で実績を積み上げて、その実績をもって、大きな市場へと拡大するのが定石

新規事業では、最初はどうしても商品・サービスに不具合があったり、当初の仮説が違っていたりすることが多くあります。その際に、大きな市場や顧客層の幅が広いと修正点が幅広く出てしまうために、対応するのが大変になります = リソースが分散 / 不足することになります。事業スタート時にはできるだけリソースは分散しない方が効率がよいと思いますので、ある程度、限定した顧客層からスタートする方が現実的だと考えられます。 

理由③ : 今後、現実的に製品・サービスを設計するのに、ターゲットは絞って、具体的な人物像まで考えておくことが現実的

この点は、私が個人的に一番、強調しておきたい点ですが、今後、検討を進めていく中で、様々な『変更』が出てくると思います。費用を高くしなくてはいけない、機能を減らさなくてはいけない or 機能を追加したらどうか、競合と比較してよいのか / 悪いのか(それはなぜか)、あらゆる検討の基準は、『顧客がどう判断するか(判断すると予測されるか)』です。

その際に、この顧客像をしっかりと持っていないと判断ができません。『子どものいる母親』であっても、当然、子どもの年齢や働いている / 働いていない、自身の受けてきた教育や世帯年収や住んでいる場所等で、時間やお金の使い方は様々でしょう。具体的なイメージができていないと「このサービスにいくら払うのか / 高いのか安いのか」、「どんなサービスにするのか」というのも判断に迷うことになってしまいます。

ということで、まとめてしまうと「それが、一番、現実的だから」ということになります。もちろん、世の中に出して「幅広い層」に受け入れられて売れるような商品が出せるのであればそれで問題ありませんが、やはり、最初は、特徴のある製品を、それを強烈に欲している人たちに利用してもらうことからスタートすることが定石だと思います。

みなさんならどっちのお店に行きたい? - 新しい○○屋さんを始める

 みなさんの家やオフィスの近くに新しい『お店』ができたとして、みなさんが消費者ならどちらのお店に行ってみたいでしょう?
 

  • 『いろいろなラーメンが楽しめるお店』 vs 『店主こだわりの究極の味噌ラーメン店』(このネタは先輩コンサルタントのお話から引用。感謝)
  • 『様々なパスタが楽しめるパスタ屋』vs『たらこスパゲッティ一筋の専門店』(最近、街を歩いていたら、他にもカルボナーラ専門店、ボロネーゼ専門店もありました。パスタの専門店、流行しているのか)
  • 『世界中の雑貨を集めたお店』vs『店主が選び抜いたメキシコ雑貨店』、『ドイツのクリスマス雑貨店(期間限定)』(近所にありますが、大人気です)
  • 『総合研修会社』vs『新規事業に強い、新規事業に特化した研修会社』

etc…

異論はりそうですが、専門に特化して特徴のある後者を「一度、行ってみようかな」と思うのではないでしょうか。既に、実績もあって、質が担保されているのであれば、前者もアリなのかもしれませんが(文字に起こすと『どっちもありだな』と思わなくもないですが

やはり、後発で新しいお店をやるのであれば、「特徴がある」お店、結果的には「ターゲットが絞られている」お店の方がわかりやすく、立ち上がりやすいと思います(そして、運営もしやすいと思います)。ということで、新しいことをやるのであれば、「絞り込む」ことをお勧めします。

ここまで、ターゲットは絞った方がよいという話をしましたが、それでも、『ターゲットは絞った方がよいのか』という質問が出てくる背景には、おそらく、2つの懸念があるのではないかと思います。

心配① : ターゲットを絞ってしまうと事業規模が小さくなってしまうのではないか、成長が見込めないのではないか…

これに関する公式回答は以下の通りです

  • 事業立ち上げの際の最優先事項は、『顧客』を確保すること。そもそもこれが実現できないと事業が立ち上がらない。リソースが限られる新規事業では、『特定の層の顧客』をターゲットにする方が現実的
  • 『事業規模の拡大』に関しては、『特定の層の顧客』を確保することで得た知見を活用して、次のステップとして『次の顧客層』を獲得するプランを描けばよい(それが現実的)
  • 当初のターゲットは限定的でも、最終的に「大きな市場」、「成長が見込まれる市場」を狙う計画を立てればよい(いきなり大きな市場、成長が見込まれる市場に出られるのであれば、それはそれでよいかもしれないが大きな投資が必要。競争も激しい)

もう少し柔らかい表現をすると、「大きな市場を狙うにしても、最初は、買ってくれる人の数も少ないんだし、本当に欲しい人からスタートするのが一番よいだろう。その人たちに買ってもらい、使ってもらいながら、より多くの人に使ってもらえるようにしようと考えるのが現実的でしょう」ということです。

実は、ここまで話しても、納得していただけないケースもあるのですが『いきなりみんなに売れる / 使ってもらえる方法があるなら、それでもいいですよ』とだけ回答しています。特に、これまでにない新しいものだったり、後発であれば、『徐々に広がる / 広げる』と考えるのが妥当だと思います。

心配② : ターゲットを絞って、うまくいかなかったらどうするのか

この心配ももっともだと思います。公式回答としては、「残念だけど、次へ行く」ということです。実際問題として、当初、想定したターゲットにうまく浸透するかしないかは、やってみなくてはわかりません。新規事業は仮説を積み上げて作っているので、思うように売れないこともあります。その際は、そこで得られた経験を活かして、別のターゲットを狙いにいきます(これをピボットという表現をすることもあります)。

そもそも、新規事業では、仮説が間違っていることはそこそこの確率で起きるものです。「うまくいかなかったら、それで終わり」ということは普通はありません。顧客を具体的に絞ることで、それで終わりということも普通はないでしょう。ということで、「うまくいかなかった場合のリスクヘッジとして、顧客層を広めにとる」必要はありません。例えば、「40代ビジネスパーソン」というように広い層を対象としても、結局は、最初に買ってくれそうな人を探すときには、「東京都に住んでいて、小さな会社を経営している2代目の社長」というように、具体的な人物像を設定して事業を検討してくことになりますので、ある程度、具体的にしていくつもりでいた方がよいでしょう。


もう一度、結論 : 新規事業 / 新商品に関しては、最初はとにかく『絞る』、『具体的にする』のが原則

ということで、本日は、『ターゲットは絞った方がよいのか』について回答しました(もう少し、洗練された表現ができるかもしれない)。

それでも、『絞れない / 決められない』という声もよく聞かれますが、おそらくそれは、勇気を持って、『絞る』、『決める』ことをしないと進みません。あとは、みなさん次第です。何かを『絞る』、『決める』とそれ以外の選択肢がなくなってしまうので怖い気持ちになりますよね。それでも、『絞る』、『決める』ことをしないと進みません。将来、意思決定者になるみなさんは、ここはがんばりどころです。

『顧客は誰ですか』と聞くのは簡単ですけど、それに自信を持って、きちんと答えるのは大変ですが、ぜひ、よく考えてできるだけ絞って、具体的に答えられるようになってください。

物事が普及するプロセスに関しては、『イノベーター理論』というのがあります。こちらは、別途、記事で説明しますので、そちらをご参照ください。物事は、『徐々に普及する』、『ドミノ倒しで倒していく』ようなイメージを持つとよいと思います。

ということで、次回は、第三弾!になるかわかりませんが、この時期いただいた質問を少しずつまとめていきたいと思います!ということで、今日はこれでおしまいです

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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