今年の新人研修の話をしよう

アイディアポイント岩田です。新入社員のみなさんはそろそろ配属される頃でしょうか。

当社は、『新規事業』、「創造性開発」をテーマにビジネスをしているので、実は、新人研修の割合は大きくありません。それでも、「全社的にチャレンジする風土を作る」ことをテーマに、一部ですが、新人研修を担当することもあります。ということで、今回は、4-5月で実施した新人研修を振り返って、気がついたこと、考えたことを社内で議論しましたので、その内容について書いていこうと思います。

「今年の新人は〇〇型」のような記事はこれから出てくると思うので、私たちとしては、専業ベンダーとは異なる視点で感じたことをそのまま書いていこうと思います。サンプルも少ないですが、実感したことではあるので、参考にしてください。


目次

リアル / オンラインでのコミュニケーションのスムーズさや思考力の高さは、ここ数年で『ピカ一』

一般的に、新人研修では、「研修の受け方」からスタートして、学生から社会人への意識転換、基礎情報のインプット、基礎的なスキルの取得を行います。

過去10年ほど、『コミュニケーション』はひとつの大きなテーマで様々な方法で「チームとして活動する」ことを意識づけ、細かいノウハウや望ましい振る舞いを教え、練習をするというのが一般的です。

ここ数年では、上記に加えて「オンライン会議 / オンライン上でのコミュニケーション」も加わり、特に、この「オンライン上での振る舞い」に関しては、世の中でも『合意』がない(標準的なマナーがまとめられていない)ため、やや混乱気味で、画面の左上が上座みたいな謎マナー?、珍説?があったりしていました。

今回、担当した研修は、どの会社でも全く問題なく、オンライン / オフラインを問わず、きちんと振る舞い、自律的、チームのために議論をしていて、非常にスマートでした。例えば 

  • 丁寧で感じのよい話し方 / 聞き方ができている
  • オンラインになって自宅にいることで「ダレたりしない」。高い集中力を保つことができる、きちんとアウトプット、時間を守ることができている
  • グループワークでも全員が意見を述べて、建設的に議論ができている。ひたすら黙っていたり、逆に、ひたすら話していたりする人はほぼいない

特に、オンラインでの振る舞いは非常に慣れていてスムーズな点が印象的でした。今年の新入社員は既に、大学でもオンラインの講義を受けていて、グループワークにも取り組んでいるのかもしれません。

あらためて、2年前に急ごしらえで、管理職向けに実施した「オンラインプレゼンテーションのコツ」、「オンラインミーティングのコツ」というプログラムに書かれていたことは、自然にできているのに感心しています(実は、当時の内容は本当によくできているなと我ながら感心したりしますがこれは、別の話なので割愛します)。

この辺りの状況はきちんと踏まえておいて、世の中でオンライン研修がはじまったばかりの「手取り、足取り」でコントロールが強いプログラムから、リアルに近い形の『自主性に任せる』スタイルの研修の方が自然になってきている印象を受けました。例えば、研修中の「疲れ方」に関しても、2年前と現在は相当変わってきているので、そこまで細かく休憩を入れなくてもいいだろうなと感じている等、細かいチューニングが必要になっていると実感しています。

研修内容に関する理解も非常に深く、質問も的確、自分自身のことも客観視できているし、会社のことや社会のこともよく考えている様子もよく見受けられました。すばらしい更に、学生時代にインターンや起業の経験を積んでいて、よく考えている人も多く、立派な大人だなぁと感じました。

学生から社会人へと立場の違いはあれども、「自分で考えて、自分でアウトプットして、価値を発揮する」という点に関する理解は十分あることを前提に、「社会人になると学生と違ってくること」、「社会人らしい価値の発揮の仕方」という点にフォーカスして上手に伝えていくようなプログラムにするとよいのではないかと感じました。

「いいかぁああ、社会人と言うのはぁああ、学生と違ってだなぁあああ、立派な大人としての責任と自覚を持ってぇえええ、会社のためにぃいいい、しっかりとぉおおお、給料分を稼ぐことがぁああ」みたいな大上段の話はしなくてもよいのだということだと思います。


実は、気になったのは『2-3年目社員』向けの研修… まさか、働くうちに『退化』していっていないか

通常だとここで「一方で、新入社員は、まだまだ学生っぽさが抜けない面がある」、「仲良しなんだけどコンフリクトを避ける」、「言いにくいことを言わない」、「失敗を嫌がる」、「逆に、エッジの利いた人材がいない」みたいな短所の指摘が出てくるのですが… 正直なところ、過去と比較して気になる点はありませんでした。

話が逸れますが、↑この手の説教臭い指摘って、いつと比較しているのだろうか。そもそも、コンフリクトや言いにくいことを言ったり、失敗はみんな嫌だし、昔はエッジの利いた人ばっかりだったわけでもないだろうにもちろん、↑のような面はあるので、ここは今後、がんばっていきましょう!ですが。ということで、私たちの中では、例年に比べて優秀!という結論になりました。

当然、今後、現場に配属されて、様々なバックグラウンドの人と働いたり(年齢、性別、国籍、宗教など)、実際に利害関係がある場面で同じように振る舞えるのか、研修の場面よりも複雑でプレッシャーのかかる場面でどれくらい力が発揮できるかという課題はありますが、これは言っても仕方のないことなので新人のみなさんも、現場の先輩、上司のみなさんもがんばりましょう!本当に、楽しみですね。

私たちの中で議論になったのは、むしろ、『2-3年目社員』や『中堅社員』のみなさんの話でした。私たちが研修をしていて、「変にもっともらしいこと言おう」としてみたり、「あんまり、考えなくなっているな」と感じたり、「素直に取り組む」ことができなくなったり、「変なプライドがあってあまり話を聞けなくなった」り、「好奇心や勉強する気がなくなった」りあれ?よく考えたら、担当する研修のうち『2-3年目社員』や『中堅社員』の方が「心配なのではないか」という話になりました。

これは研修という場面で客観的に見たときの評価なので、必ずしもビジネスパーソンとしての優秀さとは異なると思いますが、せっかく、会社に入ってがんばって働くのであれば、活躍して、成長して『おっ、楽しそうにやっているね。随分、パワーアップしたなぁ。がんばってるねぇ』と感じられるような姿を見てみたいものです。しかし、実際には、必ずしもそうではありません。もちろん、勉強熱心で楽しく働いてパワーアップしている人も多くいます。一方で、「あまり、新入社員の頃と変わっていないな」、「逆に、変にスレてしまっているけれども、大丈夫かな」、「すっかり、のんびりモードになっているな」という方も見受けられるのも現実です。


経験を積むことで『得られるもの』と『失ってしまうもの / 忘れてしまうもの』って、何なんだろう?

ここはよく議論しなくてはいけないと思いますが、経験を積むことで『得られるもの』と『失ってしまうもの / 忘れてしまうもの』があるのだと思います。例えば

経験を積むことで『得られるもの』

  • 個別の事象(サンプル)
  • 経験から得られた示唆、経験則、持論、自分なりの環境
  • 人間関係、ネットワーク
  • 安定した仕事環境
  • 効率的な作業方法、ノウハウ
  • 理論や一般論に対する具体的な事例

・・・

経験を積むことで『失ってしまうもの / 忘れてしまうもの』(人によると思いますが…)

  • 初心、ドキドキした気持ち、新鮮な気持ち、謙虚な気持ち
  • 原理原則を学ぶこと、勉強する習慣
  • 試行錯誤しながら考えること

・・・

他にもいろいろと出ましたが、書ける範囲で(中には、“?”なものもありましたので)。このように見てみると、やはり、よくも悪くも経験を積むことで『よいこと』と『悪いこと』もあるようです。今後、どうやって『よい経験』をして、それを『成長に活かす』のかは、重要なのではないかと感じました。

これは若手~中堅社員に限らず、すべてのビジネスパーソンに言えることのように思います。経験が『よい影響』を与えるとき、逆に、経験が『邪魔をする』とき、最近、話題になる『シニアの活用』に関する議論でも同様です。なにが「よい」「悪い」を分けるのか、実に興味深い論点です。


新入社員は、自分たちよりも『立派な大人』だと考えてみると…

議論を『新人研修』に戻します。最近、私(今、40代後半です)が実感するのは、自分が考えることや自分が感じることが「必ずしも正しくない」ということです。

特に、新人研修や大学で学生に話すときには、基本的には、「今の世の中や過去の歴史は私の方がおそらくよく知っているし、多分、正しいが、これからの世の中については、彼ら / 彼女らが考えること、感じることの方が正しい」という考え方で話しています。

実際におそらくそうだと思います。過去の経緯や今、起きていること、先人たちの知恵の結晶を効率よく伝えることは私たちの年代の役割としてとても大事ですが、将来に関しては、彼ら / 彼女らが考えること / 感じることの方がほぼ正しいのではないかと思います。もちろん、私自身も将来について考える / 感じることはあります&自分のベストを尽くしますが、それはどちらかと言えば、「この世代が」が考える / 感じることなので、将来に関しては彼ら / 彼女らの意見が正しいのではないかと思うようになりました(実は、多くの人と議論した結果なので、この結論に至るまでにはそれなりに時間がかかりましたが)。

という観点で、研修を設計すれば、新人研修の「あるべき姿」やプログラムの設計方法も大きく変わるのではないかと感じる2ヶ月間でした。ということで、最後のメモですが、もし、私が研修を設計するのであれば、こんな感じで設計したいなと思うことをメモしておきます。表現は粗いですが、いつか、こんな思想でプログラムを作ってみたいなと思ったりします。

  • 新人研修では、学生と社会人の『段差』を埋めて、『滑らかにスタートできるようにする』こと
  • 基本的に、新人研修で教えてあげられることは、『今の世の中、社会、会社がどうなっているか』だけ
  • 会社としては、以下のことをしっかりと伝える
    ・社会 / 会社はよいところであること、ビジネスはとてもおもしろいということ
    ・新入社員に、とても期待していること(何を、どんな風に期待しているのかも)
    ・これから社会人として活躍するための『成長』の型(キャリアや経験学習サイクルの話)
  • その上で、『会社』は『新入社員』から学ぶ。そのプロセス(対話)を通じて、『新入社員』は会社 / 社会/ 自分の将来を考える。会社も『自社のあり方、戦略』を考え直すきっかけとする

今回は、実感のあるうちに書こうということで、やや『雑感』となったので、機会があれば、きちんとまとめて考えてみようかと思います。今回の研修では、「知識のインプット」や「スキルの取得」が目的のものばかりでしたが、本心では、新入社員のみなさんに『聞きたいこと』、『教えてほしいこと』だらけでした(実に、素敵な受講生ばかりでした!)。


 
最後になりましたが、今回、私たちが担当させていただいた会社様では、すばらしい採用をされていたり、私たちが登場する前に、しっかりと事前のトレーニングをしていただいていたので、今回のように素直に「おぉ、すごいなぁ」と感じたのだとも思います。今回の新人研修を通じて、将来の日本も結構、明るいのではないかと感じました。新しい環境に移って、チャレンジしようとしている人とご一緒するのは楽しいですね。心から応援しています!ということで、ご一緒したみなさんとご一緒していないみなさんの活躍をお祈りして、今日のブログはおしまいです!

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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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