イノベーションを起こした企業の事例10選!新規事業創出のコツも紹介

企業がイノベーションを起こすことは、事業を存続させるうえで不可欠といえます。

これまでにイノベーションを起こした企業は、どのようにして大きな飛躍を遂げたのでしょうか。今回は、イノベーションを起こした企業の事例10選と、新規事業創出のコツを紹介します。

目次

1.そもそもイノベーションとは?

イノベーションの理論にはいくつかの種類がありますが、中でもオーストリアの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーター氏が提唱した「イノベーション理論」がよく知られています。

イノベーション理論によると、イノベーションは次の5種類に分類することが可能です。

1. プロダクトイノベーション

革新的なモノやサービスを開発するイノベーションです。消費者に新しい価値を提供し、市場を独占できるのがメリットといえます。

2. プロセスイノベーション

製品を生み出すうえで革新的な工程を開発するイノベーションです。従来よりも短期間かつローコストで製造することができれば、消費者が「より安く、より早く」商品を手にすることが可能になります。流通方法のイノベーションもプロセスイノベーションに含まれます。

3. マーケットイノベーション

新しい市場を開拓するイノベーションです。市場を変えることで、新たな顧客やニーズに出会えるでしょう。

4. サプライチェーンイノベーション

材料そのものや材料の供給源を新しく開拓するイノベーションです。サプライチェーンを見直すことで新たな材料が見つかり、思わぬヒットにつながることもあります。従来とは異なる供給源を確保できれば、リスク回避にもつながります。

5. オーガニゼーションイノベーション

組織を新しくするイノベーションです。抜本的な改革によって時代の変化に強い組織づくりを目指します。

参考:イノベーションとは革新を意味する言葉!ビジネスでの定義や条件を紹介


2.イノベーションを起こした企業の事例10選

イノベーションの基礎が理解できたところで、イノベーションを起こした企業の事例10選の紹介に移りましょう。それぞれの企業が起こしたイノベーションが、どのような発想から生まれたのかという点に注目してみてください。 

ヤマト運輸株式会社

宅配便を手掛けるヤマト運輸は、もともと大手のトラック運送会社でした。有名百貨店の輸送を請け負うことで業績を伸ばしていましたが、近距離運送の事業に成功することで長距離運送の事業に出遅れてしまいます。

徐々に業績が悪化していった同社は、個人宅配の市場に着目します。しかし、個人宅配はコストがかかり、採算が合わないため民間企業はどこも参入していなかったといいます。

「参入する合理性がない」と考えられていた個人宅配の市場で、同社はイノベーションを起こします。住宅地に複数の営業所を設け、周辺エリアへ配達する荷物を各営業所に集約し、そこから小型のトラックを使って配送することで現在の個人宅配の仕組みを構築しました。

セブン-イレブン

日本におけるコンビニエンスストア事業は、1974年に創業者の鈴木敏文氏が、アメリカから「セブンイレブン」のビジネスモデルを持ち込んだことが始まりでした。

当時の日本では大規模なスーパーマーケットが主流で、コンビニエンスストアのような小規模の小売りチェーンの登場は非常に画期的だったといいます。また、セブンイレブンの登場をきっかけに、当時大ロットの配送が主流だった物流業界に、「小口配送」という新たな考え方が生まれました。

富士フイルム株式会社

富士フイルムは、写真業界から化粧品・医療機器分野にシフトチェンジしたことで有名な企業です。

写真フイルムの市場規模が縮小していくことを早い段階で予測し、同分野で培った高い技術力を化粧品・医療機器といった異分野に応用することを考えました。

既存の市場にこだわらず、自社の強みで勝負できる市場を開拓したイノベーションの事例です。

株式会社ZOZO

アパレル通販サイト「ZOZOTOWN」の運営を手掛ける株式会社ZOZOが、「ZOZO SUIT」を開発したことは記憶に新しいでしょう。

ZOZO SUITは、「通販で購入する洋服は自分の体形に合うかどうかわからない」というユーザーの悩みを解消できる画期的なものでした。ZOZO SUITを着用してスマートフォンをかざせばデータが自動で読み込まれ、ユーザーは自分の体形に合った服を簡単に探すことができます。

P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)

世界最大の一般消費財メーカーであるP&Gは、イノベーションによってこれまでに複数の商品を世に送り出してきました。

中でも、画期的なのがジェルボール型洗剤です。粉洗剤や液体洗剤のように計量の手間を削減できるだけでなく、「計量によってこぼれた粉洗剤や液体洗剤を拭く手間」も同時に削減しています。発売から3年間で約1億個以上売り上げる大ヒット商品になりました。

株式会社TSUKUMO

株式会社TSUKUMOは、廃材やサトウキビを使用した、環境に優しい日本製のビーチサンダルを開発しました。

昔ながらの製法で作っていることをアピールし、海外製品にはないサイズやカラーを展開することで、国内外のセレクトショップから問い合わせが殺到しているといいます。

ビーチサンダルは100円ショップでも売られているほど「ありふれた商品」です。流行をいち早く取り入れるブラジルのメーカーや、桁違いな生産規模を持つ中国の工場と差異化するための方法を考える中で、環境に優しい×日本製のビーチサンダルという独自性が生まれました。

株式会社ハーツ

株式会社ハーツは、運転手付きのトラックを30分単位でレンタルできる「レントラ便」を、業界初のサービスとして手掛けている企業です。

同社は大手物流会社の下請業者としてBtoB向けの事業を順調に伸ばしていましたが、最大手の取引先が配送業務を内製化したことで収益の柱を失ってしまいます。

「下請けを続けていては会社に未来はない」と考えた山口裕詮社長は、既存事業と平行してBtoC市場への新規参入を考え始めます。

「レントラ便」のサービスを思い付いたきっかけは、「鳥人間コンテスト」の飛行機の部品を運ぶ依頼を定期的に受けていたことでした。運送業者に配送を依頼するとコストがかかるが、かといって自分でトラックを運転する自信はない。そんな消費者のニーズを、自社ブランドの確立というイノベーションにつなげた事例です。

株式会社田代合金所

株式会社田代合金所は、活版印刷用の鋳造技術(熱して液体状になった金属を型に流し込んで固める技法)を生かしてアクセサリー用の合金を開発しました。

従来、新聞などの印刷は、活字を組み込んで並べた組版に塗料を塗って紙に転写する活版印刷が主流でした。しかし、合金を必要としない「オフセット印刷」が主流になることで同社は存続の危機を迎えます。

アクセサリー用に開発された合金をベルトのバックルやキーホルダーにも転用し、さらに建築物の内装材へと活用の幅を広げていった結果、国内シェアの大半を獲得するに至りました。

株式会社明治堂

パンの製造・販売を手掛ける株式会社明治堂は、創業から130年以上、北区王子の1店舗のみで営業する地元密着型の店舗でした。

4代目の社長である中山和弘氏は、3社共同で20215月に「あん食パン」専門店の「明壽庵」を立ち上げました。中山社長は以前から「店舗を増やしたい」という想いがあり、特に海外の人に日本のおいしい食パンを知ってもらいたいと考えていたそうです。

それまでのコンセプトである「多品目×低価格」から、「小品目×高価格」というまったく異なるコンセプトに挑戦しました。

中山社長は、リソースが限られている中小企業がイノベーションを生み出すためには、パートナーを探すという選択肢も必要だと考えています。

株式会社ツクモ

株式会社ツクモは、スタートアップ業界として初の、企業向けヘルシー間食サービス「snaccuru(スナックル)」を提供している企業です。健康経営や働き方改革といった多くの企業が抱える課題を、間食サービスの提供という形で解決したのが同社です。

企業の給湯室にある「置き菓子」を、オーガニックでヘルシーなものに変えることで、従業員の健康を手軽にサポートする仕組みを提供しています。

さらに、食品メーカーでフードロスになった商品を「snaccuru」で提供することで、社会問題の解決にもつなげています。 


3.イノベーションを新規事業創出につなげるコツ

ここまでご紹介したイノベーションの事例から見えてくるのは、「多様性」と「寛容性」というキーワードです。いずれの事例においても、従来の常識にとらわれない柔軟なアイディアが形になったことでイノベーションが生まれています。

イノベーションを新規事業創出につなげるには、イノベーションが起きやすくなるような環境づくりと、それを形にするための仕組みづくりを同時に行う必要があります。そのためのコツをいくつか見ていきましょう。

全社的な取り組みを実施する

イノベーションは、マーケティングや商品開発部門のみで起こすものではありません。全社的な取り組みを実施することで、新たなアイディアの創出につながります。また、先入観がない「専門外の人の意見」を聞くことも重要です。

通信教育・出版などの事業を展開する株式会社ベネッセコーポレーションは、全社員を対象とした新規事業の社内提案制度「B-STAGE」を立ち上げました。2021年に行われたエントリー期間中に合計1,782件の応募があったといいます。

アイディア創出のハードルを下げる

ベネッセコーポレーションが立ち上げた「B-STAGE」には、「テキストのみでペーパー1枚から提案可能」というルールがありました。このように、アイディア創出のハードルを下げることも重要な意味を持ちます。部下や上司といった立場の違いを気にせず発言できるような環境をつくることも意識しましょう。

多様性を持った人材育成を目指す

株式会社パソナグループは、配属先の業務と平行して、社内外で他の業務にも従事する「ハイブリッドキャリア採用」を開始しました。環境の変化に柔軟に対応できる人間力やスキルを兼ね備えた人材の育成を目指すことが主な目的です。副業を受け入れることも、多様性を持った人材育成を目指すことにつながります。

アイディアを形にするための体制を強化する

アイリスオーヤマ株式会社は、開発の体制を強化する目的で、「東京R&Dセンター」の新規設立を決めました。それに伴い、2024年までに120名の新規採用を目指すといいます。

アイディアを形にするためには、開発部門の強化が欠かせません。リソースを増やし、高い技術を持つ開発部隊を持つことで、企業のイノベーションが加速します。


4.小さなイノベーションが大きな飛躍につながる

イノベーションと聞くと、「大がかりな中長期計画が必要なのでは」と思う人は多いでしょう。しかし、企業によるイノベーションは、どれも自社のビジネスをよりよくするための身近なアイディアから生まれています。顧客や自社の商品・サービスと向き合い、日ごろから小さなことに対して疑問を持つ意識が大切です。

また、多様性に富んだ人材が多い組織はアイディアが生まれやすく、チャレンジに対して寛容です。アイディアの段階で失敗を怖がらず情報を発信できる雰囲気づくりが、イノベーションを起こす組織に最も必要なのかもしれません。

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