最近、お客様とお話している中で、会社の経営課題の一つに、従来の管理職のマネジメント方法では会社が良い方向に向かわないため、マネジメント方法を変えていくべきだ、管理職の意識改革が必要だといったお話を伺うことが増えてきました。
管理職が行っているマネジメント方法を変える、管理職の意識改革を行うということは、一筋縄ではいかないことで、実現に向けてはかなり幅広く施策を検討する必要があります。その中で、360度評価についても施策の一つとして話が挙がることが多いです。
そこで今回は、改めて360度評価について実施する上で考えておいたほうがよいことを簡単にまとめてみたいと思います。
『データ』を活用して組織開発を行うのであれば、全方位的な視点を持つために、360度評価は必須
以前、組織開発に関しての記事を投稿しましたが、その中で、組織開発とは、「組織内の当事者が自らの組織を効果的にしていく(よくしていく)ことや、そのための支援」と記載しました。組織開発の中には、診断型組織開発という方法があり、その代表的なモデル(組織開発の進め方)として「ODマップ」というものもご紹介しました。
組織を効果的にしていく(よくしていく)ためには、まずは組織の状態を知る必要があり、そのためにデータをきちんと取ることで、そのデータ(組織の状態)に基づいて、よりよくするためのアクションにつなげることができるというわけです。今回は、360度評価をテーマにしておりますが、組織の状態を知るためのデータとしては、360度評価だけでなく、例えばエンゲージメントサーベイなどもあり、導入される企業が増えているのは、組織の状態をデータできちんと把握できるようにしたいという意図を感じます。
ここで重要なことは、組織の状態を知るためのデータを取って、そのデータを社内でシェアしたら終了ということではないということです。当たり前の話なのですが、そのデータをもとにして、次のアクションにつなげないと意味がないのです。次のアクションにつなげる際に考えておくべきことは以下に延べたいと思います。
なぜ、360度評価が必要なのか(その特徴、導入のメリット)
組織を効果的にしていく(よくしていく)ためには組織の状態を知る必要があり、そのためにデータを取ることが重要だということはご理解いただけたかと思いますが、その中で、なぜ360度評価が有効な手段の一つになるのでしょうか。
360度評価の特徴の一つとしては、「管理職の評価を多面的に行うことができる」というメリットがあります。ビジネスパーソンにおいての評価は、基本的に上長が行うものとされてきましたが、管理職は部下という視点からもパフォーマンスを見る必要があるのではないかということで導入されるようになってきました。
また、360度評価は「360度」なので、上長と部下だけでなく、同僚や他部署の人からの評価も見ることができるという特徴があります。メリットとしては、一人の評価者に依存しないということです。もう少し詳しく説明しますと、評価されるべきであろうパフォーマンスを出している社員が、その社員の評価者(上長)との相性が悪く、適切に評価されないというリスクを減らすことができるメリットがあります。
360度評価と言うと、管理職を対象に行うという印象を持たれている方もいるかもしれませんが、メンバークラスの評価が適切に行われていないのではないかということを検知するためにも活用できるため、メンバークラスを対象に行うメリットも十分にあるわけです。
昨今の管理職の『ツライ』現状と必要なサポート
360度評価は、管理職だけでなく、メンバークラスを対象にして活用できることを述べましたが、管理職を対象にした施策について興味関心が高まっているため、今回は一旦管理職に閉じた形で、この後記載したいと思います。
昨今での企業での管理職は、プレイングマネージャーであることも多く、なかなか大変な状況にあることが多いとよく聞きます。経営の成果に直結するKPIを追わなければならないのはもちろん、会社のパーパスを部門に浸透させなければならなかったり、部下のモチベーションを向上させたり育成したり、会社の課題が管理職に集中してしまうという現状だと思います。
一方で、管理職に対する育成施策は、「もう管理する側の立場なんだから、マネジメントスキル習得を必要と感じたら自ら学べ」と言わんばかりに、新任で管理職になって以降は、学ぶ機会を与えてもらうことはない(自ら手を挙げれば、選択型研修などで学べることもありますが)という会社が多いのではないでしょうか。
客観的に見て、なかなか大変な状況の管理職に対しては、もう少し配慮が必要だと考えます。昨今の管理職にこそケアが必要だと感じます。人間そんなに強いものではないですから、管理職に必要な「成長」をしてもらうためには、それ相応の支援が必要です。
360度評価の目的は成長。ネガティブなフィードバックだけして『鼻っ柱』を折っても人は成長しない
プレイングマネージャーで日々大変な管理職に成長してもらうために、360度評価の結果を活用するのは大変有意義です。360度評価の結果をもとに、管理職自身の現状を客観的に把握することができるからです。ただし、間違えてはいけないのは、管理職を評価し、できていないことを知らしめるためのツールではないということです。
管理職の人に不足している部分があるとしても、そこだけ指摘(フィードバック)して改善されるわけではないのです。評価できる部分は、評価してあげる(ポジティブなフィードバック)ことも重要です。記事の冒頭でも書きましたが、管理職が成長に向けて次のアクションにつなげなければ意味がないので、ネガティブなことだけ言われる360度評価だとしたら、管理職はその結果を前向きに捉えることができないでしょう。
また、360度評価は、定量的に評価されますので、その数字だけを見て一喜一憂してしまいがちですが、評価の数字一つ取って高い低いだけで考えるのではなく、管理職の人に、周りが期待していることと、自分ができている / できていないと思っていることの「認識に乖離があるところを知る」ことが重要です。管理職の人が自分ではできていると思っているのに周りから評価されていないという項目については問題が起こりやすいということです。逆も同じく、管理職自身があまり評価してない項目でも、周りは実は評価しているという場合もあるので、それを管理職が意識できるようになることで、良い部分について再現性を持たせることもできるようになるわけです。
対応のよろしくない企業の例として、360度評価を行った結果をレポートにして、評価された側にレポートを渡すだけという企業もあるようです。そもそも、なぜ360度評価を行うか、評価する側、評価される側の両方に丁寧に説明し、理解してもらうことも、丁寧に行っていない企業も一定数存在するように見受けられます。これではせっかく費用や労力をかけて行っている施策の意味が台無しです。レポートの結果を「どのように理解すればよいか」「どの点においては評価されているか」「どの点をどのように改善していくとよいか」「そもそもなぜ360度評価を行うのか」について、丁寧に説明し、理解してもらう場を設ける(360度評価の説明会や、レポートを読み解くための研修など)ことが必要になります。さらに、「どの点をどのように改善していくとよいか」について、フォローするための研修もセットで設けると、管理職の成長を促すことができるでしょう。
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