発想する会議、ブレインストーミングの進め方

ビジネスの場において欠かせない「会議」にはさまざまな手法がありますが、その中の一つにアメリカの実業家アレックス・F・オズボーンによって考案された「ブレインストーミング」があります。ブレインストーミングはアイディア出しの手法で、「集団思考法」や「課題抽出」、あるいは「ブレスト」などとも呼ばれており、これまでの固定観念に捉われず柔軟な発想が生まれやすくなる方法だと言われています。

この記事では、発想する会議の重要性や、ブレインストーミングの進め方について詳しくご紹介します。


目次

なぜ、会議でアイディアがでない理由とその対策

ここでは、会議でアイディアが出ない理由と対策についてご紹介します。

アイディアが出ない理由については、以下の3つが考えられます。

  • アイディアを出してよいかわからない
  • どんなアイディアを出すべきかわからない
  • アイディアを出したら何か言われるのではないかと怖い、自信がない

まず1つ目の「アイディアを出してよいかわからない」というのは、複数のメンバーが集まる会議で自身の立ち位置などを考えてしまい発話できなくなるパターンです。あるいは、「自分がアイディアを出さなくても、誰かが出してくれるだろう」と考えてしまい、傍観者側にまわってしまうケースも存在します。

2つ目の「どんなアイディアを出すべきかわからない」というのは、会議に参加しているメンバー同士の目線が定まっていない場合に起こりうるパターンになります。あるメンバーにとっては「良いアイディア」で、別のメンバーにとっては「良くないアイディア」と認識されるケースは会議の中ではよくあることですが、 “良いアイディア”の基準がそもそも曖昧である場合はより発言しにくくなると考えられます。

3つ目の「アイディアを出したら何か言われるのではないかと怖い、自信がない」というのは、メンバー同士の“心の溝”が根底にあるパターンです。「発言内容のレベルが低いと思われるのではないか」「アイディアを出しても、できない理由を挙げられるのではないか」などの心理が先行してしまい、積極的にアイディア出しに参加できないケースになります。

これらの共通点として考えられるのは、“恐れの心理”であるため、その対策として「その場のルールを決めること」が必要です。

ルールがあることで心理的安全性が確保され話しやすくなるため、メンバーが本来持っているさまざまな視点や情報を引き出すことが可能です。また、ルールがあることでその場の統制がとりやすくなるので、効率的な会議を行うことができます。


世界でスタンダードな発想技法「ブレインストーミングの基本」

世界ではスタンダードな発想技法となっているブレインストーミング。ここではブレインストーミングの基本について解説いたします。

ブレインストーミングは、複数人でアイディアを出し合うことで生まれるクリエイティブな発想の誘発や、意見が相互に交錯することで発生する連鎖反応を期待する技法です。

この手法は複数人で行いますが、人数に決まりはありません。5~7人、時には10人程度が好ましい場合もありますし、3~4人ごとの班構成にして、各班で成果を持ち寄るケースもあります。

この発想技法を考案したオズボーンは、著書『創造力を生かす』(2008年、創元社)にて、以下のようにブレインストーミングを定義づけています。

“ブレインストームとは少人数の人々が1時間ほどクリエイティブな想像力を働かせるためにのみ行う会議の一種(特定の問題についてアイディアを出し合うもの)である”

ブレインストーミングの過程では、「自由奔放、批判厳禁、質より量、結合改善」の4つのルールが設定されています。

【自由奔放】:ブレインストーミングでは自由にアイディアを出すことが重要です。誰でも思いつくような、誰でも納得するようなアイディアや、反対に、奇抜で斬新、ユニークなアイディアなど自由にどんどん発表します。たとえ、どんなにエキセントリックで変わった意見であっても、アイディアを組み合わせることによって新しいものを生み出せる可能性もあります。

【批判厳禁】:ブレインストーミングで効果を得るためには、メンバーが出したアイディアを否定したり、批判したりしてはいけません。自由に意見できない雰囲気にさせたり、メンバーを萎縮させたりせずに、いかなる意見でも歓迎する空気感をつくることが重要です。

【質より量】:ブレインストーミングではアイディアの質よりも量を重要視します。質を優先してしまうと「他のメンバーよりも優れたアイディアを出さなければ」、「採用されるようなアイディアを出さなければ」と内容にこだわってしまい、発言が少なくなってしまいます。アイディアの質よりも量を優先することで発散的な思考となり、結果的にアイディアの質を高めることができるのです。

【結合改善】:ブレインストーミングで期待できる点として、「メンバーから出たアイディアが、他のメンバーのアイディアの種になる」というシナジー効果が挙げられます。ただし、この効果を獲得するには、メンバーの発言に対してしっかりと耳を傾けなければなりません。共有されたアイディアを分解して理解し、深掘り、そして改善することで、新たなアイディアを生み出すことができるのです。

ブレインストーミングの基本的な進め方については以下の5つの流れになります。

①テーマや問題を定義して目的(ゴール)を明確にする

まずは、ブレインストーミングで議論するためのテーマや問題を定義します。このテーマや問題は実現可能なものを定義し、議論が脇道に逸れてしまうことがないようにしましょう。次に、ブレインストーミングの目的(ゴール)を明確にします。具体的に数値化した目標を置いておくと、最終的な成果のイメージをメンバー同士で共有できるので、モチベーション維持にも効果があります。

②ファシリテーター(司会進行役)を決める

次に、ブレインストーミングのファシリテーターを決めます。ファシリテーターは、進行をスムーズに行い、ルールの遵守と議論のサポートをする役割を担います。ブレインストーミングでは、発言を躊躇したり、批判的な意見を言ったりする場合があるため、どのようなアイディアであっても歓迎される雰囲気をつくることがファシリテーターの重要な役割です。

③参加者を選定する

ファシリテーターを決めた後は参加メンバーを決めます。ブレインストーミングは10人以下のグループ、もしくは個人で実施するのが原則とされていますが、重要なポイントは「グループ内に、同じ属性や思考を持つ人を2人以上参加させない」ことです。同質の思考を持つメンバーが集まるとアイディアが酷似し、シナジー効果の獲得が難しくなるからです。

④制限時間内にアイディアをたくさん出す

ブレインストーミングでは、前述した4つのルールに加えて、決められた制限時間を厳格に守って進行することが重要です。アイディアを発想・量産する作業には5〜10分程度を使い、全体で20〜30分程度を制限時間とするのが一般的な設定時間だと言われています。不慣れな場合は制限時間を忘れて取り組んでしまいがちですが、参加メンバーの集中力が切れてしまう場合もあるため多くの時間をかけることは賢明ではありません。

⑤アイディアをまとめる

最後に、メンバーから出たアイディアをまとめる作業を行います。この作業を行う中で、それぞれのアイディアに新たな視点が加わり、創造的な発想に展開できれば、ブレインストーミングは成功だと言えるでしょう。


発想技法を使うメリット

ブレインストーミングという発想技法には多くのメリットが存在します。

通常の会議で「発言しづらい」と考えるメンバーであっても、ブレインストーミングで設定される4つのルールによって心理的安全性は確保され、安心して発話できる状態になります。また、いかなるアイディアでも受け入れてもらえるというベースが担保されていることで、少なくとも何かのアイディアは出るようになるはずです。

ブレインストーミングでは制限時間が定められており、それが厳守されるので、ムダな時間を使うこと無く効率的な会議を進めることが可能です。


まとめ

本記事では、「発想する会議」としてブレインストーミングの進め方をご紹介しました。

世界ではスタンダードな発想技法となっているブレインストーミングでは、どんなに変わった意見であっても、アイディアを組み合わせることによって新しいものを生み出せる可能性が存在するため、いかなる意見であっても歓迎する空気感をつくることが重要です。

また、アイディアの質よりも量を優先することで発散的な思考となり、結果的にアイディアの質を高めることができることにも触れ、それに伴って起きるシナジー効果の獲得についても解説しました。

会議の中で積極的にアイディアを出すことに抵抗がある方も多いと思いますが、この手法を活用することで、自分以外のメンバーから新たなヒントを得て創造的な発想が生まれたり、アイディアを発散させることによって効率的な課題解決の方法を発見できたりします。

興味のある方は下記の本をぜひ読んでみてください。
「クリエイティブ・シンキング入門」 

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