【異業種交流研修成功のカギ②】異業種ならではの”違い”を意図的に出す

この記事では、前回の異業種交流研修の目的の設定に関する記事に続いて、プログラムの設計についてお伝えします。

目的別(「学び」、「交流」、「成果物」)のプログラム設計ノウハウのお話の前に、あらゆる異業種交流研修に通ずる基本的なポイントをいくつか伝授します。


目次

会社・業界が異なることの意味を考える

具体的なプログラム設計に入る前に、異業種交流研修の「異業種」であることの意味をきちんと整理しておきたいと思います。

めちゃくちゃ当たり前のこととして、受講生の所属している会社が違います。多くの場合は属している業界も異なります。その”違い”をしっかり持ち帰ってもらわなければ、異業種で研修を実施する意味は無いと言っても過言ではありません。

「業界が違うとこんなに考え方が違うんだね」

「売っている商材は全く違うけど、〇〇社の営業スタイルは参考にできることが多いよね」

「表面的に理解していたイメージとは違って、裏ではそんな仕組みになっているんですね」

「競合関係にある2社なのに風土や文化が全然違うことに驚いた」

このような声が受講生から上がってくれば、企画サイドとしてはニンマリですよね。

つまり、ちょっといつもと違う人たちと研修を受ける、というレベルではなく、きちんと違いを理解した上で自身や自社に還元できる状態まで引き上げることが、異業種であることの意味なのです。


自己紹介を怠らない

具体的なプログラムの話に入ります。

どんな研修でも必ず行う自己紹介。自社であれば見知った顔もいるため簡単に済ませてしまうことが多いと思いますが、異業種交流研修では冒頭にしっかり自己開示を行って何者であるかをはっきりさせておくことが必要です。

ポイントは3点です。

【研修のポイント①】自己紹介フォーマットを事前に準備する

まずは自己紹介のフォーマットを用意しておくこと。事前課題として課さなくても構いませんので、全員が同じボリュームの自己開示を行うことです。これによって比較することができますので、違いが理解しやすくなります。

【研修のポイント②】クラス全体で自己紹介を行う

自己紹介は必ずクラス全体で行うこと。多少時間は掛かってしまいますがグループ単位ではなく全体の場で行うことで、一旦は知らない人がいない状態になり場の安心感に繋がります。

【研修のポイント③】配布する名簿にメモ欄を作る

配布する名簿にメモ欄を設けておくこと。

細かい話なのですが、メモ欄を設けておくだけでメモを取る率が飛躍的に向上します。自己紹介シートを作成して配布する場合でもメモ欄は用意しておきましょう。大抵のビジネスパーソンはオフィシャルな自己紹介シートには当たり障りのないことしか書きませんので、印象に残るキーワードは発言の中から出てきます。


参加企業を題材として取り上げる

研修プログラムには色々なセッションやワークが用意されていますが、研修でよくある架空うのお題で行うワークや、ケースメソッドのようにとある企業を題材としたディスカッションよりも効果的な方法をご紹介します。

それは、参加企業を題材として取り上げるセッションです。

例えば、経営戦略をテーマにした研修であれば、「A社の経営戦略を教えてください」とA社の受講生へ振って説明してもらい、「つまりA社の戦略をフレームワークに落とし込むとニッチ戦略であることがわかりますね」といった形で講師が解説を加えます。この流れで他の企業にも振っていきます。

このセッションの効果は、その企業に属している社員本人からリアルに説明してもらうことで、表向きに知っていた内容以上に他社についての理解が進むことです。

研修のテーマが何であろうと使えるやり方なので、是非取り入れてみてください。

もう少し深く、ケーススタディの形で1社を取り上げて課題と解決策を検討するやり方もありますが、込み入った話になる可能性が高いのと、他社の受講生からすれば成果物の持ち帰りが無いので、少しハードルは上がります。


勇気をもってフリーディスカッションを組み込む

自己紹介や参加企業を題材としたセッションを通じて、ある程度相互理解が進んだら一度フリーディスカッションを組み込んでみることをおすすめします。

企画者の立場からするとフリーディスカッションは勇気のいる時間だと思いますが(笑)、驚くほど自発的に意見交換が進んでいく様子を見られると思います。なぜなら、相互理解が進んでいると、「B社の人に〇〇について聞いてみたい」、「さっきCさんが発表していたテーマについて意見交換してみたい」といった形で、各々に知りたいことや話したいことが自然と生まれてくるので、議論が活性化しやすいのです。

フリーディスカッションを行う際には、自由にどうぞ、と振っても良いのですが多少は研修としての演出も必要ですので、ワールドカフェのようなものがツールとして使いやすいと思います。


講師はその道の専門家よりもファシリテーター

最後に講師選びについてお話して締めくくりたいと思います。

通常の研修であれば、研修のテーマに沿ったその道のスペシャリストをアサインするのが一般的ですし、レベルの高いプロフェッショナルであればあるほど学びやアウトプットの質は上がります。

一方、異業種交流研修においては、テーマとの親和性も考慮しつつ、場を上手にコントロールできるファシリテーター型講師がベストです。これまでお伝えしたとおり、受講生からの発言や議論を促しながら”違い”を炙り出していくことをふまえると、受講生との距離を縮めてグッと入り込むコミュニケーションと、議論を整理して方向性を示し示唆を与えるコントローラーとしての役割に徹することのできる講師が望ましいと言えるでしょう。

ただし、トピックによっては専門家の話を聞かせたいというケースもあるかと思いますので、その場合はメイン講師とは別にスポットでのゲスト講師という形でアサインすると効果的です。

以上、今回は異業種交流研修の設計において押さえておきたいポイントについてお話しました。次回は、より具体的に目的に合わせた設計のノウハウや当社での事例をご紹介します。

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