顧客事例:R&D部門のマインドが一変!モノづくりの先にある、NTTドコモの新事業を生み出す意識が芽生える

株式会社NTTドコモ
R&Dイノベーション本部 移動機開発部
XRイノベーション推進担当
森永 康夫様
(2022年6月1日時点)

当社がご支援させていただいているお客様にインタビューをし、その内容を掲載いたします。今回は株式会社NTTドコモ様です。


目次

技術志向の強いR&D部門には、一貫したビジネスを考えるスキームが必要だと感じた

新規事業に関する課題を教えて下さい

私がR&Dイノベーション本部に配属されたときのミッションは、「ドコモの技術アセットと市場のニーズを掛け合わせ、新規事業を興して新たな収益源を作る」というものでした。新規事業は強い意志を持って周囲を巻き込み、失敗しながらでも前に進む「推進力」が必要です。ただ、当時は「優れた技術なら必ず使ってくれる人がいる」といった技術志向が強く、ユーザーニーズまでは捉えられていませんでした。そこで、研修プログラムとして「デザイン思考」を取り入れた結果、ユーザーのニーズを叶える解決策は浮かぶようになったのですが、今度は収益化で行き詰まりました。ユーザーの困りごとを解決しても、収益につながらないのでは事業として継続できません。一貫したビジネスを考えるスキームが必要だと感じ、新しいプログラムを考えて、メンタリングしてくれるパートナーを探していました。

アイディアポイントを選んだ理由は?

当時、人事部と一緒に若手育成の研修プログラムを実施していたのがアイディアポイントでした。ちょうどその頃、部の総括として若手社員の育成も担っていたので、一緒に仕事をしていた人事から紹介してもらったのがきっかけです。


新たな事業軸を考えられる社員を育成できて、「狙い通り」の結果に

最初に行ったワークショップを教えてください

R&Dは、与えられた予算の中で未来の事業につながる研究開発を行う部門です。そのため、当時、コスト意識はあまり高くありませんでした。アイディアポイントにスタートアップのアクセラレーションプログラムのようなワークショップを実施していただいたことで、今までは考えもしなかった、コストに関する話題が頻繁に出るようになりました。ワークショップ全体で15名程度参加していましたが、本当はもっと多くの社員に受けて欲しかったですね。

最初に実施した新規事業開発ワークショップ

■2015年度 ビジネスプランニングワークショップ
新規事業のアイディアをビジネスプランに落とし込むための考え方を学ぶ。参加者が書いたビジネスプランに対して、具体化すべき点や他の選択肢の可能性などのアドバイスを行う。

■2016年度 不動産会社との協業に向けたワークショップ
不動産会社と協業するとしたら、どのようなアイディアがあるかを検討するワークショップ。ワークショップで出たアイディアをもとに、不動産会社にプレゼンできる状態までアドバイスする。

ワークショップの感触はいかがでしたか?

この時に生まれたアイディアは、結果的にサービス提供には至りませんでしたが、企業との実証実験を進めるフェーズまで進みました。ワークショップに参加した社員は、自分一人で事業の立ち上げから収益化まで一通りの流れが分かるようになったので、参加後のマインドが明らかに変わりました。ワークショップ参加者を私は「卒業生」と呼んでいるのですが、彼らは今でも社内で新規の立ち上げをしたり、社内ベンチャー制度で企業を立ち上げたりと、R&Dで学んだことをベースにキャリアパスを歩んでいます。ドコモのための新たな事業軸を考えられる社員を長期スパンで育成できて、「狙い通り」の結果となりました。

若手のマインドセットが変わり、“モノづくりの先を考える意識”が芽生えた

その後はどのような取り組みをされましたか?

2015~2016年は「ドコモの技術を事業化する」というアクセラレーションプログラムや、協業支援の要素が強かったのですが、2019年からは多様なパートナーとの「協創」により成長しようとするマインドも取り入れました。当時はセンシング技術を用いてオフィスの見える化を図るために、事業化に必要な資料のアドバイスを受け、顧客候補をご紹介していただきました。

2021年にはパートナー協業で、遠隔でも相手が目の前にいるような、新体感コミュニケーションを実現するシステムを作りました。ワークショップで学んだ顧客課題からスタートして事業化を検討したのですが、本当に狙うべきはどの業界なのかをブラッシュアップするために、アイディアポイントにメンタリングをご依頼し、販売や差別化のポイントやビジネスモデルをアドバイスいただきました。

実施した新規事業開発支援コンサルティング

■2019年度 会議室ソリューションの事業性検討支援
センシング技術を活用したサービスが、どのような顧客に受け入れられる可能性があるか、また、どのような価値を提供できるか整理する方法をアドバイス。資料作成や顧客候補への案内やヒアリングの場をセッティングする。

■2021年度 新体感コミュニケーションシステムの事業性検討支援
サービスを提供できる直前の段階まできたものが、実際に顧客に受け入れられるのかを確認するために、ターゲットとなる顧客のリストアップや課題設定などのアドバイス、集中検討するための合宿の設計・ファシリテーション、資料作成や顧客候補への案内・ヒアリングの場をセッティングする。

コンサルティングの成果はいかがですか?

全体を通じて、若手のマインドセットが変わりました。また、R&Dの捉え方が、「モノを作ったら終わり」ではなく、「モノを作ったら何になるのか?」という、“その先を考える意識”が芽生えたと感じています。ドコモには、新規事業創出プログラムもあり、社員の新規事業へのチャレンジは今も続いています。

若手社員に与えられる育成プログラム。発表するアイディアの質を向上したい

人材育成に関する課題についても教えてください

ドコモは若手社員に対して、自分自身がやりたいテーマを設定し、一年かけて得た成果を発表する育成プログラムを実施しています。この取り組みは、「すごいものを作った」という結果よりも、課題の先読み、仮説検証プロセスの思考や周囲の巻き込み方、ハードルをどのように乗り越えたのかが重視されます。

ただ、R&Dは技術者が多いので、どうしてもモノづくりに主眼を置いてしまい、発表では技術的な素晴らしさにフォーカスして伝えてしまうという課題がありました。こうした背景から、アイディアポイントに育成プログラムに対する社員のマインドセットを変えるプログラムを実施してもらうことにしました。

実施した研修プログラム

■2016年 顧客価値創出提案力向上研修
育成プログラムのアイディアの質を向上させるために、「成し遂げたいことから考え直し、他のアイディアの選択肢を広げる思考法(システム思考)」を学び、実際に自分のアイディアの他の選択肢もアウトプットするプログラム。

■2017年 顧客価値創出提案力向上研修
育成プログラムのアイディアの質を向上させるために、「自分が提供したいサービスや業務改善したいことを深掘りして考える思考法(因果関係ループ図)」や、新たなアイディアや検討事項を見つけるための思考法(6Thinking hats)を学び、自分のアイディアを異なる観点で考え直すプログラム。

■2018年 伝わるコミュニケーション研修
若手社員が自分の研究に関して、社内の上司や部署外・社外の関係者に、その研究の必要性や価値を伝えるためのスキルを磨くために、コミュニケーションスキルを身につけ、実際のケースを設けて演習を行うプログラム。

■2019年 課題発見・課題解決力向上研修
育成プログラムのアイディアの質を向上させるために、問題がどこにあるのかを幅広く考えるための問題発見のコツや、問題を解決する方法を考えるための思考法を学び、実際にアウトプットするプログラム。

結果はいかがでしたか?

プログラムを受講する前と後では、スタート時点の意気込みがはるかに変わりました。受講した社員には、育成プログラムを成し遂げるためのマインドセットが必要だと伝えていたこともあって、発表の質や視点が今までとは異なっていると感じています。

要望に対して最適なプログラムと人材をアレンジしてもらえる点がアイディアポイントの魅力

アイディアポイントの強みを教えてください

定型化されたサービスではなく、我々のオーダーに対して最適なプログラムと人材をアレンジいただける点が一番の良いところです。それだけでもとてもありがたいのですが、講師・コンサルティングを行っていただいた代表の岩田さんやご紹介いただくメンターの方がとても話しやすく、人のつながりから様々な知識を得られることも大きいですね。特に2015~2016年は我々に新規事業化のノウハウがなかったので、本当に勉強になりました。

今後、取り組んでいきたいことを教えて下さい

現在、私が所属している会社(株式会社NTT QONOQ テクノロジ部門 サービス開発グループ)は 「XR(Extended Reality)」を軸に様々な事業展開や技術検討を進めています。その中で私は“ARグラス文化の醸成”をテーマにアプリ開発やユースケース創出に携わっています。例えば相手の顔を認識して名前がARグラス越しに出てくるとか、行きたいところに案内してくれるとか、そんな技術です。街ではみんなスマートフォンの画面を見ていますが、小さい画面から情報を得るのはとても疲れます。眼鏡であれば視界のすべてがディスプレイになり、スマートフォンのように手を使うこともなければ、手元に気を取られて周りに目がいかなくなることも少なくなります。ARグラスにはたくさんのメリットがありますが、普及させるにはいかに楽しいコンテンツを創出できるかが鍵になるでしょう。一人でも多くの方がARグラスを利用し、生活の一部に溶け込んでいく世界を目ざして、これからもチャレンジを続けたいと思っています。

本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

管理本部
高橋 佑季

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