アイディアポイント岩田です。今回は、先日実施したセミナーでお話しした内容について、詳細の解説をしていきます。
このセミナーは、一般社団法人日本イノベーション協会で開催しているR&D部門向けの勉強会です。今回は、第3回ということで、株式会社GRIと共催で、「R&D部門におけるAI、IoT、データサイエンス教育」というテーマの中でお話ししました。当日の様子は社団法人のレポートを参考にしてください。
その中で、私が当日、お話しした「R&D部門にとっての『DX人材育成』とその論点」について、本日は書いていきます。ご興味のある方は、ぜひ、お問い合わせください。絶賛、営業中!です。
「専門家だから他のことはわからない」が許されない時代 – しかもビジネスも理解しろとは!!
私自身が、R&D部門の人材育成で感じることは、「最近の技術者は大変だな」ということです。何が大変だと感じるかというとそのカバー範囲が広くなっていることです。以前は、機械の人は機械、電気の人は電気、化学の人は化学をやっていればよかったものです。もちろんこのような分け方ですら、ざっくりしすぎていますが、技術者=専門家で、専門分野のことさえ取り組んでいければ、それでよしとされている時代は終わってしまったようです。
私の馴染みのある分野で言うと、最近ではハードウェアの技術者とソフトウェアの技術者も垣根がなくなりつつあるように見えます。機械系の人でプログラムを書いたことがない人はいないでしょうし、ソフトウェアエンジニアも簡単にデバイスを触って実装することを無視できる人も多くないのではないかと思います(実際に触ってない人はいるかもしれませんが)。専門が生物や化学であってもデータを扱うのは当然ですし、最近では、ビジネス側の要請も複雑化しているので、様々な分野をミックスして解決策を考えなくてはいけなくなってきているようです。
技術者であっても「専門家だから専門外のことは知らない」では許されない時代になっていると感じています。
さらに、最近では、「技術者も市場や顧客のことも知らなければいけない」というコンサルタントや研修会社も多いようです。私個人的には、その考え方には必ずしも賛成しません。顧客や市場のことを全く考えないことへの『戒め』としては有効かもしれませんが、「技術者は技術のことをよく知っているのが先」だと考えています。その上で、必要に応じて「市場や顧客のことも知っていく / きちんと考える」のが本来の姿なのではないかと思っています。
R&D部門における人材育成の課題は、専門家と言いながらカバーする範囲が広くなっている中で、どのように効率的、効果的にスキルを取得するのかという点ではないかと考えています。
R&D部門におけるデジタルリテラシー、データサイエンスをどのように捉えるのか
次に、今回のテーマであるデジタルリテラシー、データサイエンスをどのように捉えるのかについて議論していきましょう。現在、多くの分野でデータとAIによる解析は、常識になっています。どんな実験でもシミュレーションは当たり前、工場でもデジタルツインズでシミュレーション、マテリアルズインフォマティクス等あらゆる分野で、リアルなものをデジタルに置き換えられています。
同時に、あらゆる分野にコンピューターサイエンス / データサイエンスを学んだ技術者が乗り込んでいる状況です。NASAの科学技術者が金融業界に流れ込んだり、新幹線の開発に航空技術者が参入したときのように、新しい分野に新しい技術者が流れ込んで、これまでの研究や開発とは発想の異なる方法が生まれたのと同じようなことが起きようしているように見えます。
このようなコンピューターサイエンス / データサイエンスを無視できない状況を見て、既存のR&D部門はどのようにこのAI技術を捉えるべきでしょうか。少なくともこれに対して、なんらかの形で使える、使いこなせるようにするタイミングにあるのではないでしょうか。
技術者は、本当ならデジタルスキル習得に圧倒的に有利なはずなのだが…
私自身は、R&D部門の方は、デジタルスキル習得に圧倒的に有利だと感じています。そもそも既に業務でも活用しているし、統計やそれ以外の数学の素養もあるし、新しいツールの活用には馴染みがあるはずです。さらに、技術者の方が、本来持っている「地頭のよさ」、「好奇心」を活かせば、必要なものくらいは簡単にできるようになるのではないかと思っています。
が、実際にやってみると、『大変、評判が悪い…』という実態。これは、なぜ?
研修会社 / 研修講師にR&D部門の人にプログラムやデジタルスキルを教えるのはどうなのか話を聞いてみると、『意外と難しいんですよね』と言われます。多くの講師からは、『実は、やりにくい』、『素直に聞いてもらえない』という声を聞きます。
『こんなこと知っているから、勉強する必要ないだろう』という態度の問題、『わからないところだけ教えてくれればいいんだよ』と言われる、『基礎的な話を正確に聞いてもらえない』、悪気はなくても『きっとこうだろうと進まれたりすると困る』という話を聞きます。多くの講師が口を揃えて言うのが、『素直に聞いてもらえないんだよね』ということです。
この辺りは、非常に興味深い(?失礼しました)ところで、初学者(経験のない人)に教える場合と経験者に教える場合では異なる工夫が必要だということが言えそうです。
企画側、教える側としては、目的・ゴールを実務に即して具体的に決めること、既に学習している場合にはその内容を確認して、個人である程度、学習内容を取捨選択できるようにしておくこと、その上で、課題をベースにした飽きないテーマで作業しながら学ぶように工夫する必要がありそうです。
学習者にとって重要なことは、「知っていることとそうでないことを自分で把握する」、「多少知っていることであっても、もう一度、素直に学ぶ」気持ちでしょう。学習用語では、「アンラーニング(既に知っていることであってもあえて忘れて学び直す)」という言葉もあります。場合によっては、知識が邪魔をする場合があることも知っておくとよいでしょう。アンラーニングに関しての詳細はこちらのブログでご覧ください。
新しいことを学ぶときには、「最初に一通り勉強した」上で、「楽しく」、「手を動かしながら」、「考えながら」学ぶ
実際問題として、R&D部門の人は、どのようにデジタル関係のスキルを身につけたらよいのでしょうか。もちろん、必要となる分野、頻度、現時点での習熟度によって異なる設計が必要です。しかし、基本的な考え方は、通常の大人の学習と変わらないのではないでしょうか。
大人になってからの勉強は、やはり、「おもしろいな」、「やってみようかな」と思うことと、実際に手を動かすことが大切です。そして、デジタル分野、データサイエンスはそれに加えて、「1回、きちんと勉強する」ことがポイントなのではないかと考えています。
こちらのスライドは今回のセミナーで話したものですが、これは人事向けのセミナーで話したものと同様です。こちらの「例」のところを実際の業務や人に合わせて、上手に設計することが、楽しく継続的に最後まで続けるためのコツなのではないでしょうか。
実際にどんなテーマを設定すると学習する人にとってよいものになるか…それは、ぜひ、ご相談ください(ここはさすがに一般化できないので…)。
今回は、先日のセミナーで話した内容、「R&D部門にとっての『DX人材育成』とその論点」について解説しました。最近では、すっかり、データ活用もAIによる解析も当たり前になりつつあります。
今後、私たちの知らないところでどんどん活用が進み、気がついたら「あれ?ほとんど人間はいないじゃないか」と思うような時代がくるのではないかと考えています。すごい時代ですね。まだまだ私たちも研究中ですので、ぜひ、一緒に勉強、議論していきましょう!ということで、研修プログラムやデータに関連したプロジェクト絶賛募集中!ですので、興味があれば、ぜひぜひ、弊社までお問い合わせください。
本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹