イントレプレナーに向いている人 / 向いていない人の違い

アイディアポイント岩田です。現在、『イントレプレナー』と呼ばれる『社内で新しいことをはじめる人たち』に焦点をあてて、その人たちはどんな人たちで、どんなきっかけで新規事業をスタートして、どんな苦労を乗り越えて、どこに向かっているのかを調べています。(イントレプレナーについてはこちらの記事をご覧ください。)

今回は、社内起業に向く人、向かない人について議論していきたいと思います。このテーマに関しては、インタビューの際にイントレプレナーに聞いておもしろいと感じたのは、「自分では気に入っているけれども、社内で新しい事業を立ち上げる仕事だけがすばらしいとは思わないし、すべての人に勧めもしない。そもそも新規事業に取り組めるのも既存事業がしっかりしているからなので、必ずしも全員が新規事業に取り組むということもおかしな話だと思う。人には志向や適性があるのだから、よく考えた方がよいと思う」というとても慎重な回答が多かったことです。彼 / 彼女らが実際に取り組んでみて大変さを実感していることを割り引いても、いくつかの真実があるのではないでしょうか。特に、これから社内起業をしてみたいと考えている人たちは参考にしてください。


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『指示されなくても行動する / してしまう』人は、新規事業に向いている

多くの職場では、「自分自身が取り組むべき仕事」やある期間を通じて「目標、達成すべきこと」があって、そのために組織が存在してマネジメントされています。

そのような環境で、「やるべきことをやる」一方で、それとは別、あるいは上手に融合させながら、「自分の興味のあること」や「やりたいこと」に時間を割いて、公式 / 非公式な活動をしている人が一定数います。このような『自立型 / 自律型』の人材は新規事業に向いていると言えます。

新規事業の立ち上げのタイミングでは、ほぼ正解がわからない状態なので、その中で、自分なりに仮説を立てて、具体的に行動して、そのプロセスを通じて、さらに自分なりに物事を考えて次の仮説を立てて行動するというプロセスを繰り返していかなくてはいけません。

『指示してくれる人がいない』、『ルールが決まっていない』中でも行動することができることは必須の能力です。基本的には、「言われなくてもやる」くらいの行動力がある人は新規事業に向いているのではないかと考えられます。


『好きにやっていいよ』、『自由にやっていいよ』(但し、成果は上げてね)がうれしい人も新規事業に向いている

多くの会社(特に、研究所)では、20%ルールという業務時間の一定割合を自分の好きなことに割り当ててよい制度を導入しています。あるいは、通常の業務でも上司からある程度の裁量を与えられて、「この範囲であれば、自分の好きなようにしてよい(但し、責任はとる)」というような仕事の受け方をすることもあるのではないでしょうか。

こんな場合に、『わーい、これまでやりたかったことをどうやってやろうかな!』と無邪気に喜ぶ人もいますが、一方で、「さて、困ったぞ。一体、何をすればいいんだ?責任取るの嫌だな?誰か、何やったらいいのか教えてくれないかな」と思う人もいます。基本的には、前者の人の方が新規事業に向いています。

実は、自分の裁量と責任で時間を使うことは、意外と「その人なりに適正な範囲」があります。特に、新規事業分野の「任され方」は独特のものがあるので(任せている側にもゴールのイメージがまるでなかったりするので)、このような仕事環境を好む、好まないは好き、嫌いが分かれるのではないでしょうか。

責任に関しても同様で、「自分で好きにやっている代わりに、何が起きても自分でなんとかしなくてはいけない / なんとかすればいい」ということに関して、「そういうもんだよね。逆に、楽でしょ」と思う人もいれば、「とんでもない、そんなことのために仕事をしているわけではない」という人もいるでしょう。そこも感覚の違いなのでしょう。


決められたこをきっちりやるのが得意な人、自分の業務範囲がきっちりと決まっている仕事が好きな人は既存事業の方が向いている

逆に、自分の業務範囲がある程度きっちりと決まっていて、その範囲を責任もってきちんとやり切ることが得意な人は、一般的には、既存事業の方が向いています。これは既に、過去の経験からプロセスと役割、責任範囲が決まっていて、それぞれの役割をきちんと果たすことで全体が動いているビジネスでは、非常に有効に機能します(多くの組織はこのようにできているはずです)。

ちょうど、新規事業がラグビーのように「大体のポジション」が決まりながらも状況は流動的で常にボールが動いている中で、個人も自由に動きながら必要に応じて、ボールを運んだり、タックルしたりする一方で、アメリカンフットボールのように、毎回きちんとボールが止まるところからスタートして、各自がきちんと守るところが決まっていてその通りに動くことでチームが機能するというイメージです(もちろん、アメリカンフットボールでも緊急事態は各自が柔軟に対応するわけですが)。

あるいは、新規事業はサッカーのようで、攻撃、守りも流動的、常にボールが動いていて、大体のポジションは決まっているものの、人も動きながら必要に応じて柔軟にポジションを動きながらプレイするのに比べて、野球は、攻撃、守りが分かれていて、守りでは守備の場所が決まっていて、お互い抜かれないようにその間はカバーしつつ、それぞれの守備範囲を責任をもって守っていることで、チーム全体が成立しているというイメージです。

特に、立ち上げ期の事業は、正直なところ状況が『グチャグチャ』です。朝令暮改は当たり前、何やるかも決まっていない。やることはたくさんあるけれども、すぐにやらなければいけないことはない、リーダーはいない。そんな状況で落ち着いて働くことはなかなかできません。さらに、何が起きるかもわかりません(起きるかもしれないし、起きないかもしれません)。

きちんと落ち着いた状況で、丁寧に、ひとつひとつの仕事に取り組みたい人にはあまり向かない仕事、達成感を感じにくい仕事だと言えそうです。


『みんなでしっかりコミュニケーションをとりながら』働きたい人は既存事業向き

ここはどのような表現で書こうか迷ったのですが… 新規事業では、最初は、どうしても少人数でスタートせざるをえません。今回のインタビューでも社内の人間は1人、2-3人からスタートしていることがほとんどです。

そのような環境では、『みんなでコミュニケーションを取りながら働いている』というよりも、『とにかく行動』、『全員、フル稼働』、『とにかく、スピード重視(すぐやる、すぐ決める)という働き方になっているようです。大体、チームワークはよいのですが、「みんなで話し合いながら、きちんとすり合わせたり、合意したりしながら」仕事を進めるという感覚はほぼないのではないでしょうか。

逆に、このような即断即決、それぞれがフル稼働しながら、それぞれの役割・責任で意思決定をしながら物事を進めていくようなチームで働くのが得意な人には、新規事業の仕事が向いているのではないでしょうか。

イントレプレナーへのインタビューでも、「やってみないとわからないと思いますが、意外と孤独を感じることもあるんですよ」という話を聞くこともあります。「少なくとも、既存の事業で上司も同僚もいる中で働いているのと比較して、自分のレポートラインが役員で、自分がハンコを押して外部のパートナーに仕事を発注して、顧客の反応を直接見たり、自分が事業責任者として取材を受けたりする感覚は、以前の組織にいるものとはまるで違う」という話は実感としてあるようです。


『おもしろそうだな』 vs 『大変そうだな』 のどちらが勝つか?

新規事業はやりたいのであれば、確実に「おもしろい」仕事だと思います。そもそも自身の興味のある分野でやりたいことを試せる、会社にも認められていないと取り組めないですし、個人、会社、社会にとってもやりがいのある仕事だと言えるでしょう。一方で、「大変な」仕事であることも事実です。

やったことがないことは、何が「おもしろく」て、「大変」なのかがわかりません。メディアの情報ではどうしても、「よい面」が強調されがち(それもわかりやすいところ)で、実感がわきにくいと思いますが、実際に生の声を聞いて、「おもしろい」ところ、逆に、「大変な」ところを集めてみると参考になるのではないでしょうか。

今回のインタビューでも、何人かの方から、「あんまり、外では話さないんですが、やっぱり、お客様が使っているところを直接見ることができたら、やってよかったなぁと心から思ったりしますよね」」という話や「パートナーから〇〇さんだから信頼して参加したと言われてうれしかった」など、本当に実感のこもった話を聞くことができました。逆に、「あのときは、本当に、腹切ろうと思った」、「こんなやつにこんなこと言われて腹立った」などの話を聞いたり…。

自分が体験していないことは、具体的にイメージできるまで情報を集めたり、話を聞いたりするしかありません。ぜひ、みなさんも周囲のイントレプレナーの話を聞いてみて、自分にとって「おもしろい」vs「大変そう」のどちらが勝つか検討してみてください。

ということで、そろそろ宣伝を。とはいえ、「イントレプレナー」とその声はなかなか世の中に出てこないのではないかと思います(私自身も聞きたいなと思いながら、なかなか聞く機会がなくて…)。ということで、そんな「イントレプレナー」のみなさんの実体験を集めた本を企画しています。4月下旬発売予定ですので、ぜひ、ご購入ください!!(まだ、本、できてませんが…がんばって完成させます)

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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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