アイディアポイント岩田です。そろそろ梅雨ですね。新入社員のみなさんはそろそろ配属され、逆に、職場のみなさんはそろそろ新入社員を受け入れる頃でしょうか(そして、人事のみなさんは新人研修を終えて、職場に送り出した頃でしょうか)。なんだかうきうきすることが多い季節ですね。
さて、今日は、最近、耳にする『アンラーニング』というキーワードについて、少し具体的に解説してみようと思います。実は、このネタは、セミナー用に書き起こしています。セミナーは6月末に実施予定…です。
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というわけで、今日の本題です。
アンラーニング(unlearning)は「わざわざ、意図的に忘れる」こと。なぜ、必要なのか?
最初に定義を見ていきましょう。
「アンラーニング」(unlearning)とは、いったん学んだ知識や既存の価値観を批判的思考によって意識的に棄て去り、新たに学び直すこと。日本語では「学習棄却」「学びほぐし」などと訳されます。個人や組織が激しい環境変化に適応して、継続的な成長を遂げるためには、いわゆる学習(ラーニング)と学習棄却(アンラーニング)という、2種類の一見相反する学びのプロセスのサイクルをたえず回していくことが不可欠とされます。
簡単に解釈すると「わざわざ意図的に、忘れる」ということです。パッと聞いてみて、どんな感覚になったでしょうか?多くの人は、違和感があったのではないでしょうか、「わざわざ、忘れるって何を?」、「なんで、わざわざ、忘れなくてはいけないの?」、「普通に、必要ないことって忘れるけど、それと違うの?」、「なぜ、わざわざ、忘れることに大げさな名前がついているの?」と感じた人も多いのではないでしょうか(あるいは、ここまで具体的に言葉にできなくても、なんか変な感じがした人も多いのではないでしょうか)。
それでも、このタイミングで、「わざわざ忘れる」ことが大事なのには理由があります。その理由は大きく3つ挙げられます。
- 意外なことに、「これまで学習したこと / これまでの経験(特に、成功体験)」が邪魔をしてしまう場面が多くなってきている(知らない方がかえってよいくらい)
- 本人は、『よかれ』と思って取り組んでいるのに、それが裏目に出てしまい、「はまってしまう(取り組めば取り組めむほど、悪い方向に結果が出る)」ケースが後を立たない
- これまで、多くの場面では学ぶこと(Learning)ばかりが強調されてしまっていたせいで、「忘れる」ことはあまり、意識されていない。ので、きちんと名前をつけて「体系的なアプローチで解決しないといけない」ことが増えてきた
というのがその理由です。
立場が変わる、新しい環境に身を置くときは、アンラーニング(unlearning)は必須
それでは、『アンラーニング』というキーワードは、どのように理解するとよいのでしょうか。私が説明するときには、下記のように説明しています。
立場が変わる、新しい環境に身を置くときには、自分の中に、3つの箱を作って、それを見ながら、自分が取り組むべきことを考えるようにするとわかりやすく整理できます。3つの箱とは…
- これまでの自分の経験の中で使えるもの → 『自分のできること』箱(自分のスキル、経験)
- 立場が変わって学ばなければいけないもの → 『これからできるようになる』箱(学習:Learning)
- これまでの自分の経験が邪魔になるもの → 『一旦、消去』箱(学習棄却:Unlearning
立場が変わる、新しい環境に身を置くときに、まじめな人であれば、2.は嫌でもいくらでも出てくると思いますが、意外と1.の箱と2.の箱の区別をつけて、適切に入れなおせていないケースも見受けられます。
これは、様々なシーンで見受けられます。
- 新入社員が学生から社会人になる場合… 学ぶことはたくさん、これまでの経験の中で本当に使えるものだけ残して、後は全部、消去せよ?と語られることが多いのではないでしょうか
- 中途社員の人が入社する場合… これはうまくいく人とうまくいかない人がいるでしょう。「上手になじめない(経験を捨てきれない)」のもダメですし、逆に、本当なら「なじみすぎ(これまでの経験を全部捨てる)」なのもダメなはずです。会社も「これまでの経験を活かして活躍してください」と言っておきながら、前職でやっていたことをやろうとすると「それは当社のやり方ではない」と言ったりするとうまくいきません
- 一般的には異動も同様です。きちんとこれまでの経験から「活かせるとこは持ってきて」、その上で「学ぶ」こと、さらに、「不必要なことは一旦、忘れる」ことが大切です。会社全体のことを考えられるようにいくつかの部署をローテーションしているのに、異動するたびに「その部署の人」になって会社を批判的に見るようになったりしてはいけません
- 昇進も同様です。特に、一般的には、プレイヤーから管理職への生まれ変わりは、これまでの自身の個人的な成功体験のうち、『持っていく』ものと『意図的に忘れなくてはいけない』ものがあります。自分だけの成功体験をチームに強要して成果があがらない… そんなことは多くの職場で起きているのではないしょうか
特に、直近では、『これまでの成功体験』が通用しないばかりか、かえって悪い影響を与えるようなケースも多く見受けられます。これまで、人材開発の場面では、『学ぶ』ことが強調されてきましたが、『あえて忘れる』ことの重要性が増してきています。
どうやって、『アンラーニング(unlearning)』すればよいのか? 『アンラーニング(unlearning)』してどうすればよいのか?
というわけで、『アンラーニング』せよ…
と言葉で言うのは簡単ですが、これまでの実績や経験を評価されて新たなポジションについた人、新しい機会にチャレンジした人にとっては、簡単なことではありません。もう1点、大切なのは、「自分の過去の成功体験を忘れたとして、何を使って成果を挙げるのか」ということです。この点を無視して、『〇〇さんは、過去の成功体験が忘れられないんだよなー』というのは、乱暴すぎる / 愛情がなさすぎます。ということで、ここでは、実際に、『アンラーニング』するために、何をするのかについて、説明します。
- 他者の視点、客観的なフィードバックも入れながら丁寧に、『使えるもの』と『アンラーニングするもの』を、
仕分けする(必ず、両方を扱う)
『過去の成功体験』は素晴らしいものですが、これを自分自身で整理することは非常に難しいものです。フレームワークを使って、ある程度、整理することはできますが、どうしても、認知(その時の状況をどのように解釈したか)の問題があるために、どこまで具体的に考えても、どうしても主観的にならざるを得ません。本人にとっても「当たり前事項」が多いため、必ずしもリストアップしきれるものではありません。また、その経験がこれから『武器』になるのか、『足かせ』になるかの判断も微妙なものも多く出てくるため、やはり、他者と話しながら考える方が効率がよいです。
方法としては、コーチングに近い形が理想的です。これまでの成功体験を書き出しながら、ひとつずつ、どんなときに(Situation)、どんな行動をして(Behavior)、どんな成果があったのか(Impact)、そして、それはどのように理解しているのか、それが今後、よい影響を与えるのか、よくない影響があるのかなど、話し合いながら、自身で考えらえるようになるのが理想的です。
「今までの経験は役に立たないから全部忘れろ」ということは決して、ありません。ひとつひとつ丁寧に検討して、『将来の自分にとって、不要(あるいは、足を引っ張るもの)に関しては、意図的に忘れる(正確には、認知を変更する)』ことでよい影響を与えるようにするという観点で議論を進めてください。
- 原理原則を勉強する。直近の事例から学ぶ
自分の過去の経験が活かせないとしたら、どうするべきか。この答えは簡単です。勉強することです。勉強と言っても、学生時代の勉強のように教科書を読んで理解して、点数をとるということではありません。より実践的な内容なので(人にもよりますが)、そこまで苦しくはないでしょう。
意識することは2つあります。ひとつは、『原理原則』を学ぶことです。少し大変ですが、学ばなくてはいけない分野で『古典』、『原典』と呼ばれるものを読んでおくことです。既に業務経験があれば、それほど難しいことはないはずです。このような『古典』、『原典』と呼ばれるものは、抽象度が高い代わりに、普遍性がありますので、一度、学んでしまえば、基本的にはずっと使えます。その上で、「直近の事例」を学んでおくことです。様々な情報を知っていることは非常に有利です。自分の過去の経験が効かない中では、多くの事例を知っておくことはきっと役に立つことでしょう。
このような話をすると嫌がる人もいます。「これまでの自分の経験」が通用しない以上、『勉強する』以外の選択肢はありませんので、腹を括って勉強しなくてはいけません(もし、どうしてもそれがいやなら、自分の経験が通用する場所を選び続けるしか選択肢はありません)。
結論 : わざわざ意識的に忘れなければいけないくらい『成功体験』、『思い込み』は強力
今回は、最近、話題の『アンラーニング』というキーワードについて説明しました。昨今、「これまでの経験が必ずしも通用しなくなっている」、「自分たちで考えなくてはいけない」、「新しいことに挑戦しなくてはいけない」と言われて、多くの人が頭では理解しているし、実際に、できることから行動もはじめています。「新たに学ばなければいけないこと」も多くの場所で語られるようになりました。一方で、「これまでの成功体験がどうしても足を引っ張っている」状況もあちこちで散見されるようになり、あらためて、『アンラーニング(わざわざ意図的に忘れる)』ことの重要性が注目されています。
セミナーでは、『組織開発』、『事業開発』という文脈では、チームとしてどのように『意識的に忘れる』という行為に取り組むのかについて、お話しようと思います。内容は…これから考えますが、興味のある方は、ご参加ください!!
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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹