『現実解』としてのビジョンづくり

アイディアポイント岩田です。今回は、ビジネスプラニング研修 / ワークショップや新規事業の計画づくりをするときに、よくでてくる質問のうち、『ビジョン』について、書いていきたいと思います。

私たちの会社で実施する研修 / ワークショップ、新規事業プロジェクトでは、必ず、『ビジョン』を考える / 書くタイミングがあります。ビジョン(Vision)とは、『その事業を行うことで、どんな未来を実現したいのか』、『実現した状態を具体的に見えるようにしたもの』という意味で使っています。

そこで、そこそこの頻度で出てくるのが下記のような疑問です。

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Q.まだ、事業も始めていないのに、ビジョン(Vision)って、本当に必要なのか?

私たちは、自分たちがこれからスタートしようとする事業が、将来、どんなことを成し遂げようとしているのかを確認しておくことは、自身にとっても、チームにとっても、スタート前に確認しておいた方がよい』と考えます(なので、やはり、必要だと)。

理由としては、大きく3つあります。

ひとつめは、『意思決定』のためのビジョンです。今後、細部を検討していくためには、『目指す姿』が必要だからです。計画を立てている段階ではあまり感じませんが、今後、様々なことを意思決定していかなくてはいけません(顧客像、ターゲット、商品・サービス、価格、販路などなど)。また、当初の想定通りにいかないことも多く起こります。そのときに、ビジョンという実現したいことが『判断の軸』になります。本当に、実現したいことはできるだけはっきりとしていた方が判断はしやすくなります。この点から、やはり、ビジョン(Vision)は必要だと思います。また、『立ち戻る場所』としての役割もあります。実際に事業を進めていくと方向転換せざるを得ない局面は十分、想定されます。ピボットという言葉があるように、事業の方向転換は、起こり得ることです。その際に、「何でもあり」の状態では、判断ができません。その際にも、自分たちが目指した将来像として、ビジョンがあれば、その範囲で、『次の手』が選択できるようになります。

ふたつめは、『旗印』、『マネジメントツール』としてのビジョンです。今後、チームを作り、ビジネスを拡大する際には、組織としての『旗印』、『進む道』が必要になります。また、昨今では、どんなチームでも『採用』は大きな課題となってくるでしょう。その際に、自分たちが何者で何を目指しているのか、よい行動 / 悪い行動など、さまざまな『組織の課題』を扱うことになるでしょう。どんな人を集めるのか、どんな行動をしてもらうのか、すべては、目指す姿から議論する必要があります。昨今では、『パーパス経営』という言葉も浸透してきているように、個人から見たときに組織に期待することは「儲ける / 儲かる」ことだけではなく、その目指す姿となっています。この観点からも組織が実現したい姿(Vision)はより重要になってきています。

みっつめは、自分自身 / チームの精神衛生上の理由です。これはどちらかと言えば、個人的な意見ですが、今後、プロジェクトを進めていく中で、おそらく、「自分はなんでこんな大変なことやっているんだろう」、「なんで、こんなこと言われながら働かなければいけないんだろう」と思うことがあると思います。そのときに、どのようにメンタルを保つかはもちろん、人によると思いますが、「それでも、自分たちは、自分たちが実現したいことに向けてがんばっているんだ」ということが、心の支えになるのではないかと思います。ということで、やはり、ビジョンは自分やチームのためにも作っておいた方がよいのではないかというのが私の意見です。

そうすると

Q.ビジョンは、どうやって書いたらよいか

という質問を受けます。これは、もう、『思ったことをとにかく書く(表現する)』しかありません。必ずしもカッコいい言葉に仕上げたり、エモい写真で表現する必要はありません。自分やチームが「そうだなぁ」と思えるものであれば、それで構いません。

これがないといけないというルールはありませんが、以下のような条件を満たしているとよいでしょう

  • 自分やチームが、しみじみと「そうだよな」、「そうなりたいな」と思える
  • 作った「ビジョン」について、具体的に話ができる
  • それを読んだり、見たりしたら、「気持ちがあがる / がんばろうと思える」

そんなものをどうやって考えたらよいか?それに関しては、考えなければいけません。私たちが研修やワークショップでは、「はい、30分で考えてまとめてください」みたいな進め方をしますが、実際には、日々、考え続けて、しっくりくるものを探すのがよいのではないでしょうか。

ちなみに、当社のVisionは↓こんな感じです。結構、気に入っています。働くことは苦しいことじゃなくて、もっと楽しんで工夫して、クリエイティブに働いて、ハッピーになるべきだな、そんな社会にしたいと思っていますということで

Be Creative, Be Happy – すべての人がもっと自分らしく、創造的に働いて、幸せな人生を送れるような社会をつくる』

ちなみに、よくいただく質問に「どうしても、抽象的になってしまう」というものがありますが、それはそれで構わないと思います。性質上、どうしても抽象度は高くなってしまいますし、具体的であることだけがよいというわけではありません。自分やチームが「どんな将来を目指しているのか」が表現できていればOKです。

詳細な作り方や議論の仕方は、方法やツールもありますので興味があれば、ご相談ください。

それ以外によくある質問としては、下記のようなものがあります。

Q.ところで、ビジョンは、いつ書けばよいのか?

私たちが企業内で研修 / ワークショップを実施する場合には、ビジョンは最後に書くように構成しています。それは、多くの企業で、先に、アイディアやテーマ、ターゲット(顧客)が設定されている場合が多いからです。このような場合は、先にある程度、具体的にビジネスの内容を書いてから、あらためて、ビジョンを考える方が考えやすい(だろうと感じる)ので、ビジョンを考えるのを最後にしています。

結論から言えば、「いつでも構わない」し、「書きやすいタイミングで書く」のがよいと思います。仮に書いておいて、事業計画を立てながら表現をブラッシュアップしていく(よくしていく)のがよいと思います。

その際、注意があります。ベンチャー企業や会社説明では、『ビジョン』が先に語られて、その後に事業の説明がなされることが多くあるのですが、これは、必ずしも「その順番で考えた」わけではないことに注意してください。どうもこの印象が強いようで、「最初にビジョンがあるべきなのではないか」と考える人もいるようですが、必ずしも世の中の全員が「先に、実現したい将来があって、そのために、事業を考えた」訳ではありません。実際に、私の周囲でも、「最初に、この事業がいいんじゃないかと考えてスタートしようとして、そのタイミングで、ふと、「自分は何を実現しようとしているんだろう」と考えて、そこでビジョンを考えた」という人も多くいます。

ということで、ビジョンがある人は先に書いてみるとよいと思いますし、ない人は、具体的なビジネスプランを書きながらビジョンを考えていってもよいと思います。
最後に、先日、いただいた質問に回答して、結論を述べたいと思います。

Q.ビジョンは、いつ、どのように使えばよいですか?

日々の業務で、重要な意思決定をするときや本当に困ったときには、ビジョンに立ち返って考えてください。

習慣がないとイメージできないかもしれませんが、割とスタンダードな考え方です。ビジョンに限らず、クレド、〇〇Way、方針などはすべて、現実的な『道具』として使うものです。議論がまとまらない、どうしても決められないことが起こった、この人を採用する / しないで困るなど、困ったときには、ビジョンを実現するためにプラスなのか、マイナスなのか考えて最終的な意思決定をすることにしましょう。

私の感覚では、「キックオフミーティングで話す」もの、「額縁に入れて飾っておく」ものではなく、「困ったときに頼る」道具です。

どうしても、ビジョンと言うと、「そんな抽象的なもの、使えないでしょ」と考える人もいるようですが、それは違います。困ったときに一番、現実的で実用的なツールだと思います。ということで、ぜひ、ビジョンを作って、現実的、実用的なツールとして活用してください。ツールは使ってナンボです。


ということで、今回は、ビジネスプラニング研修 / ワークショップや新規事業の計画づくりをするときに、よくでてくる質問のうち、『ビジョン』について、書きました。やっぱり、作っておいた方がいいですよ。おしまい。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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