
アイディアポイント岩田です。私たちの会社では、年度末(3月)までの施策が一段落するタイミングで最終報告会、最終発表会をご一緒する機会が増えています。
今回は、最終報告会、最終発表会の後に、「おまけ」としてお話する『ダニング=クルーガー効果』について解説していきます。前半は、ChatGPTを使いつつ解説していきます。
ダニング=クルーガー効果とは?自己認識の落とし穴とその対策
私たちは日々、仕事や趣味、生活の中でさまざまな判断を下しています。その中で、自分の能力を適切に評価することができているのかどうか?が議論の出発点です。
「自信がある」ということは、必ずしも「実力がある」ということと一致しません。むしろ、時には自信過剰が判断ミスを引き起こすこともあります。その心理的なバイアスのひとつとして知られるのが「ダニング=クルーガー効果」です。
ダニング=クルーガー効果(Dunning-Kruger Effect)は、認知バイアスの一種で、「能力が低い人ほど自分の実力を過大評価し、能力が高い人ほど自分の実力を過小評価する」という現象を指します。
この概念は、1999年に心理学者のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって発表されました。彼らの研究では、以下のような傾向が確認されました。
“知識やスキルが不足している人は、自分の欠点を認識できず、自信過剰になりやすい傾向がある。一方で、知識やスキルが豊富な人は、自分の能力を過小評価しがちであり、「他の人も同じように知っているはず」と考えてしまう傾向がある“
この効果は、さまざまな分野で見られます。例えば、初心者が「自分は十分に理解している」と考えた結果、ミスを重ねることがあります。また、専門家が「こんなことは常識だ」と思い込み、初心者にうまく説明できないこともあります。このような事象をダニング=クルーガー効果と呼びます。
ダニング=クルーガー効果の推移:「馬鹿の山」「絶望の谷」「啓蒙の坂」「継続の大地」
ダニング=クルーガー効果を理解する際に重要なのが、その典型的な推移を示す曲線です。この曲線は、学習や経験の進行に伴って自己評価がどのように変化するかを示しています。以下のようなステージがあります。図にすると以下のようになります。

1. 馬鹿の山(Peak of “Mount Stupid”)
学び始めたばかりの初心者が、少しの知識やスキルを得たことで「自分は理解した」と思い込み、自信が急激に高まる時期です。この段階では、実力よりも自信の方が大きくなりやすく、誤った判断やリスクの高い行動をとることがあります。
2. 絶望の谷(Valley of Despair)
学びを進めるうちに、自分の知識やスキルがまだまだ不十分であることに気づき、一気に自信を失う時期です。ここで諦めてしまう人も多いですが、この段階を乗り越えることが重要です。
3. 啓蒙の坂(Slope of Enlightenment)
時間をかけて実践と学習を重ねることで、少しずつ知識とスキルが向上し、自己評価も適切なレベルに近づいていく段階です。ここでは、過去の誤った自信を反省し、謙虚な姿勢で学び続けることが求められます。
4. 継続の大地(Plateau of Sustainability)
長期間の努力と経験を通じて、安定したスキルと知識を持つ段階です。ここに到達した人は、自信と実力のバランスが取れ、冷静かつ正確な判断を下せるようになります。
ダニング=クルーガー効果が発生する理由
1. メタ認知の欠如
メタ認知とは、「自分の認知を客観的に把握する能力」のことです。知識やスキルが不足している人は、そもそも「自分が何を知らないのか」を認識する力も低いため、自分を正しく評価することができません。
2. 自己防衛の心理
人間は自尊心を保とうとする傾向があります。そのため、自分の能力の低さを認めるよりも、「自分はできている」と信じ込むほうが精神的に楽なのです。
3. 知識の「習得初期」の「わかったつもり」で謙虚な気持ちがなくなる
初心者は、基本的な知識を少し学ぶと「わかったつもり」になります。しかし、学びを進めるうちに「実は知らないことが多い」と気づく瞬間が訪れ、そこで初めて謙虚な態度を持つようになります。
ダニング=クルーガー効果への対策
この効果を回避するためには、以下のような方法が有効です。
1. フィードバックを受け入れる
他人からのフィードバックを積極的に受け入れることで、自分の実力を客観的に評価することができます。上司や同僚、友人などから率直な意見をもらいましょう。
2. 学び続ける姿勢を持つ
「自分はまだまだ知らないことが多い」と自覚することが、成長への第一歩です。新しい知識を学び続けることで、自分の能力を正しく認識する力が養われます。
3. メタ認知を鍛える
自分の考え方や判断を客観的に振り返る習慣を持ちましょう。例えば、日記をつけたり、自分の過去の判断を振り返ることで、「当時の自分はどう考えていたのか?」を分析できます。
4. 「初心者の壁」を意識する
何かを学び始めたときに、「今はまだ初心者であり、知らないことがたくさんある」という自覚を持つことが大切です。過信せず、慎重に学びを進めましょう。
ダニング=クルーガー効果は、私たちの自己評価に影響を与える認知バイアスの一つです。特に、知識が不足している人ほど自信過剰になりやすく、逆に専門家ほど自分の実力を過小評価しがちです。
この効果を理解し、適切に対処することで、より正確な自己認識を持ち、成長を続けることができます。他人からのフィードバックを受け入れ、学び続ける姿勢を持つことが重要です。「自分は本当に正しいのか?」と疑問を持つ習慣をつけることで、ダニング=クルーガー効果を克服し、より客観的な視点を持つことができるでしょう。
私たちは、新しいことを学ぶときに、『ダニング=クルーガー効果』をどう捉えたらよいのだろうか?
ここまで、『ダニング=クルーガー効果』について解説をしてきました。最後に、実際に、私が、最終報告会、最終発表会を終えたみなさんにお話しする内容をまとめます。
1. これまで新しい分野に取り組んでみて、いま、みなさんは、どこにいますか?
自分を「客観的に把握できる」ことは、大切な能力のひとつです。理論を知っていると自身が「今、どこにいるか」、「この後、何が起きるのか」把握できることができるようになります。把握できるようになると、解決策を考えることができます(あるいは、今をがんばることができます)。そのためのフレームワークです。一度、このフレームワークを見ながら、自分がどこにいるのか考えてみてください。「馬鹿の山」にいる人は早く絶望するまで勉強してください。「絶望」している人は大丈夫です。この後、しっかりと上り坂が待っています!
2. ダニング=クルーガー効果こそ、新しいことにチャレンジする醍醐味!!
「馬鹿の山」「絶望の谷」「啓蒙の坂」「継続の大地」おもしろいですね。最初、「あれ?おれ、完全に理解してしまったかもしれない!」と調子に乗りますよね。しばらくすると、「いかん、何もわかってなかった。まずい。先も見えない..」絶望しますね。それでもがんばっていると少しずつ確かな手応えが出てきて、「あっ、少しわかってきたかも…」ありますね。楽しいですね。仕事をしていて、短期間でこんなに調子に乗ったり絶望したりとアップダウンする経験はなかなかできないものです。こういう経験こそ、新しいことにチャレンジする醍醐味なのではないかと思います。これからも、「盛大に調子に乗って」、「絶望して」、「積み上げて自信をつける」経験をしましょう!
3. これからは、知識、経験を積んで、「本当の自信」を手に入れよう!!
ダニング=クルーガー効果から得られる一番大切な示唆は、「調子に乗って絶望した後は、しっかりと知識や経験を積むことで、しっかりと根拠のある自信が身についていく」ことだと思います。ここから先は、短期的な勝負ではなく、じっくりと腰を据えて取り組むことになります。3-6ヶ月、研修にしては比較的長い時間、研修やプロジェクトに関わった方は、大体、この辺りにいることが多いようです。短期集中の学習から今後は、しっかりと腰を据えて数年、場合によっては数十年かけてしっかりと学習、実務経験を積みながら根拠のある「ゆるがない」自信をつけていってください。ということで、がんばっていきましょう!
今回は、最終報告会、最終発表会の後に、「おまけ」としてお話する『ダニングクルーガー効果』について解説しました。みなさん、本当に、お疲れさまでした & ありがとうございました。研修やプロジェクトの終わりは、本当の?プロジェクトのスタートです。これからはじっくり腰を据えて知識、経験を積み、「本当の自信」を身につけましょう。
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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹