新規事業を提案するのは、個人がよいのか / チームがよいのか?

本日のコラムは、新規事業提案制度におけるエントリー方法について、個人応募とするのか、チームも可とするのか、はたまた外部の人材を含めることも良しとするのか、についてお話します。


目次

それぞれのメリット / デメリットを整理する

新規事業に取り組むにあたって、個人がよいかチームがよいかについては、様々な要素を加味したうえで目的達成に近づく方を選択されると良いと思います。まずはきちんとメリットとデメリットを整理していきます。

まず個人応募のメリットは、新規事業開発において何より重要な「熱意」がブレないことがあります。個人の原体験やビジョンに基づいて検討されるケースが大半だと思いますので、粗削りながらも見どころのある・骨のある提案が上がってくることが期待できます。一方デメリットは、全て一人で考えなければならないため、応募のハードルが高くなってしまい、結果としてエントリー数が減る可能性があります。

チーム応募の場合のメリットはその裏返しで、エントリーのハードルはグッと下がることでしょう。応募のための調べものや資料作りなども分担して効率的に作業することが可能です。チーム応募を可としても熱意がある人は個人で応募してきますので、熱意が拾い切れなくなる心配もありません。デメリットは、複数名の意見をまとめるためにアイディアが丸くなりがちな点と、合意形成のコストが意外とかかる点です。


チーム方式のポイントはリーダーにあり

新規事業開発は孤独な取り組みです。上司もいなければ部署の仲間もおらず、既存事業からは無言のプレッシャーがかけられる中で、比較的短期間で目に見える成果を出さなければいけません。そのような孤独な闘いにおいて、チームの存在は非常に大きな推進力になります。

チーム応募を採用する場合におすすめするポイントは、リーダーを設定してもらうことです。なぜかというと、新規事業の検討における初期段階では、物事を決めるのは“一人”であるためです。そうでなければ、やはり魂のこもった提案にはなりにくいのが事実です。ブレインストーミングをするときにも議論をするときにも、最終的にはリーダーが決めて前に進めない限り、いつまでも議論を続けて停滞するか、折衷案を採用してアイディア自体が丸くなってしまいます。

リーダーは必ずしも力強くチームを引っ張っていかなければならないわけではありません。発案者や一番思い入れのある人がリーダーとなるのが相応しいと考えられます。


個人方式なら『応募数』を期待しない

チームでも結局リーダーという個人がいるのであれば、はじめから個人でコミットしてもらおうという考え方もあります。個々の提案が質の高いものが上がってくることが期待できるので、筆者も特別な条件がなければ個人方式を選びます。

しかしながら前述のとおり孤独な活動を一人で乗り切るためには、スタートから相当な熱意を持った状態でいなければ応募にすらたどり着くことは難しいでしょう。事務局が覚悟をもって一人ひとりと向き合ってサポートしていく必要があります。こちらの記事で紹介したようなイベントやサポート施策も有効です。
それでも、やはりハードルが上がるため応募数が飛躍的に伸びることはありません。個人方式とすることは、応募する量を捨てて質を求めにいくこととほぼ同義であると考えてもよいでしょう。


仲間集めのための施策は有効か?

チーム作りをサポートする方法もあります。ハッカソンやアイディアソンのようなイベントを使ってグループワークを行ったり、問題意識の近い人同士がディスカッションする場を設けたりすることは、応募喚起の施策としては有効です。

しかし、チームメンバーを探すことやスキルマッチングを目的にしても上手くいかないことが多いようです。なぜなら、なかなか普通の人は、(たとえ同じ社内だとしても)イベントで初めて顔を合わせた人と一緒に起業しようとは思わないからです。人となりや能力を知っている同僚で、かつ共通のテーマや問題意識があって初めてチームを組むのが一般的だと考える方が自然です。

上手くいかないもうひとつの理由として、同じ社内の人間だけでチームを組む場合、スキルを補完し合える関係になれることが実はあまりないという事実もあります。広義では同じビジネスに従事してきた人材同士なので、職種の違いはあるとはいえ、いわゆる一般的に行われるハッカソンのようにエンジニア・プログラマー・デザイナー等の明確なスキルの違いがあることは稀です。

ハッカソンやディスカッションは、意見交換の場としては非常に有効であり、『新規事業仲間』を作れるという意味では貴重な機会なので、上手く活用していくのがよいのですが、仲間集めを目的にすることにはおすすめしていません。


組ませられたチームは高確率で失敗する

これまでそれぞれのメリット / デメリットや運用するうえでのポイントをお伝えしてきました。

冒頭にあるとおり、ベストプラクティスがあるわけではありませんが、明確に失敗するパターンが存在します。
それは強制的にチームを組ませることです。チーム分けが勝手に行われるのは研修でよくあることですが、成果創出を目指す活動においては、問題意識の違いや見解の相違によって、空中分解を起こすリスクが必ずあります。

とは言っても、大人なので空中分解はしないだろうと高を括っても、強いリーダーがいなければアイディアが丸くなる等のデメリットが前面に出てきてしまうのです。弊社の経験上、空中分解する確率は20%程度あると見込んでいます。

これは5チームに1チームくらいの確率ですから、やはりおすすめはできません。「なんとなくチームを組んでおけば大丈夫だろう」、「上手くやってくれるだろう」という期待は幻想に終わることが多いようです。


最後に補足として、社外の人材をチームに入れることを良しとするかについて整理します。
結論は、社外人材とチームを組むことに慣れているならば可、不慣れならば不可とするのがよいです。
社外人材を用いるメリットは自社チームには足りないスペシャルなリソースやスキルを補ってくれる点であり、デメリットは空中分解のリスクがあることです。自社の社員を見渡したときに、デメリットのリスクがないと判断できるレベルにあるかどうか(社外人材とプロジェクト的に働くことに慣れているかどうか)、を見極めれば自ずと判断できるということです。

本日は、新規事業提案における、個人 / チームの違いについて説明しました。新たに制度を立ち上げる会社はもちろん、既に運用されている企業の皆様も、今一度見直されるとよいのではないでしょうか。

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