前回の記事(前編)で、「新規事業の案件を、プロセスのどのタイミングで評価し、どのような評価基準で、どのように意思決定するとよいか」の前編ということで、
- 新規事業の案件を、プロセスのどのタイミングで評価するとよいか
- どのような評価基準で評価するべきか
について説明させていただきました。
今回は、前編の続きということで、新規事業の案件に対して「どのように意思決定すればよいか」について書きたいと思います。
評価者は複数でも、意思決定者は1名が理想
新規事業の案件を、「誰が評価し、誰が意思決定するとよいか」について説明します。
結論から言いますと、『全てのプロセスにおいて、意思決定者1名が評価するべき』です。
新規事業は、実行しても成功するかしないか不明瞭である(なんだったら、失敗する確率のほうが高い)わけで、責任のない人が案件に対して良い / 悪い の判断を行うことはおすすめしません。責任のない人が悪いと言っても、意思決定者が良いと言う可能性もあるし、責任のない人が良いと言っても、意思決定者が悪いと言う可能性もあります。そして、どちらにしても実行してみないと成功するかなどは誰にも分からないです。結局、責任を取ることができる人(意思決定者)が決める以外に方法はないのです。
上記では「意思決定者1名」と書きましたが、責任を取って実行できる人が複数名いるようであれば、評価者(=責任を取って実行できる人、つまり意思決定者)が複数名いることはむしろ歓迎されるべきことです。意思決定者Aさんの評価がイマイチでも、意思決定者Bさんが評価して、Bさんの管轄の部門で実行できるのであれば、それはチャレンジすべきです。昔、視聴者参加型歌手オーディション番組で「スター誕生!」という番組がありましたが、歌を披露した人(スターの卵)に対して、複数のスカウトの人が存在する、あのイメージです。
とは言え、意思決定者が、判断しなければいけない案件に関して知見が少ないなどで、自分だけでは判断しきれないといった場合には、評価の段階で、参考となる意見を言ってくれる第三者(社内の人だとしても社外の人だとしても)を評価者として周りに置くことはよいと思います。
「意思決定者ではない」管理職が新規事業の案件に関与することがありますが、上記の内容から派生して考えると、「評価には関わらない」ということをおすすめします。意思決定者ではない管理職が行うべきことは、基本的には、「どうすると実行に向けて案件が進むか、について起案者と一緒に考える」ことです。もちろん第三者として、案件の検討内容がより良くなるためのアドバイス、リソースの確保や内容が分かりにくい部分の指摘を行うことは、起案者にとってためになることもあるので、行うべきでしょう。
最後は、「誰も正解が分からない」ことを前提に、議論を尽くして「エイッ、ヤッ」で決めるのが正解。問題は、『信頼』と『コミュニケーション』で解決する
意思決定者の人数や評価基準に触れてきましたが、新規事業とは実行してみなければ分からないという要素が強いです。そのため、意思決定者も、実際のところは、見てみないと分からないというのが、正直なところだと思います。
我々は新規事業の案件を意思決定者に上申する場面を色々と見てきておりますが、事前に聞いていた新規事業の検討範囲から少し外れた案件でも、「それは取り組まなければならない」と意思決定者が判断して承認されてしまうケースも少なからず見てきました。
新規事業を検討する方向性がある程度提示されていたとしても、具体的なことが指示されていないということは、意思決定者もイメージができてないわけで、それは仕方のないこととして捉えて進めていくしかないのです。
上記の状況を打破するためには、容易な道はなく、意思決定者に対して多くの案件を提示することで、意思決定者が自分自身のことを理解することも含めて、意思決定者の新規事業に関するストライクゾーンに理解を深めていくしかないのです。
ここまでの話(前回の記事(前編)も含む)をまとめると、
- コンセプトの段階でも、意思決定者が評価を行う
- 評価基準の目安はあっても、企業によるし、意思決定者による
- 意思決定者1名が評価するべき(責任を取って実行できる人が複数名いるなら、評価者が複数名も可)
- 意思決定者も、見てみないと分からない(案件を多く提示して、意思決定者のストライクゾーンの理解を深める)
ということになります。
つまり、「手戻り、無駄を少なくする」「少しでも効率を上げるために、意思決定者が承認したくなる範囲を見つける」ためには、起案者と意思決定者が、いかに早い段階から、いかに多くコミュニケーションを取るかが重要になります。
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