若手社員に『デザインシンキング研修』を実施する際にはいつ、何をやる?

最近、当社のお客さまから『若手社員に向けてデザインシンキング研修を実施したい』というご要望をいただく機会が多くなってきました。以前は、『イノベーション』、『事業創出』というキーワードで実施してきたデザインシンキング研修ですが、最近では、問題解決や業務改善の手法、考え方、ビジネスパーソンの基礎スキルと位置づけて検討されることが増えてきました。

実際に、『若手社員』を対象とした『デザインシンキング研修』はどのように設計すればよいのでしょうか。どのタイミングで、どのような目的、どのような点を強調したらよいのでしょうか。今回は、当社で実施したケースについてご紹介いたします。同じ『デザインシンキング研修』を実施する場合でも対象者の状況やそのときの問題意識、必要な内容は異なります。細かいことですが、丁寧に設計して、有意義な研修にしていきましょう。(デザインシンキングに関してはこちらの記事をご覧ください。)


目次

入社直後(4-5月頃)の新入社員には、『物事をしっかりと見て(観察して)、考える』ことを中心に実施

入社直後の『新入社員』の方は、現場での経験がまだないので、実際の仕事や職場、会社の文化もわかりません(当たり前のことですが…)。よい点としては、「素朴で新鮮な目で仕事を見ることができる」点ですが、逆に、「仕事を理解するのに精いっぱいになりがち」ですし、「適応しようとする力が強く働きすぎる」傾向があります。

本当に入社したばかりの新入社員には、基礎的な『ビジネススキル』としてデザインシンキング研修を実施すると同時に、実際に現場に配属されたときに、「そこで起きている事象をよく観察する」こと、「そのときに先輩や後輩、お客さまなど『人がどのように考えているのか』、『なぜ、そのような行動をするのか』を考える」ことにより、手順を覚えたり、単なる「ものまね」のような表面的な理解だけでなく、自分なりに考えて、理解できるようになる方法をお伝えすると、より自律的なビジネスパーソン人生をスタートできるようになります(という意図で実施します)。また、新入社員という『新鮮な仲間』の目であらゆることをチェックすることで、現場にも様々な発見が出てくるのではないでしょうか。


少し現場を経験した新入社員(6-8月)には、『チームで意見を出し合う』方法を中心に実施する

早い会社では、5月頃に配属、6-8月には、『少し』職場を経験した状態になります。また、現場実習など、研修期間中であっても、一度、実習を経て、職場を『見た』状態になっていると思います。採用人数の多い会社では、同期がようやく顔見知りになった頃でしょうか。

右も左もわからない状態を過ぎたら、次に身につけたいのは、「チームで働く」意識です(チームワークと置き換えてもよいと思います。チームの一員として、チームに貢献する意識が必要です)。実際問題、多くの新入社員の方は、チームに貢献する意識は高く持っています。一方で、先輩社員に比べれば、当然、スキル・経験もないので、『どうやって、チームに貢献すればよいのか』、『どうやって、自分から積極的に意見やアイディアを伝えていけばよいのか』、その方法がわからない状態です。

この時期にデザインシンキング研修を実施する場合には、議論の進め方や方法、発想(Ideation)プロセスの中で、上手に意見を伝える方法、前向きに考えて前向きに発言する方法やアイディアの出し方を学ぶことが重要です。この時期、多くの新入社員が職場の中で「みんなで考える」ということにどのように加わって、貢献していくのか悩むところです。デザインシンキングで実施するブレインストーミング等の技法や会議の進め方を通じて、実際に職場で前向きでチームの役に立つ発言ができるようになることを目指して研修を実施します。

また、この時期は、新入社員の方にとっても、「そろそろ、職場に移る」時期になると思います(新入社員の枠組みよりも職場の枠組みの方が強くなる時期です)。そのタイミングで、あらためて、同期同士がコミュニケーションをとって、「前向きに話し合える」仲間になるように、「新入社員同士のコミュニケーション」をテーマに研修を実施する会社様もあります。部署は違っていてもやはり同期、困ったときは「少し事情がわかっている第三者(第2.5者?)というのは大切ですし、同じような悩みを共有する仲間は、大切にしたいものですね。


一通り仕事を経験した入社1年目 の後半(10-2月)には、『手を動かして試してみる』ことの重要性を中心に研修を実施

新入社員の方も1年経つと、様々な経験をしながら、少しずつ業務やその全体像を理解できるようになってきます(業種によっては時間のかかる業種も多いようですが…)。最初は上司や先輩に指示されたことを指示された通りに実施するだけだったものが、少しずつ任されてきたり、自分なりに考えて行動することが求められるようになってきます。

このタイミングで研修を実施する際に強調するのが『トライ & エラー』の重要性です。デザインシンキングの中では、『プロトタイピング』のプロセスに含まれるもので、小さく試してみて、それを修正しながら、よりよいものにしていくというプロセスを踏みます。

「勉強する」、「教えてもらう」時期を卒業して、『自分で行動する』ことが求められるときに、大きな壁となるのが、『実際に行動する』ことです。デザインシンキングの中には、『たくさん失敗しろ』という言葉があるくらい、とにかく早く行動して、早く結果を出して、そこから学んでカイゼンしていくという考え方が含まれています。だれでも、うまくいかないことは怖いことだと思いますが、「行動して、学ぶ」考え方を身につけることが役に立つ時期だと思います。


業務内容を十分理解したタイミング(入社2-3年目)では、問題の発見、正解のない課題に対して取り組む方法論としてデザインシンキングを学ぶ

入社して2-3年目になると職場で一通りに経験はして(一巡?)、自身の仕事や周囲の仕事も十分理解ができて、安定して働ける状態となってきます。このタイミングでは、通常業務を問題なく取り組むだけでなく、より自律的に活動して、自ら課題を発見して何らかの形で解決する力が求められてきます。

一方で、日々の業務に没頭して、「とにかくルールに忠実に日々を過ごす」生活をしていては、なかなか、業務を改善することはできません。このタイミングでデザインシンキング研修を実施するときは、あらためて、業務やそこで行われている『行動』に注目して、『何が課題か』を注意深く観察する方法、そこからアイディアを出して『解決策を考える』方法、そして、『少しずつ取り組んで改善していく』方法としてデザインシンキングを学んでいただくことが有効です。

また、入社後、ある程度、業務に慣れてきたタイミングで、「必ずしも答えがない(明確な正解があるわけではない)」ことに対して、自分なりに考えて時間をかけて取り組み、その成果を得る(できれば、よい成果を…)という経験は、その後のビジネスパーソン人生にとっても非常に重要になると考えられます。このような難しい課題に取り組むための方法論として『デザインシンキング』という方法論を学んでいただくことが有効です。


リーダーとしてチームを率いるタイミング(入社4年目以降)には、『人を巻き込む』方法としてデザインシンキングを学ぶ

業種、職種、会社によっても異なりますが、入社4年目を過ぎると後輩ができはじめ、そろそろ、『中堅』と呼ばれるようになってきます。この頃には、仕事もすっかり覚えてしまい、なくてはならない戦力になっていると思います。プレイヤーとして力をつけてきたら、次のチャレンジは『リーダーシップ』になります。

『リーダーシップ』と言っても、管理職になる / ならないということではなく、「様々な関係者を巻き込んで(力を合わせて)仕事をしていく力を身につける」という意味だと考えてください。このように捉えると必ずしも管理職になる / 後輩ができるということがなくても、仕事のゴールに向けて「関係者を巻き込み、(できれば気持ちよく)働いてもらって、しっかりと成果を出す」ためのリーダーシップは、この年次の方には必須のスキルだと考えられます。

この年次で実施するデザインシンキング研修は、『観察』、『発想』、『プロトタイピング』という一連のプロセスを学ぶと同時に、どのように実践するのか、どのようにファシリテーションするとこのような活動ができるのかをお伝えして、実際に、ご自身が職場で『リードしながら進める』イメージを持っていただけるような内容で実施します。


『デザインシンキング』研修は同じでもしっかりと目的をもって、それぞれのタイミングに必要なスキルに重点を置きながら進めることが重要

今回は、最近いただく『デザインシンキング研修を若手層に実施したい』というご要望について、それぞれのタイミングでどのような意図をもって実施するケースが多いのかについてご説明いたしました。実際には、一概に、「このタイミングにはこれ」と決まるものではありませんが、若手層に向けてデザインシンキング研修を実施する際の参考にしていただければ幸いです。当社では、受講者や研修の目的に合わせて、研修内容やお伝えする内容などもっとも効果的なものになるよう設計して研修を実施しております。研修実施の際に、悩む点がありましたら、ご相談ください。一つ一つの研修が有意義で効果的なものになるようサポートさせていただきます。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

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