デザインシンキングとロジカルシンキングの違いは?その他の思考法との違いも解説

課題解決に活用できる思考法には、さまざまな種類があります。

何を起点として思考するかによってアウトプットが大きく異なるため、まずはそれぞれの思考法について理解を深め、適切に活用することが大切です。

よく知られている思考法のひとつに、ロジカルシンキングがあります。ロジカルシンキングは、デザインシンキングと同じ課題解決のための思考法ですが、どのような特徴があるのでしょうか。

今回は、デザインシンキングとロジカルシンキングの違いと、その他の思考法との違いを解説します。

目次

1.デザインシンキングとロジカルシンキングの違い

デザインシンキングとロジカルシンキング(論理思考)は、いずれも課題解決のための思考法ですが、発想の起点が大きく異なります。

デザインシンキング:ユーザー視点

ロジカルシンキング:課題や事象そのもの

デザインシンキングは、デザイナーの思考のプロセスがもとになった思考法です。デザイナーは、ユーザー視点で、どのような商品が求められているのか、また、商品によってユーザーのどのような悩みを解決できるのかを考えます。その視点をデザイン以外の分野にも当てはめて課題解決を目指します。

一方のロジカルシンキングは、物事を体系立てて整理する思考法です。課題を細分化して、各部分を個別に解決すると課題全体が解決するという考え方がもとになっています。

課題や事象そのものにフォーカスし、要素ごとに分解したうえで体系的に整理するのがロジカルシンキングの大きな特徴です。MECE(漏れなくダブりなく)や、So What?(だから何?)/ Why So?(それはなぜ?)などの基礎手法を繰り返して、本質的な課題解決を目指します。


2.デザインシンキングとクリティカルシンキングの違い

クリティカルシンキング(批判的思考)のベースとなる思考法は、ロジカルシンキングと同じです。そのため、デザインシンキングとロジカルシンキングの違いを押さえておけば問題ありません。

クリティカルシンキングは、構造的に考え、論理的に正しい課題解決を目指すというロジカルシンキングのベースに、「物事の妥当性」という視点が加わっているのが特徴です。

「クリティカル(批判的)」というネーミングから、「相手の考えを批判する思考法」と誤解されがちですが、それは正しい理解ではありません。

論理的に導き出された仮説に対して、「本当にそれは正しいのか?」「そもそもの問題は別なところにあるのではないか?」と批判的な視点を持つことで、ロジカルシンキングでは見つけられない新たな課題を掘り下げることができます。

論理的に正しいことを目指すロジカルシンキングでは、課題や論理の妥当性については考慮しきれないことが多くあります。ロジカルシンキングの弱点を補ったのがクリティカルシンキングといえるでしょう。


3.デザインシンキングとアート思考の違い

アート思考は、自由な発想で課題解決を目指す思考法です。「自由な発想」が思考のベースになっている点においてはデザインシンキングと似ていますが、デザインシンキングがユーザー視点での課題解決を目指すのに対して、アート思考はアーティストの思考が視点になっているのが大きな違いです。

デザインシンキングや、論理をベースとするロジカルシンキング・クリティカルシンキングは、一定の枠の中で課題解決を目指すことになります。思考のベースとなるユーザー視点や課題・事象をもとに思考することで、早く課題解決に近づけますが、発想の飛躍は起こりづらいという弱点があります。

イノベーションには、常識を覆すような大胆な発想が欠かせません。既存の枠組みを取り払ったアート思考は、より独創性やオリジナリティのあるアイディアを生み出せる可能性を秘めています。これまでの、「ベースとなるアイディアの延長上で考える」思考法では、発想が飛躍しないという問題意識から生まれた思考法といえるでしょう。


4.それぞれの思考法の活用方法

ここまでご紹介した4つの思考法には、それぞれ適した活用方法があります。具体的に見ていきましょう。

デザインシンキング

デザインシンキングは、ユーザー視点をベースにした思考法です。そのため、すでに存在する商品やサービスを、ユーザー視点で改善するのに向いています。

デザイナーや開発者目線の商品開発は、ときにユーザーのニーズと大きくずれてしまうことがあります。近年話題になっているオーバースペック(機械などに必要以上の機能を付けてしまうこと)も、ユーザー視点の欠如が要因のひとつです。

開発力が高い日本のメーカーは、機能の数を増やし、性能を高めることで商品の価値を向上させてきました。しかし、現代のユーザーは、必要最低限の機能が付いている商品を、そこそこの値段で購入することを求めている場合も多いのです。

海外の新興メーカーは、既存の技術をベースに必要な機能だけを搭載した商品を、日本のメーカーとは比べものにならないくらいのスピードで開発・販売します。

デザインシンキングは、ユーザー視点で創造性を高めるだけでなく、ユーザーのニーズをとことん深掘りし、本当に必要とされているものを最短で市場に流通させるうえでも大いに役立つでしょう。ビジネスのスピード感は、グローバルな競争社会を生き抜いていくために欠かせない要素です。

ロジカルシンキング

ロジカルシンキングは、自分の思考を構造化して相手にわかりやすく伝えられるのがメリットです。そのため、プレゼンテーションや交渉に活用するのがおすすめです。

また、大きな課題を要素ごとに分解して、それぞれの要素の課題解決を目指すという特徴から、複数の要素が複雑に絡み合った課題ほどロジカルシンキングの基本手法が役立つでしょう。

MECE(漏れなく・ダブりなく)の思考で課題を細分化・セグメント化し、 仮説に対して、So What?(だから何?)/ Why So?(それはなぜ?)と疑問を投げかけて課題解決の精度を高めていきます。

また、論理的に考えることで無駄なプロセスを削減し、生産性を向上させることも可能です。

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングは、さまざまな立場や視点で考えられるのが大きなメリットです。

いい意味で仮説を疑い、「もっと別な見方があるのではないか?」「それは何を意味するのか?」と考え直すことで、本質的な課題解決を目指せます。視野が広がり、理解が深まる思考法といえるでしょう。

近年、クリティカルシンキングの重要性が高まっているといわれています。その理由のひとつが、不確定要素の増加です。技術の進歩だけでなく、人やお金の動きが非常に速くなり、これまでのように数年先の未来を見越して計画を立てることが難しくなっています。

従来のセオリーが通用しなくなったときに必要とされるのが、新しい視点です。クリティカルシンキングによって、それまで見えていなかった新しい事実が見えたり、理解が深まったりします。不確定要素が高い課題や、ロジカルシンキング(論理思考)で解決できなかった課題に対して、クリティカルシンキングを活用してみましょう。

アート思考

アート思考は、開発者の内なる欲求や人々の想像力が思考のベースです。既存のアイディアや枠組みにとらわれない思考で、これまでにない飛躍したアイディアの創出が可能になります。そのため、ゼロベースで発想する必要があるクリエイティブワークに活用するのがおすすめです。

新しいものを創造するだけでなく、既存の思考の延長ではうまくいかないと感じたときにもアート思考が役立ちます。


5.課題解決のポイントは適切な思考法を用いること

課題解決の方法は、ひとつだけとは限りません。また、「これが正解」と思える解決法にたどりつくまでに時間がかかることもあるでしょう。

ビジネスにおいて時間は資産です。日々の限られた時間の中で解決すべき課題は山のようにあり、より効率よく課題解決を行うためには適切な思考法を用いることが重要です。

いくつかの思考法を試してみて、アウトプットを見ながら別の思考法に切り替えたり、組み合わせたりしてみてもよいでしょう。柔軟な発想が、考える力を高めることにつながります。

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