『デザインシンキング研修』に何を求めるべきか?

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「最近、『デザインシンキング研修』ってどうですか?」

私は研修企画や講師の他に、パートナーである研修ベンダー様の窓口も担っております。そのため、パートナー企業様がクライアント企業様に弊社コンテンツのご案内を検討される際、様々なお問い合わせやご相談をいただきます。パートナー企業様との対話を通じて気づきや学びが多く、単に営業活動の枠を超えて貴重なお付き合いとなっております。

さて昨今、当社のデザインシンキング研修のプログラム内容について、パートナー様からお問い合わせをいただく機会が増加しました。また、プログラムの内容のみならず、「最近オーダーが増加しているか?」といったことについてもお問い合わせをいただきます。このことから、期の途中でもパートナー企業様とクライアント企業様の間で、デザインシンキングに関する対話が発生しており、マーケットで一定のニーズが起こっていることが想定されます。(デザインシンキングに関してはこちらの記事をご覧ください。)

当社は、お陰様でさる98日に創立10周年を迎えており、創立後の早い段階からデザインシンキング研修を取り扱っております。一貫して「慶応大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科」のプログラムを柱とし、細かい部分はクライアント様のご要望や物理的制限(時間や場所、開催形式)、講師の特性によりアレンジを加えております。このプログラムにおける重要なポイントは、「人間中心」。昨今のデザインシンキング研修のお問い合わせの背景にもこの「人間中心」の考え方が影響しているのではないかと考えております。

今回は、このような背景、そして2021年度上期にデザインシンキング研修を実施した際のクライアント様や受講者のリアクションについて、書いていきます。


昨今登場していた(している)ワードとその背景

昨今デザインシンキングに関連するワードの中で、登場回数が多いと感じるものを並べてみます(といっても、古くから存在するワードもありますし、「オーソドックスなワードであるものの、最近また登場機会が多いようなもの」も含みます)。「DX」、「両利きの経営」、「イノベーション」、「15%ルール」、「デジタル〇〇部(部署名)」、「アジャイル」、「Howではなく、WhyWhat」、「今までのやり方じゃダメなんだよ!」・・・書店に並んでいた(並んでいる)平積みの書籍や、SNSの広告等、お心当たりがあるのではないでしょうか?

急速かつ大幅に規模を拡大する企業が出現し、そこにSDGsといった環境に関する考えの変化が加わり、さらに全世界的なコロナ禍と、世の流れが「早く、速く、大きく」変化しているのが昨今のビジネス環境であり、その環境下で先ほど例示したワードが生まれ、流通しております。

大きく規模を拡大した企業を眺めると、一見すると「AI」や「RPA」といった、あたかも「機械に大きくシフトして効率的な活動をしている」印象を持ちがちですが、実はその裏には「人間中心で見て・考え・共感しましょう」、「素早く作って、素早く失敗し、サイクルを早く多く回しましょう」といったデザインシンキングがもつ特徴的な性格が窺えます。むしろ人間中心の考え方の上で、AIを上手く活用している、という順番なのかもしれません。このような相性の良さが徐々に理解されはじめ、DX推進、新規事業創出の活性化を目指す企業様において、デザインシンキングが改めて脚光を浴び始めたのかもしれません。


『デザインシンキング研修』の導入状況とその次の『打ち手』

ひとくちにデザインシンキング研修を検討されているクライアント様が増加傾向といっても、様々なパターンがあります。以下、いくつかご紹介します。

①既に導入済みで、対象となる受講者の年齢層・役職層を検討:
いち早くデザインシンキング研修を導入されている企業様はこのパターンです。実はパートナー企業様経由以外のクライアント企業様、つまり当社における直販営業の場で「もうデザインシンキング研修はいいです(やめます)」といったお声はほとんどありません。むしろさらに推進するというご意向のもと、以下のような議論になっています

  • 入社何年目から習得させるべきか?早いうちの方がよいのではないか?
  • 頭の中が凝り固まり始める年次(中堅層)に受講させたい
  • 部下がデザインシンキング的に変化しているのに、肝心の上司がまだ「失敗はダメだ」とか言っているようでは意味がない。管理職クラスにこそ必要だ

②対象となる部門の拡大を検討:
こちらは「年次」ではなく、部門という観点です。これまで、「デザインシンキングはおもに商品企画や、R&D部門、システム開発部門が身につけるべきことだ」という考え方をお持ちの企業様で起こっている傾向がこのパターンです。 

  • 働き方の改革を本気で進めたい。いわゆる内部部門も受講対象として、社内の働き方に真剣に目を向け、社員を「ユーザー」ととらえて制度や仕組みを変えたい
  • 決まった事を決まった通りに確実にやり遂げる技術部門。果たしてこのままでよいのか?アイディアの出し方を手法として学びたい(学ばせたい)

③もはや「基本」の考え方として、とにかく「全社」に早く広めることを検討:
元々デザインシンキングを重視しており、特定の年次や部門を対象として研修を実施してきたものの、基本的な要素だけでも素早く全社に伝播させたい、というパターンです。「とにかくスピード感をもって、全社に考え方を広げたい、ということから、「(当社の)デザインシンキングのe-learningだけでも導入したい」といったお声をいただいております。

④新たに学ぶ(学ばせる)ことを検討:
まさにパートナー企業様がクライアント企業様と対話され、「期の途中でも」と導入に向かっている企業様はこのパターンです。新たにデザインシンキングを重要と考え始めた企業様もあれば、「元々分かっていたのだが、意思決定に時間を要した。ようやく(意思決定者に)分かっていただけた」というパターンもあるようです。


「デザインシンキング研修での『学び』を整理して考えるとわかること」

前述のように当社のデザインシンキング研修は「慶応大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科」のプログラムを柱としております。この研修で得られる学びを抜粋すると、以下の通りです。 

  • Yes,andの心構え・・・新しいことに取り組む際に、決して侮れない考え方です
  • 対象の無意識の動きまで細かく観察し、Insightを得ること・・・ニーズ起点で新しいことを始める際に有効です
  • 発想・・・アイディア出しにおいて発散と収束を明確に分けて、途中で評価を挟まずに、なるべく多様なメンバーでとにかくアイディア出しに集中します
  • プロトタイピング・・・「素早く作って、素早く失敗する」

確かに最近特に注目される取り組みが学べるようなプログラムですね。


まとめ – 今、このタイミングで学ぶべき『デザインシンキング』の本質

実は私たち自身、「もうデザインシンキングはオワコ・・・とまでは言いませんが、古いコンテンツなのではないか?」と考え始めておりました。しかしそれでもここまでニーズが途絶えることがなかったという事実と、さらに昨今の世の状況を踏まえ、デザインシンキングがさらに必要とされているのかもしれない、と考えるようになっています。

研修後の受講者のリアクションは前述のように「目から鱗が落ちた!」、「ハッとした!」ということが多いようですが、デザインシンキングのポイントは「人間中心」。何もビックリするような奇抜な考え方なのではなく、人間を中心に考えようという、極めて自然でシンプルなことを大切にしていこうという考え方です。全てのビジネスの場面で使えるスキルではないのかもしれませんが、是非多くの皆様に「一過性の流行」ではなくベースの考え方を知っていただき、活用いただきたいなと思います。

参考図書:前野隆司 編著、『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方』、2014年、日経BP

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株式会社アイディアポイント
企画開発部

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