デザインシンキングにペルソナが重要な理由は?基礎から活用法まで徹底解説

デザインシンキングにペルソナが重要な理由は?基礎から活用法まで徹底解説

ペルソナは、ある商品・サービスの典型的なユーザー像のことを指します。

しかし、ターゲット層との違いが認識されていないケースや、「ペルソナは妄想のユーザー像である」などの誤解もあり、うまく活用されていないことが多いのも現状です。

デザインシンキングにおいてもペルソナは重要な意味を持ち、正しく設計できれば自社の課題解決が大きく前進します。

今回は、そもそもペルソナとは?という基礎知識から、デザインシンキングにペルソナが重要な理由や活用法まで徹底解説します。ペルソナを通じて顧客理解を深めるのに、ぜひお役立てください。  

目次

1.そもそもペルソナとは?

ペルソナは、もともと「人格」を意味する言葉です。
マーケティングにおいては、自社の商品・サービスの典型的なユーザー像を指します。ユーザー像をリアルにイメージすることで、営業やマーケティング戦略の最適化をはかるのが目的です。
健康サプリメントを販売している企業であれば、次のようなペルソナ(架空の人物像)が設定できます。  

名前:手嶋あおいさん
年齢:37
性別:女性
住所:東京都世田谷区(マンション住まい)
職業:Webデザイナー
雇用形態:自営業
年収:300万円
家族構成:43歳の夫(会社員)、5歳の子供(男の子)
悩み:最近、パソコンを見ていて目が疲れると感じることが多くなった。
子供が生まれてから自分のことに構う余裕がなく、40歳を前にして身体のメンテナンスの必要性を感じている。家族のためにも心身ともに健康的に過ごしたい。

ターゲットとペルソナの違い

マーケティングの分野でよく使われる『ターゲット』は、「30代後半、都内在住の女性」のような集団を表したものです。商品やサービスを「誰に向けて売るのか」を決めるために必要で、コンセプトを考える際に役立ちます。

対してペルソナは集団を指すのではなく、設定が細かく決められた架空の人物像です。ペルソナを設定することで、ターゲットからは見えてこない顧客の潜在的な悩みやニーズを深掘りできます。その結果、顧客のニーズに沿った商品やサービスの開発につながるのがメリットです。


2.デザインシンキングにおけるペルソナの重要性

ターゲットとペルソナにはそれぞれ異なる役割があるため、一般的なマーケティング活動では、どちらも設定する必要があります。一方で、デザインシンキングにおいては具体的な行動やそのときの感情を重視するため、ターゲットよりもペルソナを重視します。

デザインシンキングは、オブザベーション(観察)アイディエーション(発想)プロトタイピング(試作)のプロセスを行ったり来たりしながら、アイディアを出していくのが特徴です。

オブザベーションのフェーズでは、観察対象者の悩みやニーズを深掘りする必要がありますが、そこで役立つのがペルソナです。

具体的な人物像であるペルソナを設定することで、観察力・共感力が高まり、デザインシンキングのプロセスに入る前に、観察対象者の悩みやニーズについて仮説を立てることが可能になります。仮説を立てた状態でオブザベーションを実施することで、より深く相手を理解できるようになるでしょう。

また、ペルソナを設定することで関係者の間に共通認識が生まれるのもメリットです。

デザインシンキングにおいて、ターゲットのみを設定するとどうなるでしょうか。例えば、ターゲットを「30代後半、都内在住の女性」と設定した場合、チームメンバーがそれぞれ思い浮かべる人物像に差が出てしまいます。アイディア出しに移ったときに、想定される顧客のニーズや悩みにもズレが生じるでしょう。

架空の人物像であるペルソナを関係者全員で共有することで、「誰に向けて考えるのか」というスタートの部分がブレにくくなります。デザインシンキングのその先の工程においても、常に「ペルソナ」という共通理解を軸に進んでいくため、作業効率を高めることが可能です。


3.ペルソナの作成方法

ペルソナは、次のような手順で作成します。ペルソナは架空の人物像ですが、妄想でつくるのではなく現実に即した形で設定するのがポイントです。  

1.情報収集

まずは、情報収集を行います。ペルソナは架空の人物像ですが、「こうあってほしい」という願望でつくらないよう注意しましょう。

ペルソナを設定する目的は、顧客の潜在的な悩みやニーズを深掘りすることです。より現実的なペルソナ設定をしなければ、潜在的な情報は見えてきません。

事実をベースにペルソナを作成するため、顧客情報などから客観的なデータを集めます。  

<収集するデータの一例>
年齢
性別
居住地
購入している商品・サービス

実際の顧客へインタビューを実施したり、営業担当者に意見を聞いたりすると、さらにペルソナが現実的かつ具体的になります。

2.ペルソナの基礎情報を決める

収集した情報をもとに、ペルソナの名前・年齢・性別などのアウトラインを決めます。その際に、収集した情報の中から共通点を探すことを意識しましょう。例えば、30代女性の顧客が多いのであれば、ペルソナも30代女性になるよう設定します。

年齢や性別といったデータのほかに、悩み・願望などの感情面も意識して分析しましょう。

3.シナリオを設定する

ペルソナが決まったら、ペルソナの思考や行動をシナリオに起こしてみます。

ペルソナがどのような思考で商品やサービスの購入に至ったのかをリアルにイメージしましょう。何を求め、何に悩んでいるのかといった感情面も考慮したうえで、具体的な行動に落とし込んでいくのがポイントです。

共感マップ・カスタマージャーニーマップ・ブレインストーミングなどのフレームワークを活用すると、シナリオが整理しやすくなります。

4.ペルソナが現実的かどうかチェックする

ペルソナは、現実の顧客に即していることが重要です。完成したら、ペルソナが現実的かどうか複数名でチェックしましょう。営業やカスタマーサポートなど、マーケティング以外の部署からも意見をもらうことをおすすめします。


4.デザインシンキングでペルソナを活用する方法

作成したペルソナは、デザインシンキングの各フェーズで活用できます。すべてのフェーズにおいて、複数人で意見を出し合いながら進めましょう。

アイディエーションのフェーズ

アイディア出しのフェーズでは、「ペルソナならこう考えるのではないか」と、相手の立場になりきって考えることができます。また、創出したアイディアがペルソナのニーズや悩みにマッチしているかどうかを確認するのにも役立ちます。

観察・フィールドワークのフェーズ

観察・フィールドワークは、ペルソナが最も活躍するフェーズです。ペルソナに共感し、ニーズや悩みを深掘りしましょう。自分がペルソナになったつもりで共感するのがポイントです。

プロトタイピングのフェーズ

アウトプットのフェーズであるプロトタイピングでは、ペルソナが感動するようなアウトプットをイメージすることが大切です。


5.ペルソナを活用する際の注意点

最後に、ペルソナを活用する際の注意点をご紹介します。

ペルソナが架空の人物になっていないことを確認する

ペルソナをベースとしたデザインシンキングを成功させるには、ペルソナが「本当に存在していること」が何よりも重要です。思い込みや願望でペルソナを作成していないことを何度も確認してください。

相手をペルソナに当てはめようとしない

観察対象者を都合よくペルソナに当てはめてしまうのも、ペルソナ作成でよくある失敗例です。
オブザベーションのフェーズでは、先入観を持たずに相手をじっくり観察する姿勢を持つことを意識します。仮説はひとまず横に置いておき、客観的に観察したことを優先します。

ペルソナは適宜修正する

デザインシンキングの過程で、当初設計したペルソナにブレが出てくることがあります。その場合は、仮説にこだわらず、ペルソナを適宜修正してください。事実をベースにペルソナを改善していくことで、より実用的なペルソナに近づいていきます。


6.ペルソナを活用して顧客との距離をぐっと縮めよう

ペルソナは架空の人物ですが、できる限り実態に沿った形でつくることが大切です。

年齢や性別といった顧客データをもとに、カスタマージャーニーマップなどのフレームワークを用いてペルソナの行動や思考を分析すると、より具体的なペルソナが設定できます。

実在する顧客に限りなく近いペルソナは、デザインシンキングの各フェーズで大いに役立ちます。また、ペルソナ作成をきっかけに、自社の顧客を見つめ直せるというメリットもあります。

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