アイディアポイント岩田です。現在、『イントレプレナー』と呼ばれる『社内で新しいことをはじめる人たち』に焦点をあてて、その人たちはどんな人たちで、どんなきっかけで新規事業をスタートして、どんな苦労を乗り越えて、どこに向かっているのかを調べています。今回は、インタビューする中で感じた彼 / 彼女らが、「とてもその人らしいキャリア」を歩んでいるように見える理由について解説(おこがましいですが…)していきたいと思います(イントレプレナーについては、こちらの記事をご覧ください。)
イントレプレナーは『自分らしい』キャリアを築いている
今回のインタビューでとても印象的(意外?)だったのは、ほとんどの人が『自分のビジネス』、『自分のチーム』、『自分の所属する会社(本体)』を深く愛していて、とても感謝していることでした。そして、明確にお話しする / しないの差はあっても、全員が『自分自身のキャリア』を『気に入っている』点でした。
「自分がやりたいことやっているから、それは楽しいだろう?」という意見もありそうですが、社内で事業を立ちあげることになった経緯はそれぞれで、業務としてアサインされた人もいるし、漠然と新しいことやりたいなと思っていた人が、たまたまきっかけがあって事業責任者になったという人もいるし、詳しく話を聞いてみれば、『やらなければいけな仕事 / 雑用』も多く、仕事としては、多くのビジネスパーソンよりも大変なのではないかという状況で、それぞれに課題や悩み、苦労?、不満?を抱えつつも、基本的には明るく、前向きに、『自分自身の人生』を歩んでいるのが非常に印象的でした。
『自分らしい』キャリアを歩むために必要な3つの行動
なぜ、彼 / 彼女らは、『自分らしい』キャリアを築くことができているのでしょうか?今回は、3つの観点から『イントレプレナー』というキャリアと『自分らしい』キャリアの関連について考えていきます。尚、『自分らしい』キャリアについては、「キャリアショック―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?」(東洋経済新報社、高橋 俊介 )という書籍を参考にして、考えていきたいと思います(比較的古い本ですが、素晴らしい本ですので、キャリアについて一度、きちんと考えたい方にはお勧めです)。
慶應のキャリアラボが実施した2400人規模のアンケート調査と60人以上の個別インタビューにより、「自分らしいキャリアを切り開いてきた」と感じている人は3つの行動をとっているという結果が出ています。これら3つの行動と『イントレプレナー』というキャリアとの関係を見ていきましょう。
1.主体的ジョブデザイン行動
ひとつめは、「自分らしく仕事をする」という行動をとっているというものです。これは、仕事をするときに、言われたことをそのままやるのではなく、何らかの方法で、「自分なりの工夫」をするということです。
もう少し、項目を細かく見ると、『自分の価値観やポリシーを持って仕事に取り組んでいる』、『社会の変化、ビジネス動向について、自分なりの見解をもっている』、『部署・チームを超えて、積極的に周囲の人を巻き込みながら仕事をしている』、『仕事の進め方や企画を立てる上で、今までの延長線上のやり方ではなく、自分なりの発想を持って取り組んでいる』、『自分の満足感を高めるように、仕事のやり方を工夫している』などのような行動をしながら、『自分なり』にしているというものです。
これをイントレプレナーという観点でみると、非常に納得がいくのではないかと思います。社内起業では、リーダーとして『自分なりのビジョンや達成したいこと、大切にしたいこと』を改めて考え、言語化しなければならないですし、社内を説得するためには当然、『世の中に対する自論 / 持論』がなければ社内を説得できません。今回のインタビューでも非常に印象的だったのが『チーム』の大切さ、協力・支援してもらえることの大切さは全員が強調しているところです。また、イントレプレナーは社内でも『その人なりの発想』が評価されて任されていますし、実際に、インタビューを聞くと、『こんなちょっとしたことなんだけど、すごく嬉しいんですよ(例えば、たまたま、電車で乗ったときに隣の人が開発したアプリを使っていた、パートナーから止めないでくれと声をかけてもらった等)』など、ビジネススタートのタイミングで、自分自身、チームにとって「自己満足」であってもうれしい瞬間を大切にしているというエピソードを何度も聞いています。
彼 / 彼女らの『主体的ジョブデザイン行動』力(という言葉があれば)は、非常に高いのではないかと感じます。
2.ネットワーキング行動
これは人間関係(ネットワーク)を築くための行動です。きちんと将来のために、人間関係に時間を割いて、行動しているということです。
もう少し具体的に見ていくと、『新しいネットワークづくりに常に取り組んでいる』、『自分のネットワークを構成する個々人が、どんなニーズを持っているか把握し、それに応えようとしている』、『自分の問題意識や考えを社内外のキーパーソンに共有してもらうようにしている』という項目が並びます。
これは『普段から上司や職場の人間関係を大切にして仲よくしておけよ』という内容と少しニュアンスが違っていて、『自分なり』の人間関係(ネットワーク)を築いておいて、その人たちのことをよく理解したり、自分がどんなことを考えているのかをきちんと発信して、『何かあったら声をかける / 声をかけられるような』関係を作っておくという意味です。『仕事』や『チャンス』は人を経由して受け取ることがほとんどです。そのためにも、社内外に『仲間』を作っておいて、『関係』を作っておくことが『自分らしい』キャリア形成につながる行動だということです。
イントレプレナーへのインタビューからもこの点に関しては、繰り返し話題になります。それぞれタイミングや内容は異なるものの「人との出会い」が、ビジネスのスタート、成長に大きな影響を与えています。また、彼 / 彼女らに共通するのは、「応援される人」だということです。
いくつか印象的な点では、『社内で起業するのは大変ではありませんか?』という質問に対して、ほとんどの人は、『もちろん、それまできちんと働いていたことが前提になるけれども、ある程度の年数、きちんと働いていていれば、当然、知っている人も増えるし、応援してくれる人もいますよね』と答えています。このように、彼 / 彼女らは、当たり前のように社内のネットワーク(公式、非公式のつながりをたどって、話ができる人がいる)を作っているようです。決して『顔の広い人』というわけではないものの、仲間づくりができているようです。
社外に関しても同様で、それぞれ、相談できる人がいるようです。一方で、ここは多くのイントレプレナーが課題に感じているところのようで、ビジネス上のネットワークは比較的、短期間に築くことができる一方で、中長期的な観点での「ネットワークづくり」に関しては、それぞれ試行錯誤されているようです。
こちらは、「事業を創る人の大研究」から抜粋したものですが、イントレプレナーに必要な『支援』について記載したものです。こちらを見ると業務に関しては、『社外で同じような仕事をしている』人とのネットワークは必要で、実は、業務的にはこの『社外で同じような仕事をしている人』の中で、『自分より少し先を行っている人からのアドバイス』が一番、有用だという内容も出ています。
イントレプレナーにとって、社外のネットワーキング行動は、今後の課題のひとつになるのかもしれません。
3.スキル開発行動
これは、自分自身で『能力開発する』ために何らかのアクションを行うというものです。きちんと自分で現状を把握して、自分なりに能力開発を行うための行動をしているというものです。具体的には、『今後どのようなスキルを開発していくか、具体的なアクションプランをもっている』、『スキル・能力開発のために自己投資をしている』というものです。
今回、イントレプレナーのみなさんにインタビューした内容では、以下のようなことが言えるのではないかと思います。
最初は、「そんな悠長なことは言っていられないので、必要なことは、全部、勉強してなんとかする」。これが本音なのではないかと思います。インタビューしていても、正直なところ、『どれだけ能力高いんだ』と思います。技術者や専門職でも、『読んだことなかったけど、法律は読んでなんとか理解した』、『技術のことはわからないけど、誰かがプログラム書かなくてはいけないので、知り合いに頼んで教えてもらって、死ぬ気で書いた』、『できる / できないではなくて、やらないと経営会議ができないから、必要な経営分析は本を見ながらなんとかした』とみなさん、ものすごいパワフルです(基本的な能力も非常に高いんだろうなと)。
一方で、ある程度、ビジネスが立ち上がるとそれぞれ、必要な能力を自覚して、自ら学んでいるように見えます。「あらためて、組織や人をマネジメントするというところが今後の課題になりそうなので、コーチをつけた」、「このままでは自分がネックになってビジネスが伸びなくなると思ったので、最近は、外に出て経営者向けのセミナーに出たりしている」、「最近、自分の世界が狭くなっていないか心配なので、外部のセミナーを聞くようにしている」など、ご自身のビジネスに必要なことは何かについて非常にシビアに考えられているようです。
このように『スキル開発行動』に関しては、どちらかと言えば、『サバイバル式(生き残るために必要だから)』という発想で取り組んでいる人が多いように感じますが、現実的かつ有効な手段(ある意味、直接なアプローチ)なのではないかと思います。一方で、この辺りは、まだ、『定石』や『定番』のようなものが存在していないので、個人がそれぞれの問題意識で取り組んでいるような印象もあります。
イントレプレナー「自分らしいキャリア」を築いてく理由
今回は、イントレプレナーという『仕事』と『自分らしい』キャリアの関係について考察しました。イントレプレナーという選択は、『自分らしい』キャリアを築くための行動を「しないとやっていけない」仕事だとも考えられます。
過去の経験が効かず、ロールモデルもいない中で、「主体的ジョブデザイン行動」、「ネットワーキング行動」、「スキル開発行動」なしで仕事を進めることは、ほぼ不可能なのではないでしょか。
彼ら / 彼女らにもともとその性質があったからイントレプレナーになったのか、イントレプレナーという状況になったからこのような行動が開発されたのかという点は、議論の余地が残りますが、イントレプレナーという仕事が『自分らしい』キャリアにつながることは間違いなさそうです。
これまで、『社内で新しいことに取り組む』という選択肢を意識したことのない方は、一度、『イントレプレナー』というキャリアも選択肢として検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
現在、私たちは、「社内で新しい事業を起こす人(=イントレプレナー)」にインタビューを進めています。彼ら/ 彼女らについて、『聞いてみたい』ことや『興味のある』ことがありましたら、ぜひ、お問い合わせください(どんな切り口でまとめようか試行錯誤中…)。
本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹