アドバイスする人へのアドバイス

アイディアポイント岩田です。新規事業提案制度、新規事業関連のプロジェクトに関わっていると年末、1月末、3月末に向けて社内の最終報告が多くあります。

直近では、来年度の取り組みの準備として起案者でも意思決定者でもなく、起案者に「アドバイスする立場」の人に向けてフィードバックの観点やアドバイスの方法について話してほしいという依頼もいただいています。今回は、その際にお話しした『アドバイスする人へのアドバイス』を書いていきます。

今回は、心構えや態度、言い回しに関しては書きません。これはこれで大切ですが、別の機会に書こうと思います。ということで、早速本題です。


目次

アドバイス / フィードバックは、言いたいことよりも、『言うべきこと』と『相手が聞きたいこと』

多くの場合、アドバイス / フィードバックするのは起案者よりも上席の方が行うことが多いでしょう。まず、心に留めておいてほしいのが、自分が言いたいことよりも、『言うべきこと』と『相手が聞きたいこと』を話すべしということです。

普段の関係の延長線で気軽に「とりあえず」思ったことを言いたくなりますが、そこはぐっとこらえて、求められていること、役割に徹することを意識してください。

もうひとつ、意識していただきたいのは、アドバイス / フィードバックする方はあくまで『第三者』だということです。内容に関する一義的な責任は起案者にありますし、最終的な責任は、意思決定者にあります。なので、アドバイス / フィードバックする人は、比較的自由に何を言っても構いませんが、最終的にその案に責任をとることはできません(取らなくても構いません)。そのことはよく理解しておいてください。

ちなみに、言いたいことはもちろん言って構いません。これまでの経験や人柄を買われてアドバイス / フィードバックする立場にあるのでしょう。なので、できるだけ多くアドバイス / フィードバックする方が親切です。

アドバイス / フィードバックの目的は『前に進める』ことなので、「〇〇さんからアドバイス / フィードバックをもらって検討が進みました / 進められそうな気がしました / 加速しました」と言われるようになることをゴールにしていれば、最終的には何をお話しされても大丈夫です。

それでは、実際にアドバイス / フィードバックの場面でするべきことをこの後、書いていきましょう。


打ち合わせの最初に必ず『この打ち合わせの目的、ゴール』を確認する、話してもらい、確認する

アドバイス / フィードバックは対面、オンライン / リアルタイムで行うことが多いと思いますが、最初に必ず『この打ち合わせの目的、ゴール』を確認しましょう。ここがはっきりしないと的確なアドバイス / フィードバックができません。特に社内だと「なんとなく」話が始めることが多いのですが、面倒に感じても必ずお話ししてください。

ポイントは、アドバイス / フィードバックを『受ける側』がきちんと言葉にして話すことです。意外にも、明確に話せないことも多くあります。例えば、「とりあえず何かアドバイス / フィードバックがほしい」、「気がついたことがあれば言ってほしい」などがその典型です。

そのような場合は、アドバイス / フィードバックする側は下記の点を確認しましょう。

  • 現在、何をどこまで検討しているのか(現状の確認)
  • 困っている点 / 止まっているところは何か
  • 本人は気がついてなくても気になるところはあるか

その上で、この打ち合わせのゴール、目的を定めます。経験的には下記の点を合意するとその後の議論がスムーズになります。

  • この打ち合わせで何らかの結論を出すのか、出さなくてもよいのか
    (アイディアがたくさん出て終わりでよいのか)
  • こうしたらよいのではないかという改善のアイディアが多くほしいのか、厳しく(批判的に)チェックしてほしいのか

上記を確認しながら、アドバイス / フィードバックする側は、どの立場でどのようなアドバイス / フィードバックするべきか確認します。


嫌がられても必ず『現在の検討内容、進捗状況』、『アドバイス / フィードバックして欲しいこと』の2点を自分で話してもらう

私がお客さまと打ち合わせをする際には、既に知っている内容だったとしても必ず『現在の検討内容、進捗状況』、『アドバイス / フィードバックして欲しいこと』の2点を自分で話してもらいます。

実は、結構な割合で「嫌がられ」ます。「もうわかっていることだし」、「自分がほしいアドバイス / フィードバックだけしてくれればいいんだよ」と思っています。

しかし、このプロセスは絶対に外してはいけません。その理由は3つあります。

1つ目は、アドバイス / フィードバックする際には、その前段 / 前提を正確に理解していないと具体的なアドバイスができないからです。マーケティングの方法にアドバイスがほしいと言われても、そもそも顧客像と提供価値が正確に定義、理解できていないとアドバイスはできないし、コスト構造についてアドバイスしてほしいと言われてもそれはビジネスモデルが決まっていないとアドバイスできません。往々にして、「〇〇がわからない」ときには、その前に問題があることが多いからです。

2つ目は、上記に関連して、『そもそも、スタート位置が間違っているのではないか』と感じることがあるからです。先日、会った議論では、『シニアの見守りサービス』をビジネスにしようという際に、その製品は『シニアが欲しいのか、買うのか』という問題があります。ここを解決せずに議論してもあまりその後の議論に意味はありません。「そもそも~」という議論は、聞かれたことに回答する形式ではなかなか出てこない議論なので、やはり、全体を知る必要があります。

3つ目は、アドバイス / フィードバックを行うためには、その人が本当にやりたいこと、ずらせないところを確認しておく必要があるという点です。多くの場合、新規事業のプランは、まだ、実績がないので、どれだけでも好き勝手にアイディアやダメ出しやコメントすることができます。しかし、アドバイス / フィードバックの目的は、起案者のアイディアをよりよくすることで、アイディアを台無しにしてはいけません。そのために大切なのが、その人のやりたいこと、核となるアイディアです。それを確認しないと実際にアドバイス / フィードバックができないです。

不要に感じられたとしても、必ず最初に『現状を話してもらい』、『わからないところは確認する』作業からスタートしましょう。


言うべきこと – 明らかな間違い、論理的な矛盾、与件を満たしていない点は必ず指摘する

それでは、『言うべき』こととは何でしょうか。私は、以下の3つを意識しています。

  1. 明らかな間違い : 明らかな間違いは指摘します。市場規模の大きさが明らかに大きい or 小さい。言葉の使い方(不正確な言葉の使い方、複数の意味に取れる使い方)等、誰が見ても明らかに間違いだと言えるものは必ず指摘してください。

  2. 論理的な矛盾、内容の不整合 : 明らかに間違いとは言えなくても、全体を見たときに、一貫性がない状況は多く見受けられます(そして、自分では気がつきにくい)。先日あった例では、日本で「中国の富裕層を呼び込んだサービスの提供」で贅沢な体験をと言いながら商品・サービスを見てみると「楽天ポイントサービス!」と書いてあったり、貧困解消を課題としたビジネスの収支計算を見てみるとどう考えても最低賃金で働くことを全体とした計算になっていたりと…客観的に見ていると整合が取れていないようなこともあります。その際にも、「間違っていないけれども、不整合に見える」と伝える必要があります。

  3. 与件を満たしていない : 不思議なことですが、提案のフォーマット、応募用紙等、指定のフォーマットや提案する際のルールが明示されているにも関わらず、それを無視する人も一定数います。おそらく、ご自身としてやりにくいので、もっと自分がやりやすい方法で作成するのだと思いますが、ここは指摘しなくてはいけません。誰でも同じですが、原則は自分が「話したいこと」ではなく、「聞きたい」ことです。きちんと与件を満たすような書き方をするようにアドバイスしましょう。

これらを指摘しておかないと『アドバイス / フィードバックする』人材としての質を問われるので、必ず指摘してください。これらは説明ができるので指摘しやすいと思います。すんなりと聞き入れてもらえないことも多いのですが、ここははっきりと指摘をして、修正するように促してください。

どのように修正したらよいのかは、必ずしも教える必要はありません(義務もありません)。基本的には起案者がやるべきことです。起案者が修正できるところまでアドバイスするのが親切です。私の場合は、起案者が「では、この後、自分の方で修正します」と言えるようになるまでお話しするようにしています。


聞かれたことに『回答する』 – それは、その場で考えるのだが… ノウハウとドゥハウ

言うべきことを言ったら、次は、聞かれたことに『回答する』ことになります。まずは、必ず最初に聞かれたことに「回答する」ようにしましょう。そうしないと、「はぐらかされた」、「回答してくれなかった」、「質問に質問で返された」と『あの人は不誠実だ』と言われてしまいます。何はともあれ、『まず、回答』と覚えておきましょう。

私が『回答する』ときに気をつけていることを下記にまとめておきます。

  • 先にできるだけ『結論』とその『理由』をわかりやすく話すようにする
  • 『正解がある』前提の質問には、必ず『正解がないことを前提にして答えると』とつけて回答する
  • 明確に、『正解を教えてください』と聞かれたときには、『それは誰にもわからない』と回答する
  • 同様に、『これであってますか』、『私はどうしたらよいですか』と聞かれたときは、『わかりません』、『それはあなたが決めることです』と回答しています
  • 「回答する」の中には、「僕にはわからない」、「この情報しかないと答えられない」、「それは、私に聞くことではない(あなたが考えることだ)」というのもありにしています

その上で、『自分だったらどうする』、『こうすればよいのではないか、考えられるのではないか』というアイディアを話します。あるいは関連する情報で関係のありそうなものを提示したり、過去の経験や聞いた話を提示して、『考える』サポートをすることを意識しています。この辺りは、もう少しノウハウがありそうなので、今度、時間があれば、まとめてみようと思います。


気がついたこと、言いたいことは、最後にまとめて話してあげるのが親切

最後は、気がついたこと、言いたいことをお話ししてください。ポイントは、「これは、指示命令ではなく単なる感想なので、全部、検討したり、真剣に回答を作ったりしなくてよいので気楽に聞いてほしい」と前置きしてからお話しすることです。

『アドバイス / フィードバックする』人材は、基本的にはこれまでの経験や人柄を評価されてアサインされているので、基本的には思ったことを全部、お話しして構いません。一方で、それが、起案者にとって「負担になる」のも気をつけなくてはいけません。

普段の業務だと上席からの業務命令は指示なので、必ず実行、回答しなくてはいけません。その習慣が出てしまうと、「はい、わかりました。きちんと検討します」となってしまいます。しかし、新規事業のプランは必ずしも正解があるわけではありません。上席であったとしても正しいかどうかはわかりませんので、一意見として聞く程度で構わないと思います(少なくとも、アドバイス / フィードバックする人は責任を負わないわけですから、聞く / 聞かないは起案者自身が決めることだと考えられます)。

ダメ出しはカイゼンのアイディアとセットで、ポジティブなこととネガティブなことは半々~ややポジティブな方が多いくらいを心がけてお話しするとよいでしょう。


最後は必ず『明るく前向きに送り出す』ことを意識する

意外にも最後は大切です。みなさんの中にもアドバイス / フィードバックを受けた後に、「元気がでる / 霧が晴れる」経験と「ドッと疲れる」経験があるのではないでしょうか。みなさんは、アドバイス / フィードバックをしたら、「元気がでる / 霧が晴れる」人になってほしいと思います。

私自身が意識して行っている工夫は以下のようなことがあります。ぜひ、みなさんも参考にして自分なりのスタイルを身につけてください。

  • 打ち合わせで「わかった」こと、「進んだ」ことを確認する
  • 可能な限りこの後の行動とそれがゴールにつながるイメージを話す
  • あらためて、この活動の意義、やりがいを確認する
  • 心配なことがあれば、話してもらう & できるだけ解決する
  • 最後は、期待(楽しみですね)、応援(がんばっていきましょう)、支援(いつでも連絡ください)で終わる
  • 締めは、明るく終わる

今回は、起案者に「アドバイスする立場」の人がアドバイス / フィードバックする際に意識することを書きました。書いてみると意外とノウハウの固まりなんだなとあらためて、認識しました。要望があったら、もう少しテクニック的なところもまとめてみたいと思います。本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。アドバイス / フィードバックは難しいですね。これからも私自身、しっかり修行していきたいと思います。

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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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