研修開発の現場から実況中継。研修の作り方、具体的に話し〼

アイディアポイント岩田です。3月も半ば、みなさん、忙しくお過ごしのことと思います。私たちも年度の終わりということで様々な研修の最終発表、最終報告回で有終の美を飾ろうとがんばっています。そして、来年度の計画…こちらも準備万端と言いたいところですが、細かいところを議論したり、具体的な活動を計画しながら4月からのスタートダッシュに備えています。

当社のメインビジネスではありませんが、新入社員向けに研修をやってほしいというオーダーもちらほらいただきます。その中で、「3時間でロジカルシンキングを教えてください」というオーダーをいただきましたので、これを題材に、研修をどのような段取りで、どうやって考えて作るのか書いていきたいと思います。ちなみに、「3時間でロジカルシンキングを教えてください」はイレギュラーな内容なので、当社パッケージにはありません。さて、どうしたものか… ここからスタートです。では、はじまり、はじまり…


目次

作業をはじめる前に、受講者の気持ちになって、その状況を想像?妄想?してみます

では、早速、プログラムを考えようかとなりがちですが、実は、いきなりプログラムは考えません。まずは、受講者の気持ちになってみます。そして、彼ら / 彼女らの悩み、困りごと、関心ごと、どんなことを学ぶとよい3時間が過ごせるかなと思いを馳せます。私の新人時代は、忘れもしない二十数年前、すっかり忘れました。思い出したり、そのときの気分になるのも大変ですね。

期待に胸を膨らませて入社、緊張した入社式を終えて、知らない言葉を聞いて、毎日、緊張しているのかな。同期と仲良くなったりしているのかな。そういえば、そもそも、朝、同じ時間に(しかも早い時間!)に同じ場所に行くだけでもすごい疲れていたかもしれない…等などです。

そう考えると、その会社にどんな気持ちで入社したのか、入社してどんなことを伝えられているのか、その前後でどんな研修をやっているのか、どんな性質の人たちが多いのか、気になりますね。この辺りは、担当者の方から細かく聞かなければ、いけません。

ところで、『ロジカルシンキング、3時間、アイディアポイント 岩田徹』ってどう映るんだろう?楽しそう?大変そう?いや、自分はロジカルだから今さらやらなくてよいでしょと思うのか、逆に自分は論理的じゃないから苦手だなぁと思うのか、どんな感想を持つのかなということも気になります。私の経歴を見るとどう思うのかな?好印象?悪印象?等など、気になることも多くあります。

こうやって、受講者が持つ『期待・ワクワクした気持ち』や『不安・モヤモヤした気持ち』を考えるところがスタートです。


最初に研修の目的、ゴールを設定します。実はここがノウハウで、適切な『落としどころ』を探します

最初に研修の目的、ゴールを設定しますが、ここを軽く考えてはいけません。

お客さまの企画書には、「ロジカルシンキングを身につけて、配属後、すぐに、実践できるようになる」と書いてあっても、それをそのまま目的、ゴールにしてはいけません。3時間で、正直、それは無理です(できるのであれば、教えてほしいところではあります…)。だって、3時間ですもの。それで全員が身につくことはないでしょう。

研修の企画書上、どうしても、「身につける」、「すぐに実践できる」となってしまいがちですが、そもそも、性質として論理的な人、そうでない人がいる中で、3時間で全員が論理的になることは非現実的ですし、どんな仕事をするのか決まっていない人が「職場ですぐに使える」ものを身につけるのも不可能です。職場ですぐに使えるためには、少なくとも職場とそこで取り組む仕事をイメージできないと使えるイメージは作れません。

ここから先は難しいところですが、受講者の状況、3時間という制約の中で、実際にできることのうち、受講者のみなさんにとって本当に大切なことは何かをウンウン唸って考えます。うーん、どうしよう…

と、今回、唸った結果、「ロジカルシンキングとは何かを知識として理解する」ことと、「それを使って、自分の考えをわかりやすく伝えらえるようになる」ことがよいのではないかということになりました(もちろん、こちらは、先方の担当者と議論した上の話です。ちなみに、他にも選択肢はあります。ここはノウハウです)。

ちなみに、私個人としては、以下の点を意識して目的、ゴールを考えています

  1. 目的やゴールはできるだけ絞る。少なければ少ないほどよい。あれもこれもは混乱の原因。今回で言えば、2つのみに絞るのがよいです。情報収集や思考の組み立てはバッサリ削除しています
  2. ここのタイミングだけは、「会社の都合」よりも「受講者」を優先します。彼ら / 彼女らが望むものというよりも、彼ら / 彼女らにとって本当に必要なものは何かという観点で考えます。今回の例で言えば、どんな職場に行っても、「わかりやすく伝える」スキルは彼ら / 彼女らの役に立つと私は考えたので、ここだけ残しました
  3. 受講者は『何ができるようになる』のか、それで『どんなよいことがある』のか、私が自分の言葉でスパッと説明できるようになる」まで考えます。今回のケースで言えば、『職場に配属されてから、「話が分かりにくいね」、「何を言っているか分からない」と言われることがなくなる」ことがゴールです。これだけで十分、この3時間の価値はあるのではないでしょうか

ここまで来たら、私としては、『一番の難所はクリアした』と感じます。あとは、作るだけです。


ここまで来たら、後は、作るだけ。まずは、研修を構成しまーす(気持ちは軽い)

この辺りは、当社社員のブログにて書いてあるので、詳細は、こちらをご参考にしていただき…。今回のブログではロジカルシンキング3時間のケースについて、具体的に説明していきます。

まず、最初と最後は大体、決まっているので、その時間を計算します。

当社の場合、最初の入り方は決まっています。研修の目的、ゴールの説明、プログラムの構成・スケジュール、講師自己紹介、アイスブレイクです。アイスブレイクは複数パターンあるのですが、今回は時間もタイトで新入社員の方なので、自身で研修の目標設定を書いてもらってそれを共有してもらことでよいでしょう。これで、全部で20分かな(実は、もう少しノウハウもありますが)

終わり方も当社の場合、大体、決まっています。今回は時間がないから最後は、まとめ、個人の振り返り(グループの共有はなし)、Q&A、講師からのメッセージで、20分かな。

大体、90分に一度、10分の休憩を入れるとして…休憩は1回ですね。私たちの研修では、休憩の度に、5分。最後に5分、バッファをとっているので、10分+5分+5分=20分ですね。

そうすると内容(ロジカルシンキング)は、180分-40分(最初と最後)-20分(休憩と呼び)=120分 です。一つのテーマで40-60分程度なので、全体としてはテーマ2つですね。

今回の目的とゴールから考えると前半はロジカルシンキングの基礎知識、後半は、わかりやすく話す技術とその練習ですね。これで大体の構成は決まりました。時間も内容も無理がないし、理解もしやすい内容になっていますね。よしよし、これで、研修設計書を書けば、一旦、頭の中ではできたも同然です。やることと備品も一緒にここで確認です(実際に書くところは省略します。これも当社のノウハウですね)。


さぁ、後は内容を考えて入れていくだけです。使えるものを使いながら研修プログラムを作っていこう!

ここから、パワーポイントをつくります。最初から順番に入れていきます。過去のスライドのうち使えるものは使っていきます。今回は、前半の基礎的な知識のところはモジュール化しているのでそのまま入れていきます。説明的なものは、何度もブラッシュアップしたものがわかりやすいので、それを使うのがベストです。

新入社員の方が理解しにくそうなところは、補足を入れていきます。が、今回はスライドに情報を入れるとかえって混乱しそうなので、口頭で補足していくことにします(当社では、研修設計書にメモを入れていきます)。

後半のワークは若干、工夫が必要そうです。簡単な説明の時間を除くとワークは、ふたつできそうです。ひとつは、そのまま使ってもわかりやすいものがあるので、もうひとつは、どうしよう?職場でよくあるケースを入れてみるかな等々、考えながらワークを選んでみました。

一旦、全体を流してチェックして、時間がタイトなところはないか、不自然なところがないか、理解しにくいところがないか、ここまでで一旦、チェックしておきます。

パワーポイントの作業時間はそれほど多くありません。どちらかというとそれまでの作業の方が時間がかかります。ここまで終わったら、休憩します。この休憩は重要で、必ず、休憩を入れて、頭を切り替えて、最後に客観的な視点からチェックするようにしています。ということで休憩!昼でも夜でも席を離れて、外の空気を吸いに外へ散歩にいきます。


最後は全体の流れをチェックして、最後に『新しい要素』、『おもしろ調味料』を加えて、はい、完成!!

さて、最後に客観的にチェックです。チェックのポイントは3つです

  • この内容で、研修の目的、ゴールが本当に達成されるのか?大丈夫か?
  • 客観的に見て、わかりにくいところ、つながっていないところはないか(実は、自分が書いているときには、主観的になっているので、意外とわかりにくいところが残っていることもよくあります)
  • 受講者は、この研修を受講して「おもしろいのか」、「知的な好奇心は刺激されるのか」、「受講後、思い出に残るのか」、「元気になるのか(明日からがんばろう!と思えるのか)」をチェックする

今回のケースでは、うーん、ちょっとおもしろ味が足りないなという結論になりました。説教臭いというか、現場って大変なんだろうなと伝わったりと…いうことで、後半のワークを変えることにしました。よく考えたら2本とも似たような内容になっていたので、1つにまとめて、「職場でする挨拶を論理的にしてね」ということにしました。すぐに使えて、そんなに難しくなく、イメージができますからね。

では、ふたつ目はどうしよう… 何か、難しくておもしろいもの… 全員ができて、でも、簡単にはできないようなものがいいなぁ…とここでノートを開き、20個くらい書いてみます。書いた内容は恥ずかしいので内緒にしますが、結果的には、『自分の好きな趣味について説明してください』といことにしようと思いました。その前で、『UNOの説明をしてください』という前振りをしておけば、講師も説明しやすいかなと思います。ゲームの説明、絶望的に下手な人はいますからね。それってなんでなんだろう?という話も交えて、真面目におもしろく議論してもらおう…こんな感じで決めました(詳細は、これもノウハウなのでここまでです)。

そしてもう1回チェックです。私が「しっくりきた」らそれで完成です。なかなかよい研修になるのではないかと思いますね。では、完成です!

というように研修は出来上がります。いかがでしたか?お伝えしたかったのは、『結構、パワーポイント作業以外のところに時間をかけているんです』ということと、『細かいところもいろいろ考えてやっていますからねー』ということです。この作業は、基本的に研修が好きで、研修の経験、人に愛情がないとできないのではないかと思っています。意外と手間がかかる&面倒くさいですからね。パワポカチカチコピペして、適当に話しているわけではないのです。ではでは、みなさん、今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今回は、研修プログラムを作成する際の手順とその雰囲気を実際の例を用いて説明しました。研修の作り方はもちろん、これだけではありませんが、結構、リアルな話を書いたので、私たちの仕事のイメージができたのではないでしょうか。

こんな感じで研修プログラムを一緒に作って、登壇する仲間も大募集中です。興味のある方は、ぜひ、一度、ご連絡ください!!以上です。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹

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