【研修企画⑤】研修時間と内容はどの程度調整するのか?できるのか?

みなさん、こんにちは。研修企画に関するブログの5本目をお届けします。

既に数年にわたって継続している研修では、時間と内容がほぼ決まっていることが多いと思います。一方、例えば新たに「主任層向け問題解決研修を『〇時間×2日間』で、設計する」となった場合はどのように検討していますか。

研修ベンダーにベースとなる既存の研修プログラムの調整を依頼する場合「調整できますか?」と尋ねると、「できます」と回答があり、「おお、できるのね」となった後、「で、どこまで調整するのだろう」と疑問に思うことがありますよね。

悩みどころは多くなりますが、ベースとなる既存の研修プログラムをカスタマイズするにせよ、一からオーダーメイドで作成するにせよ、研修プログラムと時間に関する基本的な考え方を把握しておくと検討しやすいと考えます。

今回は研修時間の調整について、私たちの考え方をご紹介します。


目次

 はじめに研修の基本的な構造を理解しておきましょう

研修は大きく3つのパートに分けます。「イントロダクション(オープニング)」「メインパート」「まとめ(クロージング)」です。

  • 「イントロダクション」では、(事務局によるガイド、出欠確認が時間枠内の場合と枠外の場合があります)講師自己紹介、研修の目的の説明、スケジュールの説明などを行います。大体10~15分で設定します。その後アイスブレイクを行い、受講者が研修に集中すべく心と頭と体をスイッチさせるところからスタートします。
  • 本ブログでは、この後の「メインパート」を中心にご紹介します。
  • 「まとめ」では、全体で研修の総括を行い、個人では学びを整理して、講師から受講者にメッセージを送ります。その他質疑応答や事後課題の出題、最後に事務局による締めの言葉など、大体15~20分を要します。

つい研修のメインパートを中心に考えて、前後の時間を削りたくなってしまいがちですが、研修の目的をしっかり伝える「イントロダクション」と、研修を振り返り講師から受講者へのメッセージを伝える「まとめ」の時間は、どちらもとても重要です。意外と削れない時間なので、しっかり時間を確保しましょう。

一般的 / 標準的な研修時間とできる内容の目安についてもご紹介します。

  •  60~90分間・・・講演
  • 3~5時間(半日)・・・講義+ワークショップが可能
  • 1日間・・・上記に加えて、議論や具体例の考察2~3日間・・・上記に加えて、現場での実践等

メインパートの時間配分の最小単位は90分(あるいは45分)

メインパートを検討する際に、いきなり「〇〇の説明に■分かかりそうだ」とか「▲▲のワークに◆分ほしい」というところからスタートし、積み上げ型で時間設計を行うと、全体の時間配分が悪くなることがあります。そうならないために、一般的に受講者が集中できる時間があるので、そちらに合わせて設計することがコツです。
具体的には、以下の通りです。

  • メインパートの内訳は「1コマ(1つのラーニングポイント)最大90分以内」として、必ず10分以上の休憩を挟んで数コマで構成する
  •  昼食時間はワークルールに則り、あまり普段の昼食時間と乖離させない
  •  1日の研修時間の合計は当然ながら集合規則等のワークルールに則るようにする

なおこの「90分」についての根拠は「人間の集中力が持続する限界が90分である」という研究に基づいています(諸説あります)。大学の講義が90分で構成されているのは、どうやらこの情報を踏まえているらしいとのこと。当社でもひとまずこの「90分上限」を念頭にいれてプログラムを組みます。ちなみに、90分という数字は人間の身体のメカニズムに関係するそうで、睡眠のサイクルも90分だそうです。


説明やワークの最小単位は15~20分

90分の中身ですが「15~20分ごとに目先を変化させる」のがポイントです。人間の集中力をMAXで発揮できるのが約15分で、かつ大人が記憶を保持できる時間が約20分だそうです。当社では、この情報を念頭に置きながら、調整を加えて組み立てています。15~20分間同じ状態を続けることはしません。「90分間ひたすら講義」、「90分間連続グループワーク」はやめておくべきです。
そのうえで、「講義を聞く時間」、「個人で課題に取り組む時間」、「グループで論議する時間」「全体で発表する時間」などをミックスして90分を構成します。受講者が主体的に参画する時間(発言する、発表する)を意図的に組み込むと理解がより深まると考えます。

以下、メインワークの1コマの例です(合計85分)

  • 講義・ワーク説明:20分
  • 個人ワーク    :10分
  • グループ内共有 :20分
  • 全体共有 :20分(5分×4グループ)
  • まとめ    :15分

オンライン研修の場合の注意点

2020年度からオンライン研修が本格化しています。私たちは、2020年の3月~6月くらいまで、様々な文献やWebサイトから事例や考察を集め、ビジネスパートナー様やお客様へのインタビューと意見交換を行いながら、「受講者の集中力は90分ももたないのではないか」、また「1日ずっとPC画面に向き合うのは辛すぎるので、トータルの尺は『10~16時(うちお昼休み1時間)』が限界ではないか」という仮説に至りました。今となっては懐かしいですが、当時は「オンライン疲れ」といったワードが今(2021年3月初旬時点)に比べると頻出しており、私たちの仮説はほぼ当たっていたように思います。

しかし、幸か不幸か、いや間違いなく不幸ですが、コロナ禍が長引いたことによって、「一般的な受講者がPCの前で集中できる時間」が長くなっているようです。慣れてきたのでしょう。今では1日の研修時間帯として普通に「9~17時 / 18時」くらいの研修をオーダーいただくことが多く、受講者の集中力も特段問題なさそうです。

それからグループワークにおいて、受講者は全体セッションとブレイクアウトルームを往復します。どうやらこの全体とルームの往復だけでも、それなりに頭と気分が切り替わるようです。物理的にはPCの前から動いていないのですが。この効果を踏まえて、当社では長時間を要するグループワークを組む場合でも意図的に全体セッションに戻すこともあります。

このように受講者がオンライン慣れしていた傾向はあるものの、それでも「一方的に講義を聞く時間」は連続20分程度が限界だと考えています。ブレイクアウトルームでのワークに長時間必要な場合は、途中に、あえて全体セッションに戻す時間を設定するなど、受講者の頭と心が切り替わるタイミングをセットしておくとよいです。

その他、オンライン研修には通信等のトラブルがつきものですから、「トラブル対応の時間を確保しておく」ことも重要です。


それではまとめです。

  • 冒頭の「イントロダクション」と、最後の「まとめ」の時間をしっかり確保しましょう。
  • メインパートは、学習効果、つまり受講生の「集中力」を第一にプログラムを組みましょう。「1コマ90分MAX」「コマの中で15~20分で目先を切り替える」「コマの間はしっかり10分以上休憩」を意識しましょう
  • オンライン研修の場合は要注意でワーク等の連続時間や、トラブル等に備えましょう

以上、今回は研修時間と調整について当社の考え方を記載しました。個別に不明な点やご相談事項がある場合には、是非お問い合わせください。
<参考文献:中村文子、ボブ・パイク著 『研修デザインハンドブック』(2018年) 日本能率協会マネジメントセンター>

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
企画開発部

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