新規事業を創出する部署の方から、「新規事業創出を行っていく上で、まず、はじめにやるべきことをどう整理して考えたらよいか」という質問をいただくことがよくあります。実際に考えてみると、様々な要素を加味する必要があったり、分からないことが多かったり、どのように考えるとよいか迷いやすいと思います。今回は、どのように整理して考えたらよいのか、どのような点に気をつけなければならないかについて説明します。
はじめに、あらためて5W1Hで状況を整理する
新規事業創出を行う上でやるべきことを整理する場合、最初は複雑に考えすぎず、シンプルなフレームである5W1Hで整理して考えてみることをおすすめします。
- Why : なぜ、新規事業創出に取り組むのか
- Who : 誰が、新規事業創出に取り組むのか
- What、How : 何を、どのようにして、新規事業を創出するのか
- How much : どれくらいのリソース(金だけでなく、人や物も)で、新規事業創出を行うのか
5W1Hで整理するときには、意識的に切り分けて考える
・整理する前の段階で、先に決まっているものを情報として先に埋める
・定石として考えられている方法論やプロセスがあるものは、参考となる情報を集めて
埋める
・参考となる情報・選択肢は存在するが、各企業によって「フィットする / しない」が
大きく分かれるところは、見極める、意思決定する
新規事業創出を行う上でやるべきことを整理して考えるのが難しいのは、上記の点が分かりにくいことが原因の一つです。特に、「参考になる情報がある」ところと、「参考になる情報があっても、フィットするか否か大きく分かれる」ところを見極めないと、参考になる情報を収集しても、自社にとって本当に参考するべきなのか分からなくなってしまいます。
また、すでに社内で決まっていることや、定石として考えられていて参考となる情報がある内容でも、実際に整理して考えて、自分で文章にしてみようとすると難しいこともありますのでご注意ください。
いざ整理して考え、明文化する際には、以上のことを覚えておくとよいでしょう。
整理する前の段階で先に決めておくべきこと
新規事業創出を行う上で、やるべきことを整理する前の段階で決めておかなければいけない点は、以下の2点です。
- Why : なぜ、新規事業創出に取り組むのか
- When : いつまでに、新規事業創出を行うのか
過去に投稿した記事「企業が『新しく事業をつくろう』と考えたときに、『ゴール』はどこにおけばよいか」でも触れましたが、まず「期日(いつまでに)」、「領域(どういった範囲で新しい事業をつくるのか)」、「規模(どれくらいの規模の事業をつくるのか)」を明確にしなければ、新規事業創出を行う上でやるべきことも明確になりません。
「なぜ取り組むのか」については、新規事業創出を行うべきか否かの出発点となるので、やるべきことを整理する前に決まっていることが当然のことです。万が一、この部分が決まっていないようであれば、そもそも「新規事業創出を行う必要があるのか」を議論するべきです。
定石として考えられている方法論やプロセスなど、参考となる情報がある点
続いて、以下の2点については、比較的考えやすい部分になります。
- What、How : 何を、どのようにして、新規事業を創出するのか
- When : いつ、新規事業創出に取り組むのか
新規事業創出のプロセスは、「このように進めると良い」という定石となるようなものがあるので、その点で考えやすいと言えます。
新規事業創出のプロセスについては、世の中に事例も多くありますし、ある程度標準的なやり方はこうだという考え方が確立されつつあると感じます。新規事業創出に関する有識者に話を聞けば、事例や定石に関する情報も入手できる可能性が高いので、自社にとって良いものは何かという答えも出やすいと思います。
まずは、新規事業創出のプロセスに関して、他社がどのような取り組みを行っているかを参考にして始めるということも非常に有効だと考えます。
具体的にどのようなプロセスにて活動していくべきかについては、改めて詳しく書きたいと思います(弊社代表の岩田の書籍『事業を起こす人になるための本』をぜひご参照ください)。
検討する・決定することが最も難しいポイント
- Who : 誰が新規事業創出に取り組むのか
- How much : どれくらいのリソース(金だけでなく、人や物も)で、新規事業創出を行うのか
参考となる情報・選択肢は存在するが、各企業によって「フィットする / しない」が大きく分かれるものが、情報収集して、内容を吟味・検討して、最終的に決定するのが最も難しいです。
以上の2点が上記に該当し、各企業の頭を最も悩ませるところになります。
例えば、「Who : 誰が」という点については、
- 全社員が取り組むのか / 一部の社員が取り組むのか
- 指名された社員が取り組むのか / 手を挙げた社員が取り組むのか
- 新規事業を起案した人が実行するのか / 実行する人は別なのか
など、考える観点が色々あるため、選択肢が複数存在します。そして、どの選択肢が最も有効かという答えは、会社の風土などに関係する場合が多く、定石のようなものが存在しません。自社にとってフィットするかを自分たちで試しながら決めていかなければいけないことになります。
分かりやすい例を挙げると、「新しいことにチャレンジできるチャンスがある」ということを社員採用の際に銘打っている企業と、「既存事業のメインとなる製品に愛着がある」社員が多数いる企業では、社員の新規事業に対する考え方は異なるため、「新規事業はマインドが大事だから、手を挙げさせたほうがいい」ということがフィットするか否かも異なるわけです。
「How much : どれくらいのリソースで」という点は、「Who : 誰が」という点と関係性が深いため、決めにくい点になります。リソースというのは、お金だけでなく、「人(の稼働)」について考えなければなりません。むしろ、「人(の稼働)」をどうするかを検討して決定するところが難しいのです。
例えば、
- 新規事業創出に取り組む人が100%の稼働で行うのか / 既存の業務も行いながら取り組むか
などを考える必要があります。さらには、
- 新規事業創出のプロセスの中で、どこかのタイミングで稼働の比率を切り替えるか
なども考えると、さらに複雑になってきます。
選択肢が多い、もしくは複雑で、且つ、標準的、定石的な考え方がないということから、新規事業創出に関する責任者が、頭の中でイメージができていない、つまり決定しきれないケースが多いように思います。
おそらく、決定しきれない責任者の部下として従事されている担当者の方は、どう考えたらいいのかさらに難しくなるだろうと思います。
過去の経緯や会社の雰囲気などを鑑みながら、まずは決めて実行していかなければいけないのです。また、フィットするか否かが分からないので、やり方を柔軟に変えていけるようにすることが重要になります。
ある年は、限られた人が限られた稼働の中で実行するが、次の年には、限られた人が100%の稼働で実行する、さらにその次の年は、全社員が参加できる機会を設けるなど、年によって柔軟に変えていく、その時その時によって求められる稼働を考え、それにあわせて組織を決めて、実行していくことが重要になります。
新規事業創出に関する有識者に話を聞いても、選択肢は提示できる、また、他社の事例を紹介できるものの、参考にすればいいという範囲ではないので、注意してください。
本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社アイディアポイント
営業部
内田 智士