
以前の記事(https://ideapoint.co.jp/column/column145/)で、異業種交流研修を成功させるための目的設定・相手企業の探し方・事務局運営についてお伝えしました。今回は、プログラム設計の観点から、押さえておきたい具体的なポイントをご紹介します。
「研修自体は盛況だったが、参加者が何を持ち帰ったのかよくわからない」という声は、異業種交流研修の企画・運営の現場でよく耳にします。目的や事務局体制をしっかり整えたとしても、プログラムの設計が不十分であれば、参加者が「違い」を実感できないまま研修が終わってしまうことがあります。
本記事では、異業種交流研修のプログラム設計の基本的なポイントを順にご紹介します。
「異業種であること」の意味を整理する
具体的なプログラム設計に入る前に、異業種交流研修における「異業種」であることの意味を、あらためて整理しておきたいと思います。
参加者の所属する会社が異なり、多くの場合は業界も異なります。その「違い」をしっかり持ち帰ってもらうことが、異業種研修の本質といえます。研修を経て参加者から次のような声が上がれば、プログラム設計が機能しているといえるでしょう。
- 「業界が違うと、こんなに考え方が違うんですね」
- 「競合関係にある2社なのに、風土や文化がまったく異なることに驚きました」
- 「表面的に知っていたこととは違って、実態はそういう仕組みになっているんですね」
他社の人たちとたまたま同じ場で研修を受けるというレベルにとどまらず、違いを正しく理解した上で、自身や自社に還元できる状態まで引き上げることが、異業種で研修を実施する意義です。この視点を軸に、以下のプログラム設計のポイントを考えていただければと思います。
自己紹介を丁寧に設計する
どのような研修でも必ず行う自己紹介ですが、異業種交流研修では、冒頭にしっかりと自己開示を行い、参加者が互いに「何者であるか」を明確にしておくことが重要です。以下の3点を意識して設計することをおすすめします。
【ポイント①】自己紹介フォーマットを事前に準備する
全員が同じボリュームで自己開示できるよう、フォーマットを事前に用意しておきましょう。事前課題として課す必要はありませんが、フォーマットを揃えることで参加者同士を比較しやすくなり、違いを理解しやすい状態をつくることができます。
【ポイント②】クラス全体で自己紹介を実施する
グループ単位ではなく、クラス全体の場で自己紹介を行うことをおすすめします。時間はかかりますが、全体で実施することで「知らない人がいない状態」をつくることができ、場の安心感につながります。参加者が安心して発言できる環境は、その後の議論の活性化にも直結します。
【ポイント③】配布する名簿にメモ欄を設ける
細かな工夫ですが、効果は大きい点です。配布する名簿にメモ欄を設けておくだけで、メモを取る率が向上します。印象に残るキーワードは、公式の自己紹介シートではなく発言の中から出てくることが多いものです。自己紹介シートとは別に、名簿にはメモ欄を必ず設けておきましょう。
研修中に『参加企業』を題材に使って議論する
架空のお題や既存のケーススタディ(特定の企業や事例を教材として用いるディスカッション手法)よりも効果的な方法として、参加企業自身を題材として取り上げるセッションがあります。
例えば、経営戦略をテーマにした研修であれば、「A社の経営戦略を教えてください」と実際の受講生に振って説明してもらい、講師がフレームワークに照らしながら解説を加えます。この流れを各社に対して繰り返すことで、参加者は社員本人からリアルな話を聞くことができ、他社への理解が格段に深まります。研修テーマを問わず活用できる手法ですので、ぜひ取り入れてみてください。
なお、より深く1社を取り上げるケーススタディ形式も選択肢の一つですが、込み入った内容になりやすく、他社の受講生にとっては成果物の持ち帰りが少ない点でハードルは上がります。まずは各社を横並びで取り上げる形式から始めるのがよいでしょう。
参加者が自由に話せる時間を意図的に組み込む
自己紹介や参加企業を題材としたセッションを通じて、ある程度相互理解が進んだ段階で、フリーディスカッションを組み込むことをおすすめします。
相互理解が進んでいる状態では、参加者それぞれに「あの会社の人に○○について聞いてみたい」「さっきの発表テーマについてもっと意見を聞きたい」という具体的な関心が自然と生まれます。その関心をきっかけに議論が展開されるため、自発的で質の高い意見交換が生まれやすくなります。
フリーディスカッションの形式としては、ワールドカフェ(少人数のグループに分かれてテーマを変えながら対話を繰り返す対話手法)のような手法がツールとして活用しやすいでしょう。研修としての演出を自然に行いながら、参加者の主体的な対話を引き出すことができます。
講師は「ファシリテーション能力」を重視して選ぶ
通常の研修では、テーマに精通した専門家をアサインするのが一般的です。専門性が高ければ高いほど、学びやアウトプットの質は上がります。
一方、異業種交流研修においては、テーマとの親和性も考慮しながら、ファシリテーター(参加者の議論を整理・促進する進行役)型の講師がより適しているといえます。受講生からの発言や議論を促しながら「違い」を引き出し、議論を整理して方向性と示唆を与えるコントローラーとしての役割を担える講師が理想的です。
なお、テーマによっては専門家の話を聞かせたい場面もあるかと思います。その場合は、メイン講師とは別に、スポットでゲスト講師をアサインする形が効果的です。メイン講師のファシリテーション機能を活かしながら、必要な専門的インプットを補う設計が、全体としてバランスのとれたプログラムにつながります。
まとめ
今回は、異業種交流研修のプログラム設計において押さえておきたいポイントについてお話しました。大切なのは「異業種であること」の意味を参加者が実感できる場をいかに設計するか、という視点です。自己紹介の丁寧な設計、参加企業を題材としたセッション、フリーディスカッションの組み込み、ファシリテーター型講師の起用といったポイントを意識することで、参加者が他社との「違い」を自社に還元できる、質の高い研修につながるといえます。
当社では、目的設定からプログラム設計、ファシリテーションまで、異業種交流研修の設計・運営を一貫してご支援しています。プログラムの具体的な設計についてご相談がある場合も、お気軽にご連絡ください。
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株式会社アイディアポイント
企画開発部
今井 裕也









