
研修の設計をしていると「休憩のタイミングや長さ」は意外と悩むところです。実際に、研修を実施していると現場で講師が判断して、設計書とは異なるタイミングで休憩を取るケースも意外と多くあります。そこには様々な「意図」が働いています。
今回は、普段あまり意識されない『休憩』をテーマにして、そこにどんな「原則」があるのか、実際に現場でどのような意図で『休憩』がとられるのかについて書いていきます。
一般的に『休憩』とは、心身を休めることだが…
研修における『休憩』を考える前に、まずは言葉そのものの意味を調べてみました。広辞苑には、「仕事や運動を一時止めてやすむこと。いきつぎ。休息」と書かれています。
自分が受講者だったときの休憩に対する意識は、まさにこれでした。一定の時間ごとに休憩があり、集中を解いて気分転換の時間にしていました。正直なところ、「そろそろ1時間たって疲れてきた頃だから休憩なんだろうな」くらいにしか捉えていませんでした。
研修における『休憩』の原則 – 集中力を保ち、「学習効果を高める」ためのルール
研修における『休憩』は、辞書的な意味の通り「身体を休める時間」でも、感覚的に「ちょうどよい時間だから休む」というものでもなく、原則として「学習効果を高める研修設計の一部」として考えられています。
ボブ・パイク氏が提唱する「90/20/8の法則」が、研修設計の原則としてよく用いられます。これは、学習者の集中力と参加意欲を維持するためのインストラクショナルデザインの考え方です。「90」は、研修や講義は90分ごとを一つの区切りと考え、それ以上続ける場合は休憩や内容の切り替えを行うことを推奨しています。「20」は、20分以上同じ説明や活動を続けると集中力が低下しやすいため、講義、演習、ディスカッションなど学習方法に変化をつけることを意味します。「8」は、受講者は開始後約8分以内に「自分も参加している」と感じられる機会が必要であるという考え方で、問いかけやペアワークなどを早い段階で取り入れることを勧めています。この法則は、一方的な講義ではなく、参加型・体験型の研修設計を実現するための基本原則として広く活用されています。
『休憩』は、人の「集中力の持続時間」を意識して配置することで、学習効果を高める役割になります。受講者、講師ともに身体を休めつつ、『意図的に配置された休憩』が、学習効果を高める研修設計の一部になっています。
学生時代、1つの授業が「90分」や「45分」で区切られていたのも、集中力が切れる直前に休憩を挟むことで内容が理解しやすくなるよう設計されていたためだと考えられます。研修における休憩のタイミングも、この限界値を意識して配置されていることが多いのです。
集中力を保つためには、『90分に1回は休憩を取る』ことが原則です(実際は、60-90分に1回)。
現場で『休憩』時間を取るときの意図、その役割 – 講師にとっては意外と忙しい休憩時間
研修を運営している講師にとって『休憩』は、別の意味、役割があります。
ひとつめは、進行全体のペースを整える「バッファ」としての意味があります。休憩時間は通常、やや余裕を持って設計しておいて、時間を長く / 短くすることで研修の進行の調整をしています。実際には、自身の休憩を取りながらも、受講者の雰囲気を見て「少し疲れが見えるな」と感じたときには、あえて休憩を早めに(長めに)挟んで進行を見直すこともあります。
ふたつめは、受講生の理解度を測ったり、疑問や本音を把握する時間にすることもあります。グループワークの中では聞ききれなかった受講者の疑問や本音を、休憩中という非公式の場でリラックスした状態で個別に聞いてみると意外と受講生の本音が聞けることもあります。そこで出た話を休憩明けに全体に共有するなどして、受講生の理解度や学習効果の定着につなげます。疑問が出たタイミングで早めに回答することで講師への信頼度も向上します。
みっつめは、『意図的な場面転換』の役割です。1つのセッションが終わったタイミングで休憩を挟んで研修に区切りをつけたり、逆に場の空気を切り替えたいときに休憩を使ったりと、講師は自分の休憩を取りながら、同時に進行そのものをコントロールしているのです。「具体的なケースを具体的に検討するグループワーク」から「研修全体を俯瞰して振り返り、自分の業務にどう活かすか考える個人ワーク」へ切り替えるときなどはその典型的な休憩の取り方です。一旦、スッキリして、視点を変えて戻ってきて欲しいのです。
講師にとって休憩時間はほぼ「休む」時間ではありません。これ以外にも、「ここまでの内容を振り返って、残りの時間を確認してやるべき内容、伝えるべきメッセージを確認する」、「事務局の要望に応えられているか、気になる点があるか確認する」等、やるべきことが多くあります。実際、講師にとって「休み時間」は、限られた『チェック、調整』時間であるとも言えます。
できる受講生はやっている休憩時間の「有効な」使い方
受講者にとっても、休憩は単なる体力回復以上の役割を持っています。できる受講者は、休憩中にテキストやメモを見返し、聞いた内容を自分なりの言葉に置き換えて整理するといった様子があります。研修で新しく得た情報を、聞きっぱなしのままで終わらせるのではなく、記憶に定着しやすくする。休憩時間をうまく活用されていると思います。
休憩中に他の受講者と交わす何気ない雑談から、思わぬ気づきが得られることも少なくありません。同じ内容を聞いていても、人によって着目するポイントは違うため、感想を言い合うだけでも新しい視点が加わります。
もちろん、姿勢を変える、水分補給をする、軽く身体を動かすといった身体的なリフレッシュも欠かせません。スマホを見るより軽い運動や仮眠が推奨されるなど、「何をして休むか」も受講者にとって重要なポイントです。
「休憩=身体を休める時間」というイメージを持っている人がほとんどだと思います。しかし、設計側では、受講者にしっかりと休んでもらいながらも、学習効果を高める時間として、『休憩』が設計されていることは、意外だったのではないでしょうか。
より積極的に休憩しましょう。
最近のトレンド? – 『休憩』を入れるタイミングは、「区切りのよいところ」派 vs 「続きはCMの後で」派
これまで休憩は「区切りのよいところ」が基本でしたが、最近では、あえて半端なところで休憩を入れるように設計している会社もあるようです。
①「区切りのよいところ」派の主張
1つの「テーマが終わった」「セッションが完結した」という区切りのよいところで休憩を挟む考え方です。頭を切り替えやすく、次の項目にも改めて集中して臨めるというメリットがあります。研修全体の構成も見えやすく、受講者にとって「ここまでが1つの区切り」という安心感が生まれます。オーソドックスで、一番イメージしやすい方法です。一方で、区切りが良い分、気持ちがそこで完全に切れてしまい、再開後にウォーミングアップが必要になったり、各セッションの繋がりを認識しづらくなる場合があり、デメリットと感じることもあります。
②「続きはCMの後で」派の主張
あえて区切りの悪いところで休憩を入れる考え方です。一見不親切にも思えますが、狙いは逆で、中途半端なところで止めることで「続きが気になる」という感覚を残し、休憩明けにも集中を持続させようというものです。ドラマの途中でCMが入ると続きが気になるのと似ていて、人の心理を利用した設計と言えます。「このあと続きをするんだ」と意識することで、休憩前の内容を自然と振り返る効果も期待できます。一方で、区切りの悪さに落ち着かなさを感じる人や、区切りがわかりづらくなることで、研修自体が長く感じてしまう人もいるという点がデメリットになる場合もあります。
弊社は、①を基本にしていますが、今後、受講生の様子も見ながら②も選択肢にいれていくかもしれません。
まとめ – 『休憩』は休むことだけにあらず。よりよい研修を実現するために有効に使うべし
今回のブログでは、「研修における休憩」をテーマに取り上げました。休憩というと、「疲れた頭や身体を休める時間」というイメージを持つ方がほとんどではないでしょうか。もちろん、その役割も大切ですが、研修を設計・運営する立場から見ると、休憩にはそれ以上の意味があります。
実は、研修における休憩は、学習効果を高めるために意図的に設計される重要な時間です。受講者の集中力を回復させるだけでなく、内容を整理したり、理解を深めたり、次の学習へ気持ちを切り替えたりする役割も担っています。また、講師にとっても、受講者の理解度や反応を確認し、進行を調整する貴重な時間です。つまり、休憩は単なる「空白の時間」ではなく、研修の成果を左右する大切な設計要素なのです。
受講者にとっても、休憩時間はただスマートフォンを眺めて終わらせるのではなく、メモを見返したり、他の受講者と感想を共有したりすることで、学びをより深める時間に変えることができます。研修の成果は、講義を受けている時間だけで決まるものではありません。休憩の過ごし方ひとつで、学習の定着度や気づきの質は大きく変わります。
「休憩は休むためだけの時間ではない」。そんな視点を持つことで、研修の受け方も設計の仕方も、これまでとは少し違って見えてくるかもしれません。ぜひ、休憩時間を積極的に活用し、より効果的な学びにつなげていただければと思います。
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株式会社アイディアポイント
企画開発部
今井 裕也









