「どのように講演を企画し、どのように講演者を選ぶとよいか」 講演者編

XXの意識向上のために講演(セミナー)をやりたいのですけど、どなたかよい講演者いませんか?」

このようなお問い合わせやご相談を割と頻繁にいただくので、前回は講演の企画について書きました。今回は講演者選びについてご案内いたします。

前回書いた「企画編」のポイントは「講演の目的を可能な限り具体化・細分化し、目的に合致する5W2Hを検討する」ということでした。企画者を3つのカテゴリーに分類し、各カテゴリーからお寄せいただいたご相談の実例を挙げて、目的の具体化・細分化についてご紹介しました。

今回は「目的の具体化・細分化を行った後」という前提で、その後どのように講演者を選ぶかについて記載します。前回と同様に「理想の交際相手」に例えるならば、「誰かいい人いませんか?」というレベルから「一緒に〇〇ができて、■■もできる、かといって★★ではない人いますか?」くらいのレベルに進んだイメージです。

前回ご紹介した目的の事例に沿って講演者の候補となる人物像を探っていきましょう。


目次

①新規事業提案制度に、気軽に多数応募・エントリーしてほしい場合(またはその逆)

  • 専門的な話をする人ではなくてもよく、聴講者にとって身近な人(難解な話をする人はNG
  • この場合は新規事業提案制度の卒業生(OBOG)が望ましい(自らの体験談を語っていただく)
  • 苦労話、「あるある」などを楽しく話せる人

基本的には講演者は社員なのである程度融通が利くでしょうし、講演料もほぼ不要となります。事務局も精神的に落ち着いて準備できると思われます。聴講者には親近感(またはその逆)が芽生え、「自分にもできる!(または、相当の覚悟をして臨もう!)」というマインドが醸成されることでしょう。むしろ「やってみないと分からない!だからやってみよう!(またはその逆)」という言葉を複数回唱えてほしい、など、ある程度事務局の意向も反映させやすいと考えます。  


②テーマに沿った講演を聞かせたい

  • そのテーマの専門家であることは必須(その上で簡便に話すことを求めるか否か)
  • テーマそのものについて網羅的に全体像や「そもそも何なのか?」を説明できる人
  • 当該テーマに関する事業化の事例をたくさん持っている人
  • とりわけ「当該テーマ✕〇〇業(自社の事業)」に関する知見をお持ちの人

「テーマそのものを説明できる人」と「事例を話せる人」は必ずしも一致しません。また「テーマに詳しい人」が専門的に研究をしている人である場合は特に、必ずしも「話が上手な人」でもありません。この辺りは注意しておきましょう。


③「〇〇向けに▲▲を話してほしい(例:マネージャー、若手、人事、ジェンダー)

  • 「〇〇」と「▲▲」のどちらの見識もある人
  • 直近でそのテーマに関する講演をしたり著作を出版したりしており、考え方に同感できる人
  • 直近の出版等はないものの、その分野で有名な人
  • それなりの権威をもった人(特に役員やマネージャー向けの講演の場合)

たまに「〇〇向けの▲▲はこうあるべきだ」という意向が強い講演者もいます。自社の方向性が講演者の主張や考え方とピッタリ合っているのであれば問題ないですが、そうではない場合は講演の前後できちんと補足と修正を加えておきましょう。  


④研修の内容を補足するような具体例を話してほしい

  • 講演に慣れていて、とりわけQ&Aの時間を上手く対応できる人(聴講者とのコミュニケーションをとれる人)
  • 聴講者が飽きないように、昨年の講演者とは別の人(年々適切な講演者を探すのが難しくなる)
  • 最新の情報を話せる人(昨年度と同一人物でも、きちんと情報をアップデートしている人)
  • 当該研修の内容をきちんと理解した上で、話せる人(研修の内容を否定しない、テーマに沿っていても自分の話したいことだけを話す人はNG

「研修とセット」となる講演ですので、研修との連動が重要です。聴講者から「研修と矛盾することを言っているな」を思われないように注意が必要です。異なることを話すとしても「こういう考え方もあります」といったフォローは必須となります。


講演者選びについて心がけておくとよいこと

  • 講演者にアプローチする前に、目的を具体化・細分化したそのレベル感を社内できちんとすり合わせできていることが望ましいです。例えば窓口担当者と上司間でコンセンサスが取れていない場合、講演者にそれぞれ異なる要求をぶつけるのは非常に酷です。すり合わせができていても、例えば情報量などについても一致していないと講演者は困ります(例:「インパクトの強い事例をじっくり話してほしいです。2つくらいでよいので」 / 「事例を多めに。そうですね5つくらい話してほしいです」)。
  • 無事に社内で自分たちが伝えたいことを固めたとして、自分たちが伝えたいことを「そのまま」講演者を通じて話すよう依頼するのはやめましょう。講演者はパペットではないので、背景や目的、意図を汲んでいただきつつも、あくまで講演者自身の言葉で話していただく方がよいです。
  • 普段から自分たちでもアンテナを張っておくことが望ましいです。会社の方針に則りつつある程度広めの分野において著作を読んだり、セミナーを聞いたり、今〇〇の分野で旬な人はどんな人なのか?を探っておいたりしておくとよいでしょう。
  • 著作を読んだりセミナーを聞いたりする機会がある場合は「講演を依頼できるか」という観点で読む・聞くことをおすすめします。例えば「口調や表現が粗い」「たまに不適切なたとえ話をする」「数字ではなく擬音語で話す傾向がある」といった講演者のクセは、実際に自分で確認しないと分からないこともあります。これらは「講師検索サイト」的なものを閲覧しても分からない情報です。
  • 一方全て自分たちで決める必要はなく、こだわりのポイント以外は当社のような業者に任せていただければよいです。事務局の皆様ではリーチしにくいような人脈があるかもしれませんし、意外かもしれませんが人脈がなくとも講演者側が「業者がコンタクトをとってくること」に対して特段違和感を抱かない場合も多いです。
  • 前回の5W2Hで触れなかった「How much」は、講演者の単価と時間数によって決まりますので、せっかく講演者の候補を絞り込んでも予算に合致しないということもあり得ます。「How」について、講演者の独特のこだわりがある場合もありえます。

まとめ

2回にわたり、講演の企画と講演者の選び方について書いてまいりました。まさに「理想の誰かいい交際相手探し」と同じであり、「目的=自分たちがこだわりたい点」を具体化・細分化しておいてから外部(当社など)に相談いただくとよいということがお分かりいただければ幸甚です。

当社をはじめとして、業者側は企画者の「目的やこだわり」を尊重しながら複数の候補者を選定し、企画者側にその選択肢をお示しすることになります。業者を上手く活用することをおすすめします。

なお「選定したらそれでおしまい」ではなく、講演当日までにじっくり講演者と打ち合わせておくことが重要です。また講演資料は事前に目を通しておく方がよいですし、そのように要求することは失礼にあたりません(業者に仲介を依頼すればよいです)。ある程度講演者の表現方法にお任せしつつ、NGな単語や言い回しなどは事前に解消しておきましょう。

ここまで準備すれば自然とよい講演になる確率は高まると考えます。「誰かいい人」が見つかり、きちんと講演をして下さり、目的を果せたら最高ですね。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
企画開発部

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