「『〇年目研修』に何をやったらよいでしょうか?」というご相談~その1 新入社員・若手社員編

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「『〇年目』研修」に何をやったらよいでしょうか?」

年末から3月末にかけて、お客様の主に人事部門のみなさまから「『〇年目』研修」に何をやったらよいでしょうか?」というご相談をいただいております。

多くの企業では、「人材育成戦略」や「人材育成方針」に紐づけて「人材育成体系」を作成されていらっしゃり、おおよそ「〇年目社員にはXXのような思考・スキルを身につけてほしい」という考えのもと、各種研修をセットされています。昨今『〇年目研修』に関するご相談をいただく機会が増えているのですが、背景には人材育成方針の見直しがあるそうです。当社の場合は特に「イノベーションに関する要素を人材育成方針に盛り込むのだが、その場合〇年目研修はどうしたら・・・」といったご相談をいただくことが多いです。

このようなご相談に対して、当社がどのように考え、どのようなご提案をしているか、数回に分けて記載していきます。初回である今回は、「その1 新入社員・若手社員編」として、以後受講対象者の年次別に発行予定です。
ただし、あくまで「主に新規事業開発サポートを主軸とする当社」の立場から記載しますので、いわゆる研修事業者が新入社員や若手社員向けに提供する「マナー研修」や「Excel研修」「〇〇ハラスメント研修」といった類のものについては記載いたしません。
(正直に申し上げますと、そもそもそのようなご相談はいただいておりません・・・)


新入社員研修

まず、いわゆる「新入社員研修」には様々な素材が程よくパッケージされ、期間が定まっており、経営理念や採用方針と適切に紐づいています。
コンテンツは入社式での社長講話に始まり、会社の全体像、MVVや経営理念、経営戦略、戦術といった会社の概要を学びます。続いて各事業や部門の紹介、海外戦略、技術、競合。そしてマナー研修やIT系の研修(ツール類)、コンプライアンス。実地研修に出ていく頃には社員としての知識と情報と心構えが徐々に構築されているようです。社内用語や飲み会のローカルルールなども徐々に学んでいきます。この段階でロジカルシンキングや語学、専門資格といった一部のスキル教育を施す企業もあるでしょう。期間に差はあれども、こうして数か月で多岐にわたるプログラムを経験して配属に至ります。つまり、「これから〇社で社会人を経験する人」に対して、原理原則を教え、期待を伝える機会となります。一般的に各企業で実行されている新入社員研修は、いわゆる組織社会化を目指す上で必要十分であり、特段問題点は見つけにくいです。

その上で、例えば「イノベーションの文脈に立ったコンテンツ」を当社にオーダーいただくことがあります。ただし、忘れてはならないのは、新入社員研修はいち早く「社員としてのマインドセットとスキルセット」を狙う場であるという大前提です。まずは「従順かつ謙虚にプログラムに従って、〇社の社員になること」が重要です。いくら会社がイノベーションや新規事業開発重視の方針に向かうとしても、いきなり「会社や上司の思考の枠から飛び出ましょう!」ということは求められません。

ここまでの流れを踏まえて、当社がプログラムやコンテンツにおいて重視しているポイントは以下の通りです。

  • 「全体として大学生を早く組織の一員にさせようとする研修である」こと(そのうちの一部を担うに過ぎないということ)を忘れない
  • グループワークを含める(対話し、よく聴き、よく考え、お互いの強みを出して認め合い、一緒に何かに取り組む機会をセットする)
  • 基本スキルを身につけ、実際にそのスキルを活用する機会を設ける(ロジカルシンキング等)
  • 柔軟な考え方やアイディアを認める(少なくとも発散と収束は明確に分離させます)
  • それなりの達成感を味わって、爽やかに終わる

「早く会社に慣れさせるための研修」においても、無理なく新規事業開発に必要な観点を盛り込む意図をもっております。
具体的なプログラムや、それを構成するコンテンツは、各社様のテーマや方針、期間や対象人数に則ってアレンジしていきますが、上記のように新入社員研修そのものの目的は意識しつつ、新規事業開発の要素を活用しながら組み立てます。


2・3年目社員研修

入社2・3年目になると、入社後の業務経験に基づいて様々な課題が出てきますし、ある程度受講者のスキルや経験にばらつきも出てきます。この年次では、人材育成体系においてスキル修得を求める目的で研修がセットされる傾向が高いです。
当社では、「ある程度〇社での社会人生活を経験した人」である「入社2・3年目」社員に対して必要なことは、「経験を整理して、そこから学ぶこと」と、「経験した人にしか分からないこと」を踏まえて、再び原理原則を整理することと考えます。この考えに立ちながら、当社では新入社員研修であげたポイントに加えて以下のポイントを重視します。

  • 視座・視野・視点の変化を促す(ストレッチする)
  • 職場に持ち帰ってすぐに効果を実感しやすくする(受講者も上司も他のメンバーも)
  • 受講者の上司にとって役に立つ内容にする(研修の受益者は上司や所属組織)

研修終了後、受講者が職場の他メンバーから「お!〇〇さん、研修に参加して変わったな」と感じる、それを聞いて受講者本人も自分の成長を実感する。このような状態を理想としてイメージしています。

上記のポイントを盛り込むプログラムとして「問題発見」は秀でており、さらに新規事業開発の特性を活かしやすいと考えます。受講者は入社以降、必死に組織に慣れ、そして自分の担当業務をいかに上手く、速く適切に対応していくか?与えられた問題をどう解決していくか?つまり「How」を追求しています。

3年目くらいになると、視座・視点・視野を変化させ、「そもそも何が問題なの?」「なぜこういう問題が発生するのか?」「上司の視点だとどう見えるか?」「顧客の視点だと何が問題に見えるか?」、つまり「What」や「Why」を熟考することが求められます。新規事業開発のプロセスにおいても「何が問題なのか?」「顧客の視点は?」を早い段階で考えますので、入社2・3年目社員に学んでいただきたいことと、新規事業開発には親和性があるのです。

なお、自分の仕事や職場、顧客に対する課題意識は、そのままでは中々見つけにくいのですが、他者との対話によって明るみになりやすいので、やはりグループワークを重視します。
ただし、少し注意が必要です。「問題発見」を教わると、特に2・3年目となると、身の回りの「問題」がたくさん見えてきます。すると「自分の置かれた環境は問題だらけだ」と考えるようになり、場合によっては悲観して「愚痴」につながりかねません。グループワークが裏目に出て「不幸自慢大会」となってしまうおそれもあるのです。問題発見を愚痴で終わらせないためは、研修当日のファシリテーションが重要なりますし、さらに研修前後の上司によるサポートが重要になると考えております。 


コロナ禍における特殊な環境下で気をつけていること・ご評価いただいたこと

昨今よくイノベーションの要素を盛り込んだ研修についてご相談いただく、と記載しましたが、「昨今」とはまさにこのコロナ禍の時期です。この時期当社は以下の点に気をつけ、結果としてお陰様でご評価をいただいております。

  • 比較的早い段階で(2020年5月)オンライン、オフライン両方可能なプログラムを構築した
  • 「可能」なだけでなく、オンライン、オフラインそれぞれの特性を活かせるコンテンツを用意している
  • 特に2020年度入社社員向けには、受講者の境遇を「よく聴く」機会を重視している
  • 意図的に雑談が生れる場をセットしている(様々なパターンの対話の機会を設ける)

コロナ禍入社の社員は、学生時代の終盤にリアルな思い出を作ることができず、入社後もリアルなコミュニケーションを取れず、そして「コロナ前の会社のルールや習慣」についていけず(話が理解できない)、それでも会社に素早くなじむことを求められ、さらに「これからは若いうちからイノベーションだ!」とチャレンジも促されています。これは中々厳しい立場ではないでしょうか。会社全体でコロナ禍期に入社した若手層をケアしつつ、この世代の数年後を見越して、強みを見つけておくことが重要と考え、プログラムを構築しております。
過去のコラムをご参照ください。)


まとめ

「〇年目研修」のご相談をいただいた場合、お客様の方針や人材育成体系をお聞かせいただきながら、当社が貢献できることを意識してプログラム検討を進めます。今回取り上げた若手層向けの研修では「健全な好奇心(興味)」、を引き出しつつ、「正解のないもの」への向き合い方として、「よく聞き、よく話し、よく考える」ことを重視しています。コロナ禍により急に進んだリモート環境も踏まえて、グループワークを盛り込んだプログラにより、「よく聞き、よく話し、よく考える」を実体験していただきます。
(余談です。新入社員研修を受講いただいた受講者と、その後他の研修や他の機会でご一緒することがあります。成長され、ご活躍されている姿を拝見すると、本当に嬉しいもので、講師の醍醐味です。)

参考図書:中原淳著、『経営学習論:人材育成を科学する』、2012年、東京大学出版会

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株式会社アイディアポイント
企画開発部

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