「どのように講演を企画し、どのように講演者を選ぶとよいか」 企画編

XXの意識向上のために講演(セミナー)をやりたいのですけど、どなたかよい講演者いませんか?」

このようなお問い合わせやご相談を、それなりの頻度でいただきます。

こうした講演は、多くの場合において講演の聴講者、つまり「ある企画の対象者の意識を向上させたい」とか「対象者に事例や参考情報を示してあげたい」という目的のもと企画されます。

講演の目的はもう少し具体化・細分化して企画し、適切な講演者を選定することをおすすめします。そうしないと、たとえ講演が素晴らしかったとしても講演後のアンケートに「もっと〇〇な事例を知りたかった」「期待していたのに知っていることばかりで、あまり参考にならなかった」といった無情なコメントが記載されてしまうおそれがあります。(※)

そうなると、企画担当者は落胆したり、講演者に対して気まずい思いをしたり、次回以降の講演者選びに変なプレッシャーがかかったり(軽いトラウマになったり)、となるようです。

当社にお寄せいただくお問い合わせ・ご相談は「誰かいい人いませんか?」という極めてシンプルな問いなのですが、「理想の交際相手探し」と同じく、そんな「誰か」は私たちでも簡単には見つかりません。ではどうやって講演を「企画」し、「講演者の選定」するか。2つのパートに分けてご案内します。まず今回は「企画編」です。

※過剰に「アンケートを気にすべし」という趣旨ではございません(個人的にはむしろ逆です)。また、残念ながらたとえ聴講者の大多数が満足するような講演を実施できたとしても、必ず数人は「もっと〇〇な事例を知りたかった」とコメントします。ただし大多数が満足した講演においてこのコメントが見られた場合は、当該聴講者のパーソナリティーもあわせて確認しておくとよいと考えます。


目次

企画の目的とゴールを決める際は、具体的に細かく設定しましょう

当社の場合、お問い合わせ・ご相談をいただく企画者は、大まかに以下の3つのカテゴリーに分類されます。 

  • 新規事業提案制度のご担当者(新規事業提案制度の事務局)
  • 『社内全体へのイノベーション醸成』を担っているご担当者(人事、経企部門)
  • 個別の研修のプログラムの一部として講演を検討しているご担当者

まずは企画者がこれら3つのカテゴリーのどの部類に分類されるかを確認します。その後、企画者と対話を進めて、いわば「もうすこし具体化・細分化された目的」を明らかにします。この対話はとても重要です。この段階で目的を具体化・細分化・明確化すればするほど講演者の選択肢を絞ることができますし、その後のプロセスで例えば講演のアジェンダや演出も決めやすくなります。

これまで企画者との対話の中から抽出された「具体化・細分化された目的」の事例を企画者の3つのカテゴリーに分類して記載します。このくらいのレベルまで具体化・細分化しておきましょう。

新規事業提案制度事務局の場合

  • 多くのエントリーを集めたい、応募者の「エントリーに向けた心理的ハードル」を下げたい(この逆もあり)
  • テーマに関する情報を与えたい
  • 新規事業立ち上げ経験者の実体験を提供することで、応募者に具体的なイメージをつくってもらいたい(苦労、泥臭い話、トラブルも含め)
  • 「やってみないと(制度にチャレンジしないと)分からない〇〇」を伝えたい
  • 自社の業種に近い事例を伝え、ヒントにしてほしい・示唆を得てもらいたい
  • 自社の業種とかけ離れていても、話してほしいポイントが合致している事例をヒントにしてほしい・示唆を得てもらいたい

新規事業提案制度の事務局にとって、おそらくエントリー数はかなり大きな関心事です。新規事業提案の母数集めはその年の制度の鍵を握りますので、文字通りKPIになっているだけではなくて、KPIの中でもとりわけ重要度が高いです。

また、提案制度に一定のテーマが設けられている場合も多いです。例えば「中期経営計画の〇〇に紐づく新規事業」とか「20XX年までにカーボンニュートラル・・・を実現するためのく新規事業提案」といったテーマの場合です。

経験談を語っていただく場合は、「新規事業提案制度にエントリーし、チャレンジすることで得難い経験をできる」とか、逆に「苦しいこともあるが覚悟を決めてほしい」といった意図を反映できるようにします。

このレベルまで目的が細分化すると、企画全体を設計しやすくなります。

社内の風土醸成を狙う人事 / 経営企画部門ご担当者の場合

  • 全社員に関係するテーマを扱うが、「マネージャー」、「若手」、「女性」、「次世代リーダー」といったように、ある特定の対象ごとに区切って届けたい
  • 比較的短期で効果を得てもらいたい(気づきや学びをすぐに職場で実践してほしい)
  • 似たような業種で、親和性がある経験者に講演してもらうことで「自分たちにもできる」という自信をつけてもらいたい
  • それなりの権威のある人・専門家に講演してもらうことで、納得感を得てもらいたい(例:マネージャー向け研修等、聴講者のポジションが一定以上の場合)

このカテゴリーの担当者は、中期経営計画などの上位概念や、実際に経営陣やその周辺からの意向を受けて企画に入る場合が多いのです。それゆえに「社内にもっとイノベーションを醸成して」とか「女性社員にもっとリーダーシップを発揮させたい」といったような「重要なのだけどフワッとしたオーダー」を受けがちです。比較的大きな対象にアプローチする必要があるものの、全社を対象に講演を企画するのか、「まずは〇〇層向け、次は▲▲層向けに」といった形にするのか、効果を実感しやすいように計画しましょう。

個別の研修窓口ご担当者の場合

  • 研修の内容を補足するような具体例を多めに聴くことで、に実践のイメージを掴んでもらいたい
  • 話しに慣れた人・Q&Aに慣れた人に講演いただくことで、気軽に質問して、疑問点を解消してもらいたい
  • 興味をもって聴いてもらいたい(飽きないようにしたい)
  • 最新の情報を得てもらいたい

このカテゴリーの担当者は講演を単独で検討するのではなく、メインに研修を据えていてその補足として講演を企画する場合が多いと思います。そのため当然ながらまずは研修をしっかりと企画する必要があります。ワーク主体の研修や議論主体の研修において特に有効で、「学んだことについて、その実例や参考情報を落ち着いて聴いてイメージを固める」という効果を狙う場合が多いです。


5W2Hに沿って設計しましょう

目的の具体化、細分化をある程度実施した段階で、私のブログでは毎度のことで恐縮ですが「5W2H」に落とし込んでいきましょう。とはいえ、「Why」は所与で、この段階なら「What」はほぼイメージができていると思われます。「Who」は次回ご案内します(「How much」は「Who」次第となる場合が多いので、こちらも次回をご参照ください)。そうなると、ここでは「How」と「When」、「Where」を決めていきます。

How」は「冒頭に誰か(役職者等)の挨拶を入れる」「ちょっとした個人ワークやペアワークを入れる」など、より講演を効果的に活かせる方法を考えます(ただし、講演者次第で不可となるものもあり得ます) 。また聴講者の期待値をあげておくことも重要です。事前のアナウンスをしっかり行って、聴講者が聞きたいと思うような宣伝となるよう工夫しておきましょう。「エントリーを集めたい場合」は特に重要です。

When」は他の施策との兼ね合いや繁忙期の回避、複数の対象に実施する場合はその順番(例:まずMGR層、続いて・・・)などを検討して決めます。また、最適な講演時間や、講演部分とQ&A部分の配分などを検討します。講演者のスケジュール調整が大変になる場合があるので、企画自体を年度初にしっかり詰めておくことが重要です。

Where」はオンライン方式により遠隔地に勤務・居住する対象者や、在宅勤務者にも届けるといったことも考えられますし(感染症対策は勿論)、講演にワークをセットする場合は集合型を選ぶことになるでしょう。中継や録画なども組み合わせることができます。もちろん集合型で実施する場合は、昔ながらのように会場を確保して、実際の運営においては受付を設けて、アンケートを配って・・・と結構大変です。

忘れてはならいのが検証方法です。講演の効果をどのように測るのか講演前からきちんと検討しておきましょう。一般的にはアンケートですが、どのような項目を設けるのかなど綿密に議論しておくとよいと思います。


まとめ

今回は「企画編」として講演における「講演者をどうするか?」以外の企画についての参考情報を書きました。「いかに目的を具体化・細分化するか」をほぼ全編にわたって書いていることでお分かりのように、それだけ目的にこだわることが重要なのです。場合によっては講演の「実施」が目的化しがち、つまり主客が逆転しがちなのでご注意いただきたいのです。周囲が思っているほど講演の企画は簡単ではなく人や場所の確保のために早期に動きだすため、企画者はかなり長いスパンで企画に携わることとなり当日にはもうヘトヘトになりがちです。講演者のキャラクターが濃い場合などもあり、気持ちを削られることもあるでしょう(講演者が多少エキセントリックだったり、発言が危うかったり、時間を守らなかったり・・・などなど)。とは言え真に重要なのは「講演により目的を達成できたか」なので、講演後の聴講者の言動まできちんと気を配り、効果をきちんと確認するところまでやり切りましょう。講演を聞いた聴講者にどのようになってほしいのか。迷ったらここに立ち戻りましょう。

次回の私のブログでは、「講演者編」を記載いたしますので、よろしくお願いいたします。

 本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームより連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社アイディアポイント
企画開発部

目次