新規事業には中長期的な見通しも立てづらく、リスクが伴うため、プレゼンテーションの中でも難易度が高いといえます。
誰に向けたプレゼンテーションなのかをしっかりと認識し、根拠を持って新規事業の内容を伝えることができれば、企画が通りやすくなるでしょう。そのためには、下準備から資料の構成を決め、スライドを作成する過程で、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
今回は、新規事業のプレゼンテーションを成功させるための資料の基本構成や、企画を通すコツをわかりやすく解説します。プレゼンテーション当日に意識したいこともお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
1. 新規事業のプレゼンテーション資料を作る前の下準備
プレゼンテーション資料は、色使いや見やすさといったデザインが重要に思えますが、デザインはあくまでも見た目の問題に過ぎません。プレゼンテーションによって「何を達成したいのか」を下準備で明確にすることで、最初から最後までポイントがブレない新規事業計画書が完成します。ここでは、新規事業のプレゼンテーションの下準備について詳しく解説します。
新規事業のゴールを明確にする
新規事業では、ゴールを決めて実行に移せる内容にすることが重要です。次の3つの要素を明確にしましょう。
- 期日(いつまでに)
- 領域(どういった範囲で新しい事業を作るのか)
- 規模(どれくらいの規模の事業を作るのか)
中長期的な企業の経営戦略を確認し、それに合わせると新規事業のゴールが見えてきます。
プレゼンテーションのターゲットとメッセージを絞る
プレゼンテーションは、聞き手によって立場や責任の範囲、興味・関心の対象が異なるため、関係者全員を対象にすると誰にも刺さらない内容になりかねません。また、相手が忙しい経営層なら手短にまとめるなど、誰に向けてプレゼンテーションを行うかによって押さえるべきポイントが異なります。下準備の段階で、プレゼンテーションのターゲットと、伝えたいメッセージを絞りましょう。
5W2Hでアイディアを整理
ゴール・ターゲット・メッセージが明確になったら、アイディアを整理していきます。プレゼンテーション資料を作る前に構成を固めることで、必要な要素を漏れなく盛り込むことが可能です。
まずは、バラバラになっているアイディアを5W2Hで整理しましょう。
- Who(誰が)
- What(何を)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
- How much(いくら)
ここで重要になるのが、「Why(なぜ)」と「How(どのように)」です。既存の事業で解決できることであれば、わざわざ新規事業を立ち上げる必要はありません。自社にとって経営上、重要な課題があり、新規事業の立ち上げしか解決法がないことを強調しましょう。ストーリー性を持たせながら、新規事業の必要性が確実に伝わるように構成を組み立てます。
新規事業の懸念点をあらかじめ洗い出し、対処法も明確にしておきましょう。新規事業のような不確実性が高い計画には、必ず懸念点があるはずです。大切なのは、企画者が懸念点を認識していることを、相手にしっかりと伝えることです。
2. 新規事業計画書の基本構成
ここでは、新規事業計画書の基本構成を解説します。
新規事業の目的
まずは、新規事業の目的をわかりやすく伝えます。新規事業の目的が明確かつ魅力的であるかどうかが、プレゼンテーションの結果を大きく左右します。何を行う事業で、その事業を実現することで何を得られるのかを端的にまとめることが重要です。
新規事業の概要
新規事業の概要には、次の項目を盛り込みましょう。このポイントを押さえておけば、事業のイメージが相手に伝わりやすくなります。
- 対象とする顧客(ターゲット)
- この事業でターゲットが得られるもの
- 事業によって対応するターゲットのニーズ
- 新しく開発するモノやサービスのイメージ
- モノやサービスの提供方法
新規事業のターゲット
新規事業のターゲットは、なるべく具体的に設定しましょう。「都心に住む独身の20代女性」のように、ざっくりとしたターゲットを設定した後、氏名や年齢、住所、職業、趣味といったペルソナに落とし込みます。ターゲットを具体化することで、悩みやニーズが深掘りできます。
事業実現のために克服すべき課題
新規事業を実現するうえでの課題をまとめます。課題は、次の3つの観点をもとに、できるだけ多く考えるとよい企画書になります。
- 企画を実現するために解決すべき課題
- 現時点では明確ではないものの、解決するほうがよいと思われる課題
- 事業が失敗するときに想定される理由
スケジュール
スケジュールは、企画の承認後にすぐ実施できる短期的なものと、将来の展望も含めた中長期的なものに分けます。短期的なスケジュールとしてはターゲットへのアンケート調査、中長期的なスケジュールとしては商品やサービスのリリースや広告戦略などがあげられます。
費用
費用は、経営陣が厳しくチェックするポイントのひとつです。売上目標やコストといった数字には根拠を持たせ、妥当な企画であることを示します。
新規事業計画書の基本構成については、こちらの記事に詳しくまとめてあります。ぜひご覧ください。
内部リンク:新規事業企画書の書き方!通る企画書をつくるための7つのポイント
3. プレゼンテーション資料作成のポイント
基本構成が固まったら、いよいよプレゼンテーション資料の作成に入ります。次のポイントを意識すると、誰にとっても見やすく、わかりやすい資料を作ることが可能です。
表紙にこだわる
表紙は、なんとなくおしゃれに見えるテンプレートを採用してしまいがちですが、プレゼンテーション資料の第一印象になる大事なパートです。少なくとも、「いつ、どこで、誰が、何を話そうとしているのか(話したのか)」がわかるようにしましょう。当社では、このようなテンプレートを使用しています。
内部リンク:発表資料でスライドを作る際の作法(当たり前事項)
結論から伝える
結論ファーストはビジネス文書の基本です。ストーリー性を持たせようとすると「起承転結」の構成になりがちですが、ビジネスの世界では結論を先に述べる「PREP法」がおすすめです。
Point:結論
Reason:理由
Example:具体例
Point:結論
ビジネス文書に幅広く使えるフレームワークなので、覚えておくとよいでしょう。
客観的なデータを用いる
新規事業は不確定要素が多いことから、アイディアベースになりがちです。しかし、それだけでは説得力に欠けるため、データをふんだんに用いることが重要です。特に、新規事業を立ち上げることによってプレゼンテーションの聞き手にもたらされるメリットについては、根拠となるデータをしっかりと準備します。
シンプルにまとめる
プレゼンテーション資料は、「1スライド1メッセージ」が基本です。論点を絞り、文字を大きくしましょう。情報を詰め込み過ぎたプレゼンテーション資料は要点が伝わりづらく、印象に残りません。
4. プレゼンテーションを成功させて企画を通すには?
最後に、プレゼンテーションを成功させて企画を通すコツを紹介します。「プレゼンテーションが苦手」という人でも、事前準備によって克服できることは多いため、ぜひ参考にしてください。
話し方の基本を押さえる
プレゼンテーションの際の話し方は、「声はゆっくり、やや大きめに」が基本です。意外と基本を押さえられていないことが多いので、意識してみましょう。それだけで、自信や余裕があるように見えます。
同僚や直属の上司などを相手にシミュレーションを行う
資料が完成し、自分で何度かプレゼンテーションの練習をしたら、同僚や直属の上司に頼んでシミュレーションに付き合ってもらいましょう。その過程で率直な意見をもらい、プレゼンテーションをブラッシュアップします。アイディアに行き詰まったときにもカジュアルに相談してみると、案外すんなりと解決することがあります。
想定される質問に対する回答を用意しておく
プレゼンテーションの内容について質問されたら、しっかりと答えられるようにしておきましょう。特に経営層は、確認のために「あえて」質問をしてくることがあります。その際に曖昧な受け答えをしてしまうと余計な不安を与えるため、想定される質問については、必ず回答を用意しておきます。
キーパーソンを味方につけておく
プレゼンテーションのキーパーソンを事前に把握し、味方につけておくと企画を後押ししてくれます。いわゆる「根回し」ですが、企画を通すための根回しは悪いことではありません。新規事業計画のように大きなプロジェクトの場合、その場で承認されるケースは稀です。経営層は一旦話を持ち帰り、キーパーソンに意見を求めたうえで判断するため、キーパーソンへの根回しは必須といえるでしょう。
聞き手を巻き込みながらプレゼンテーションする
プレゼンテーションに慣れていないと、自分が話すことばかりに集中してしまいがちです。参加者が興味を失っていることに気づかず、プレゼンテーションを進めてしまうケースもあるため注意しましょう。参加者の様子を見ながら話を進め、ときには質問を投げかけると相手の集中力が途切れにくくなります。
5. プレゼンテーション資料は下準備がポイント
新規事業のプレゼンテーションは、構想を練る下準備から始まります。多くの人がプレゼンテーション資料のデザインばかりに着目しがちですが、プレゼンテーションの質は下準備の段階で決まります。そのうえで、見やすい資料にするためのデザインのコツや、プレゼンテーション当日の話し方のテクニックなどを活用しましょう。
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