「『〇年目』研修」に何をやったらよいでしょうか?」
前回同様、お客様の主に人事部門のみなさまから「『〇年目』研修」に何をやったらよいでしょうか?」というご相談に対して、当社がどのように考え、どのようなご提案をしているか、数回に分けて記載していきます。2回目である今回は、「その2 中堅社員編」を書きます。
今回も、あくまで「主に新規事業開発サポートを主軸とする当社」の立場から記載しますので、いわゆる研修事業者が中堅社員向けに提供する「キャリア研修」といった類のものについては記載いたしません。
(今回も正直に申し上げますと、そもそもそのようなご相談はいただいておりません・・・)
意外と幅が広い『中堅社員』をどう定義するか?年次、役職、スキル習熟度、期待値・・・
まず、「中堅社員」とは一体誰のことなのでしょうか?お客様との対話に登場するいくつかの切り口で考えてみます。
- 年次:「若手ではない」「ベテランでもない」「入社5年目以上」「入社10年目以上になるともうベテラン」
- 役職:「管理職ではない」「主任層かな」「課長代理となるともうベテランでしょう」「『年次ではベテランだが、役職では中堅』という社員も存在する」
- スキル:「ひととおり会社のことは理解している」「自力で仕事を回せる」「職場で必要なスキルは身についている」
- 期待度:「所属の組織での活動の中核を担ってほしい」「実績で組織を牽引してほしい」「会社の未来を担ってほしい」
- その他:「先輩もいるが後輩もいるポジション」
記載してみて、改めて「中堅」は極めてレンジが広いと思うとともに、この単語を使う側にとって使い勝手のよいのではないかと考えます。お客様のイメージを総合すると、「入社5-10年目の主任層で、自力で実務の中核を担って実績を出し、組織の先輩・後輩両方に働きかける存在」ということになりそうです。このコラムでは先の社員を「中堅社員」と定義づけることとします。
中堅社員が意外と『大変』なのは十分理解しておくべき
続いて、そんな中堅社員の特徴や、彼ら・彼女を取り巻く環境について考えてみます。対話の中で、次のような特徴が浮かび上がってきました。
- とにかく忙しい(「若手」時代を卒業して、業務の範囲、難易度、量、目標などがアップする)
- 「もう中堅なのだから」「若手ではないのだぞ」というプレッシャーがかかりがち
- 「いつまでも中堅の立場ではいられないぞ」「君はいつまで中堅でいるつもりなのか?」というプレッシャーもかかりがち
- 「次世代リーダーを意識して」というプレッシャーがかかりがち
- 実際にリーダーシップを発揮する場面が増えてくる
- プライベートでも変化が起こりがち・・・各種ライフイベント(結婚、親になる、家を買う・・・)
- 全方位に比較対象が存在し、徐々に序列が明確になりつつある
- 自分で学び、自分で成長しなくてはならない
- 基本的に学びはOJTのウエイトが高い
- 教わる機会が減少しがちで、教える機会が増える
- 大規模組織の中堅社員と、小規模組織の中堅社員では、職場のコミュニケーションのバリエーションに差が出る
- 若年時から所属している組織で中堅社員になると、事実上当該組織のコア役をとなる
- 一方、年次や役職において中堅でも、転入等で組織に所属したばかりだと、当該組織の在籍期間の長い若手からプレッシャーを感じやすい
- 「新たに目を掛けてくれる先輩」を見つけにくい
若手時代を終えて、精神的にも体力的にも社会的にも期待とプレッシャーがかかる時期なのですが、自分の成長はある程度自力でなんとかしなくてはなりません。
また、当然ながら職場によってOJTの頻度も内容も異なります。ということは、思考やスキルの習熟度合い、内省の機会は、かなりバラついていることが想像されます。
そうはいっても会社の要である中堅社員
それでは、会社が中堅社員に期待することを、お客様との対話の中から集めてみます。
- 実務の推進者・エンジンとして、幅広く活躍し、実績を出してほしい
- 組織の業務の全体を把握しつつ、得意分野をもってほしい
- 管理職のよき右腕となってほしい
- 後輩にとって、頼れる存在になってほしい
- 社外にも目を向け、視野を広げてほしい
- どんどん新しいことにチャレンジしてほしい
多くの、そして幅広い分野での期待が寄せられています。そしてお気づきかもしれませんが、結構「抽象的」です。学ぶ機会はOJTと、自己学習に任せる割合が多くなりがちなのに、期待や求められることは多岐にわたり、抽象的。それゆえに「中堅社員研修は何をやったらよいのか・・・」という悩みに辿り着くのだと改めて実感しました。
そんな中堅社員にとって効果的なコンテンツ
とにかく職場で結果を出すことが求められているものの、学びはOJT次第、また我流になりがちであり、個別対応しにくいと考えられます。そこで、以下のコンテンツをおススメします
- 内省(行動、キャリア、対人) : きちんと過去と現在の自分について整理し、考える時間をもちつつ、落ち着いて将来を考えることが重要。まさに八面六臂の活躍をして、なんとなくそんな自分をよしとしてしまっている、または「振り返っている暇はない」と思っている中堅社員への効果を期待(当社独自のプログラムとしては扱っておりません)
- 特定のスキルや思考の学習 : OFF-JTで、我流ではなくきちんと学ぶ、力をつける。将来のためにポータビリティのあるスキルも用意する。数年後、「自分は自社における営業や職場のオペレーションといった、極めて狭い分野でのみ通用するスキルしか身につけていなかった」と愕然とすることのないよう、汎用的なスキルや思考法を身につける
- 自社について学ぶ : (SWOT、お客様、事業・ビジネスモデル、環境・PEST、課題・・・)をきちんと理解して、説明できるようにする。自組織のビジネスには精通していても、意外と会社全体については理解が不足していて、顧客やパートナーを除く社外の人に、「自社や自分の仕事についてきちんと語れない」という中堅社員も存在します。自社について学ぶ過程で環境へ未来についても学ぶことで、視野が広がる
- 自社の問題解決 : 「職場」レベルではなく、高い視座と広い視野を持って、全社レベルでの経営課題について考える。会社(経営層)に提言する
- 異業種との交流 : 意図的に非日常の視野を広げ、接点を増やし、思考を深める機会となる。持ち帰って自組織のメンバーにフィードバックすることで、組織の改善にもつながる
- 新規事業開発 : 現場の実務に精通し、生の課題意識をもった立場から、自社の将来を見据えた新しいビジネスオポチュニティを検討する。社内向けの改革活動にもなりえる
まとめ
中堅社員向けの学びを企画する際、「若手とリーダー層には研修を行うが、その合間に存在する社員に何も用意しないのは悪かろう」といった理由からスタートする・・・ということは、実際「なくはない」ようです。
理想的な中堅社員は、実務の中核を担い、時には良き先輩とし、時には良き後輩として組織のコミュニケーションのハブとなります。また、単に自組織の業務のエキスパートにとどまることなく、全社レベルで会社のことをきちんと理解し、また広く社会一般の情勢にも目を向けることができます。つまり、中々スーパーな存在となります。
会社の持続的な成長を望むにあたり、次世代リーダーを中途で外部から連れてくるという方法も必要ですし、自社で育成した中堅社員の人材プールから生み出すことも重要でしょう。後者を育てるためには、レンジの幅広い中堅社員を「ひとまとめ」にせず、個別性をちゃんとみて、「内省」「学習」「視野を広げる」「刺激を与える」といった「学びの機会・場」をセットしてあげることが重要と考えます。
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